戦時中に公開された作品だったので、国内公開は1989年。
かつて大ヒットしたレヴュー・ショウ「ジークフェルト・フォリーズ」に因んで、14幕からなる繋がりのないミュージカルと寸劇で、MGMがオールスターを起用したバラエティー映画。
メイン監督はヴィンセント・ミネリ、エピソード監督はジョージ・シドニー、チャールズ・ウォルターズ、ロバート・ルイス(アクターズ・スタジオ創始者の一人)他3人。だからオムニバス映画でもある。
エピソードのつぎはぎだから誰が主演というわけではないが、俳優のうち最も出番が多かったのはフレッド・アステアで4エピソードだった。他ではダンサーとしてのルシル・ブレマーとバレリーナとしてのシド・チャリシーが2エピソードに出演。
あらすじ
最初に、天国にいる大プロデューサーのジークフェルト(ウィリアム・パウェル)が登場し、昔のフォリーズを回想して、今もフォリーズがあったらと、舞台への思いをフレッド・アステアに託す。
・Here’s the girl./ Bring on the wonderful men フレッド・アステア、シド・チャリシー、ルシル・ボールの歌とダンス。ルーシーの乗っている馬は「ローンレンジャー」のシルヴァー号とのこと。ダンサーがおばさんだらけなのは、本物のジークフェルト・フォリーズの面々だから。
・ヴァージニア・オブライエン コミカルな歌
・エスター・ウィリアムズのウォーターバレエ
・キーナン・ウィンの寸劇「電話交換」
・椿姫「乾杯の歌」 ジェームズ・メルトン、マリオン・ベル
・ビクター・ムーア、エドワード・アーノルドによる満員電車での寸劇 「2ドル払ってくれ」
・This Heart of Mine フレッド・アステア、ルシル・ブレマーによるダンス 床が動いている。
・寸劇「アイルランドの宝くじ」 ファニー ・ブライス、ヒューム・クローニン出演
・リナ・ホーンの歌 「ラヴ」黒人バーにて
・レッド・スケルトンの一人コメディ 「テレビ初期」
・「ライムハウス・ブルース」アステア・ブレマーによる中国人に扮してのダンス。不気味なイエロー・フェイスが見もの。
・ジュディ・ガーランド「インタビュー」ミュージカル仕立てであり、ジュディはセクシー女優に扮している。
・「凡人と凡人」フレッド・アステア&ジーン・ケリーのタップダンス
・「美」歌:キャサリン・グレイソン、バレエ:シド・チャリシー
雑感
「巨星ジークフェルト」に主演したウィリアム・パウエルが、天国のジークフェルト役で登場する。こう言う憎い配役はMGMならでは。
本編に入って、最初にフレッド・アステアがジークフェルトの思い出を語り、その後はMGMならではのジークフェルト・フォリーズ14幕を再現する。
各幕ごとに監督は別で制作している。最も担当が多いのはヴィンセント・ミネリだ。
何につけても、初顔合わせのフレッド・アステアとジーン・ケリーのタップ対決が楽しい。でもアステアは、もしかして、ジーン・ケリーが人気を集めるのを見て引退する気になったのかも知れない。しかしジーン・ケリーが「イースター・パレード」の撮影中に骨折をしてフレッド・アステアに直接電話して代役を依頼したことからわずか二年で引退を撤回する。
ルシル・ブレマーは「若草の頃」で主役ジュディ・ガーランドの姉役で出演して、MGMのスター路線に乗った。この作品がMGM出演二作目となる。美人ではないが、アステアと組んだダンスは上手い。ここでは演技力の程は分からなかったが、次回作「ヨランダと泥棒」(公開順では「ジークフェルト・フォリーズ」が後)でアステアと再び共演するが、ヒロインとしての演技が大根で映画も大ゴケしてしまう。音楽映画「雲の流るゝ果てに」では脇に戻ってしまい、その後数作を撮って、メキシコ元大統領の息子の玉の輿に乗り寿引退。その後はハリウッドで裏方として活躍した。
他にもファニー ・ブライス、レッド・スケルトンのコントや、ジュディ・ガーランドのミュージカル風コントも面白かった。当時のテレビよりはるかに美しい画像で彼らの演技が見られるのは幸せ。
そしてトリを務めるのが、キャサリン・グレイスンのコロラトゥーラ・ソプラノだ。そこにシド・チャリシーもバレエで花を添えてくれる。グレイスンを知るまではソプラノといえばアグネス・チャンしか思い浮かばなかったが、彼女を知ってからソプラノが好きになった。
スタッフ・キャスト
監督 ヴィンセント・ミネリ、ジョージ・シドニー、チャールズ・ウォルターズ 等
製作 アーサー・フリード
撮影 ジョージ・J・フォルシー 、 チャールズ・ロシャー
音楽監督 レニー・ヘイトン
編曲 ロジャー・イーデンス
振り付け ロバート・アルトン
配役
ジークフェルト ウィリアム・パウエル
フレッド・アステア 本人、泥棒、中国人
ルシル・ブレマー 金持ちのお嬢様、中国人娘
ジュディ・ガーランド お色気女優
ルシル・ボール
ファニー・ブライス
レナ・ホーン
レッド・スケルトン
ヴィクター・ムーア
ヴァージニア・オブライエン
シド・チャリシー
ジーン・ケリー
エスター・ウィリアムズ
ヒューム・クローニン