監督 : ヤン・スウィエジャーク
製作 : エリック・エイブラハム
原案 : パヴェル・タウセック
脚本 : ズデニェク・スヴェジャーク
撮影 : ウラジミール・スムットニー
配役
ズデニェク・スヴェジャーク(Frantisek Louka)
アンジェイ・チャリモン(Kolja)
リブシェ・サフランコヴァ (Klara)
オンジェイ・ヴェトフィ(Mr. Broz)
ステラ・ザーズヴァルコヴァー(mother)
1988年ビロード革命直前のプラハ。
ロウカ(ズディニェク・スビエジャーク)は初老貧乏独身チェリストである。
かつては有名だったが、今は身を持ち崩しチャランポランに葬式の伴奏者をやってる。
亭主持ちの歌手クララが、たまに寝てくれるが、いい加減な生活だ。
ある日友人ブロスが彼に偽装結婚を持ちかけた。
相手はチェコの身分証明書が欲しいロシア女ナディズダである。
しかしナディズダは結婚式の直後、5歳の子コーリャ(アンドレイ・ハリモン)を置き去りにして、西ドイツの男の元に逃げてしまう。
コーリャの出現でロウカの生活は一変。
はじめはロシアのガキを早く追い出したい、鬱陶しいと思ったロウカだが、次第に情が移っていく。
その一方、コーリャの母はロシア嫌いで預かってくれないわ、秘密警察からは呼び出しはかかるわと御難続き。
福祉局に追われ彼はコーリャとともに逃げる。
そんな折り。ベルリンの壁が崩壊。
プラハでも民主化運動が高まりを見せる。
ビロード革命である。
今は一つになったドイツとの交通も回復し、母ナディズダがコーリャを空港まで迎えに来た。
さよなら、コーリャ。
髄膜炎になりかけたとき、徹夜で看病したのはこの俺だ。
ロウカはそう言ってるようだった。
長く亡命生活をしていたクーベリック(本人)が帰国して、「わが祖国」を祖国チェコスロバキアの大衆の前で演奏した。
そのコンサート、首席チェリストの席にはロウカが座っていた。
☆
ロウカが情が移るまで少し時間が掛かったが50分ぐらい進んでからは、父親の顔になった。
しかし母親が迎えに来たら、あっさり別れてしまう。
これが30代の父親なら粘るところだが、50代の親父は照れがあるから、粘らない。
しかし父親としての自覚はこのとき既に目覚めていた。
独身主義者の心の中に何かが生まれた。
それにしても、クーベリックのコンサートはチェコ人にとって本当に大切なものだったのだな。
監督はチェコの俊英。主役は監督の父親で作家でもある。
この映画を見て、小津の「長屋紳士録」を思い出した。
ロウカと飯田蝶子の違いを見ていて、日本と外国の差または父と母の差を思い知った。
クールなロウカと怒りっぽい蝶子、でもどんな人の心も掴んでしまう子供の笑顔は凄い。
永遠のセルマ・リッター
映画を中心に趣味を語り尽くします!