ヴェネチア国際映画祭金獅子賞、アカデミー作品賞、監督賞、美術賞、作曲賞を受賞。
半魚人と口のきけない女性の恋を描いたファンタジー・ロマンス映画。
クリーチャー大好きなオタク監督で有名なギレルモ・デル・トロが製作・監督・脚本を務めて、主演にサリー・ホーキンス、共演にマイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、「ドリーム」のオクタヴィア・スペンサー。
あらすじ
アメリカの研究所にアマゾンから半魚人が運ばれる。毎朝出勤前にオナニーをすることを日課としているイライザは研究所の掃除婦だが、口がきけず手話を使い同僚の黒人女性ゼルダを通して他人と会話して、仕事をしている。彼女は半魚人に興味を持ち、餌付けしてしまい、半魚人と心が通じ合うようになる。
ところが警備部長ストリックランドから半魚人を生体解剖するという軍の命令が下される。イライザはゼルダ、ソ連のスパイだったホフステトラー博士、画家の友人ジャイルズの協力を得て、半魚人を自宅の浴槽に匿うことに成功する。
彼女は半魚人を雨で増水した日に運河から海に帰そうと計画するが、一緒に浴槽に入るうちに半魚人は自分の逸物を外に取り出して彼女と結ばれる。
ホフステトラー博士はストリックランドに半魚人を連れ去ったと疑われて拷問を受け、殺される寸前に掃除婦が真犯人であることを告白する。ゼルダはストリックランドが疑っていることを告げて、ジャイルズとともにイライザは運河に逃亡する。しかし海に返す直前にイライザ、ジャイルズ、半魚人ともに撃たれてしまう。ジャイルズはストリックランドが背中を向けた瞬間、材木で顔面を叩き潰す。半魚人はイライザを連れて海に飛び込み、海深く沈んでいく。ジャイルズは半魚人の再生能力でイライザが復活していると確信している。
雑感
大人のおとぎ話と言うより、悪ふざけ気味のゲテモノ(クリーチャー)ファンタジー映画に見えたが、最近は韓国人でさえ「外見至上主義」を問題視する時代だから、かえってプラスに評価されてしまい、同年の映画「スリー・ビルボード」からアカデミー作品賞&監督賞を奪ってしまった。いつもの年なら「スリー・ビルボード」が選ばれたであろうから、タイミングが良かったと思う。
日本人は「ウルトラQ」の怪獣「ラゴン」に似ていると言っているが、もともとは戦後のアメリカ映画「大アマゾンの半魚人」「半魚人の逆襲」が原典である。とくに「大アマゾンの半魚人」の原題は、The Creature from the Black Lagoon であり、潟湖を表す Lagoon からラゴンという怪人名が生まれた。
ニューヨーク・タイムズで四流映画と馬鹿にされた第二作「半魚人の逆襲」では、半魚人ギルマンはヒロインを愛してしまうが、相手にされない。ウルトラQでラゴンの子どもが網に掛かり、親が怒って地上で暴れるが、子どもを返すと大人しく帰って行く。半魚人ギルマンは人間と結ばれなかったが、人間はラゴンと相互理解できた点にこの作品のアイデアが隠されている。
マイケル・シャノンは、マーティン・ランドーそっくりだった。
スタッフ・キャスト
監督 ギレルモ・デル・トロ
プロデューサー ギレルモ・デル・トロ 、 J・マイルズ・デイル
原案 ギレルモ・デル・トロ
脚本 ギレルモ・デル・トロ 、 ヴァネッサ・テイラー
音楽 アレクサンドル・デスプラ
美術 ポール・D・オースタベリー (アカデミー美術賞受賞)
VFX デニス・べラルディ
撮影監督 ダン・ローストセン
配役
イライザ サリー・ホーキンス
ストリックランド マイケル・シャノン
ジャイルズ リチャード・ジェンキンス
ゼルダ オクタヴィア・スペンサー
半魚人 ダグ・ジョーンズ
ホフステトラー博士 マイケル・スタールバーグ