第53回(2003年)ベルリン国際映画祭の最優秀ヨーロッパ映画賞(「嘆きの天使賞」)
DDR(東ドイツ)の人々が、ドイツ統一で失ったものは何か。
東ベルリンに住む、主人公アレックスの母は熱心な社会党員だった。
ベルリンの壁崩壊の直前、心筋梗塞で倒れ、昏睡状態に陥る。
8ヶ月後、母は目覚めるが、ショックを与えないため、アレックスはDDRがまだ存続していると嘘をつく。
テレビが見たいという母に、友人が作った偽ニュースを見せていた。
しかし東ベルリンにも、西欧文明が流入してきた。
母が窓から外を眺めると、大きなコカコーラの広告が目に入る。
アレックスが母のために、嘘に嘘を重ねていく姿はユーモラス。
それだけに最後はどんでん返しが起きて、悲惨な結果になるのではないかと思った。
でも意外と、さわやかな終わり方だった。
東側の人たちの多くはベルリンの壁が崩れて、資本主義になっても、一種の喪失感を抱きつづけた。
しかしそれは、東ドイツの普遍性ではない。
日本でも40代以上で終戦を迎えた人たちの多くは、同じような気持ちに襲われた。
日本の30代の男たち(祖父の世代)の生き方は、二つに分かれた。
次男だった祖父は戦後元気になったタイプ。
一方、地主だった大伯父は農地解放で小作人に土地を取られて、体をこわした。
グッバイ・レーニン 2002 ドイツ