タランティーノが三年ぶりにメガホンを取った作品、しかもオールスターキャストということで、また派手なアクションだろうと期待していたが、以外に地味な人間ドラマだった。
ジャッキー(パム・グリアー)は、中年の黒人スチュワーデス。実は拳銃密売人オベール(サミュエル・L・ジャクソン)に請われてメキシコとアメリカの間の現金の運び屋をやっている。ところがオベールの部下(クリス・タッカー)が捕まって、ジャッキーの存在が明るみに出る。逮捕されたジャッキーは、このままでは刑務所に行くか、オベールに消されるかどちらかだ。そこで取引を持ちかける、捜査官(マイケル・キートン)とオベールの双方を相手に大芝居を打つことを考える。
オベールは50万ドルを至急アメリカに持ち込まなければいけない。そこで捜査官に50万ドルを持ち込んでオベールに渡すところを現行犯で押さえさせる。しかし、その50万ドルを取り押さえられる前に略奪してしまおうと言うのだ。このため、初老の保釈屋マックス(ロバート・フォスター)を仲間に入れる。一方、オベールの身内でも、愛人メラニー(ブリジット・フォンダ)、相棒ルイス(ロバートデニーロ)と癖のありそうな連中が、大金を巡って、いろいろと画策している。
果たして、しがない中年おばさんのジャッキーは、プロのこの連中を相手に、50万ドルを手に入れて、生き残ることができるのかあ??
結局、ジャッキーの建てる作戦の妙味と、実行するジャッキー、マックスの心理を描いただけの作品。あくまで騙しあいの心理戦であり、ど派手な打ち合いは全くなし。この辺はちょっと拍子抜け。スピード感はまったくと言って良いほど何もなく、出演者が高齢気味なせいもあるが、全体にカットを冗長に感じた。ただし、タランティーノ得意のモンタージュ(カットバックの多用)は、見せ場である現金の受け渡しシーンで、利用されている。ジャッキーの視点、ルイスの視点、マックスの視点の三つに応じて、同じシーンを違う角度からモンタージュしている。
ところでジャッキー役のパムグリアーが元黒人映画のヒロインだったため、この作品の音楽も、80年代初頭のソフトソウルを多用していて、R&Bマニアにはたまらない作品だ。サントラは売れたと思う。