アメリカ内陸部に住むグリズリー(和名ハイイログマ)と人間たちの死闘を描く動物パニック映画。スピルバーグ監督の「ジョーズ」(1975)に影響されている。
製作総指揮はエドワード・L・モントロ、製作・脚本はデイヴィッド・シェルドンとハーベイ・フラックスマン、監督はウィリアム・ガードラーである。監督は、のちに「エクソシスト」を真似た「マニトウ」を作り、エピゴーネン作品を二つも作ってしまった。
主演は、クリストファー・ジョージ、アンドリュー・プライン、リチャード・ジャッケル、共演はジョアン・マッコール、ジョー・ドーセイ。
人食い熊事件がたまにある日本では、同年7月3日に公開されて夏休みに大ヒットした。
あらすじ
(イエローストーン)国立公園で巨大灰色熊グリズリーが、二人の女性キャンパーに襲いかかり、なぶり殺しにした。一度人間を食べたグリズリーは次々に警備隊員やキャンパーを殺しはじめた。
森林警部隊長ケリーは、動物学者スコットとともに、グリズリーの追跡を始め、官僚である公園責任者キットリッジに公園の閉鎖を要求した。
しかし、宣伝の絶好機だとマスコミの取材を呼びかけた。国立公園は、マスコミとハンターで溢れてしまう。そしてハンターが襲われ、付近の住民まで巻き込まれるに至って、ついにキトリッジは、公園閉鎖が決定する・・・。
雑感
初めて見たのは、東京12チャンネル(現テレビ東京)の木曜洋画劇場だった。初回放送時は、何とノーカット版だったそうだ。それだけ、この映画の日本での反共の大きさを物語っている。ただし、今回Blurayで見たのは、公開時間より長くなっていたので、公開時のカット部分を加えた完全版なのかな。
当時から「ジョーズ」のパクリと言われたが、海の物を山に置き換えるのは大変だと思う。ロケの様子を見ていても、かなりハードな日程だったようだ。さらにごく一部を除いて、調教された熊(恐らくヒグマ、立って両手を上げると3m近い)を実際に使っている。これが、なかなか言うことを聞かないので何度も撮り直しになる。それだけ苦労したのだから、「ジョーズ」の単純なパクリとは言いたくない。換骨奪胎と言うべきだ。
1970年代は、大作パニック映画の時代である。しかしこの映画は、うまく「ジョーズ」を利用することで、低予算でありながら、大きな興行収益を上げることに成功した。
リチャード・ジャッケルやクリストファー・ジョージはテレビ・ドラマのスター俳優だったが、テレビ俳優を多数使っていて、低予算映画だ。後半の追跡シーンでは他の隊員、女優、モブすらいない。だから、利益も莫大になったと思う。
大した美人でもないのに何故か、アリスン役のジョーン・マッコールの顔をよく覚えていた。当時はジョアン・マッコールと呼んでいたはず。この人は後に脚本家やプロデューサーに転身し成功を収め、新興宗教の幹部になっている。
スタッフ
製作総指揮 エドワード・L・モントロー
製作、脚本 デイヴィッド・シェルドン、ハーヴェイ・フラックスマン
監督 ウィリアム・ガードラー
撮影 ウィリアム・A・アンダーソン
音楽 ロバート・O・ラグランド
キャスト
ケリー森林警備隊長 クリストファー・ジョージ
ドン(ヘリ操縦士) アンドリュー・プライン
スコット(動物学者) リチャード・ジャッケル
アリスン(公園内店舗の娘) ジョーン・マッコール
キトリッジ(国立公園管理者) ジョー・ドーセイ
ゲイル(隊員、第三の被害者) ヴィッキー・ジョンソン
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スコットは、グリズリーを生け捕りにすることに固執したため、ケリーたちとは別行動を取り、ケリーは、ベトナム帰りのヘリ操縦士ドンを仲間に加え、空からグリズリーを追い詰めることにした。しかし監視櫓に上っていた同僚のトムを見て、グリズリーは櫓を破壊してトムを殺してしまう。
スコットは、麻酔弾を仕込んだライフルを持っていたが、グリズリーは背後から近付いた瞬間、一殴りで馬の首を遠くに吹き飛ばす。スコットは、為す術もなく、冬眠用のエサにされてしまう。
一方、ケリーとドンは、空からグリズリーを発見した。着陸しようとすると、突然グリズリーがドンに飛びかかり、ベアハッグで殺してしまう。ケリーは、ライフルを撃ったが、全く受け付けない。そこで狙いを絞りロケットランチャーを放つと、グリズリーの体はバラバラになってしまう。