17世紀スウェーデンの啓蒙主義君主として知られるクリスティーナ女王時代の宮廷を舞台にした愛と陰謀を描く歴史映画。
監督はルーベン・マムリアン、主演はスウェーデン人女優のグレタ・ガルボ、相手役は四度目の共演だったジョン・ギルバート。
あらすじ
スウェーデン王グスタフ二世は三十年戦争で新教国の一員として神聖ローマ帝国と戦い、1631年リュッツェンの戦いで戦死する。王位を継承したのは若干6才の男装の麗人クリスチナ王女であった。クリスチナは執権の宰相オクセンスティールナの補佐を受けて育つが、三十年戦争も終盤を迎えた頃、クリスチナは美しい女王に成長していた。文学芸術に親しみ、戦争を忌み嫌うようになっていた。
クリスチナも成人になり結婚の問題が持ち上がる。宰相は従兄カールを推薦する。恋多きクリスチナは結婚する気はなく、彼女の愛人だった大蔵大臣マグヌスの愛も受け入れなくなった。
クリスチナが男装し召使アーゲと共に狩りに出かけるが、その夜吹雪に見舞われ、宿屋に泊まる。そこで彼女はスペイン大使のアントニオと出会い、愛し合う。皮肉にもアントニオはスペイン王フェリペ4世からクリスチナへの求婚を伝えるためにやって来たのだ。クリスチナはアントニオを間近に置こうとしたが、マグヌスが国民に全てをバラして、旧教徒アントニオへの反感を煽り立てた。
そしてクリスチナはアントニオを国外追放処分に処さざるを得なくなる。宰相はカールとの結婚を急かすが、クリスチナはカールに王位を譲る代わりに、退位してしまう。彼女は遂に決意した。
そして彼女はアントニオを追って港の船に乗り込むが、再会したアントニオはマグヌスとの決闘に敗れて、瀕死の床にあった。そしてクリスチナの腕の中で、アントニオは息を引き取った。船は出港し、クリスチナはたった一人で、かつて憧れた南欧へ旅立たなければならなかった。
雑感
実際のクリスティーナ女王は三十年戦争には興味がなく、従兄カール将軍に兵士を託していた。彼女はバロックの女王と呼ばれ、文化芸術を楽しんだ。時の啓蒙思想にかぶれた女王は、こんな雪国に縛り付けられるのでなく、もっと自由に行きたい、旅行がしたいと考えていて、南欧に憧れてカール10世へ譲位してしまう。
ただ、映画と違いマグヌスに当たる人物を処刑して民衆の評判を落としてしまい、その後アントニオにあたる人間を寵愛して近くに置こうとするが、そこでも評判を落として、国民の気持ちが離反して、やけになって退位したとも考えられる。
彼女は文芸に力を入れていたカトリックに改宗後、ポーランド国王やナポリ国王の座を狙ったが成らず、最終的にローマに移り住んで、サロンを開き一生を全うした。結婚せず、一生独身だったそうだ。
グレタ・ガルボの演技は魅力的だった。ただ、脚本がもの足りない。もう少しクリスチナが文芸にうつつを抜かす間に、カール伯が船上で戦う描写を加えて欲しかった。映画の描写ではただの男狂いにしか見えない。
でもどうしてスウェーデン人イングリッド・バーグマンは映画でクリスチナ女王役を演じないのか?彼女こそ南国イタリアのロベルト・ロッセリーニの下へ逃げて、クリスチナ女王を絵に描いたような人生を送ったのに。
スタッフ・キャスト
監督 ルーベン・マムーリアン
製作 ウォルター・ウェンジャー
原作 ザルカ・フィアテル 、 マーガレット・P・レヴィノ
脚色 H・M・ハーウッド 、 ザルカ・フィアテル
台詞 S・N・ベールマン
撮影 ウィリアム・H・ダニエルズ
音楽 ハーバート・ストサート
配役
女王クリスティーナ グレタ・ガルボ
スペイン大使アントニオ ジョン・ギルバート
マグナス蔵相 アイアン・キース
側近オクセンスティルナ ルイス・ストーン
友人エバ エリザベス・ヤング
召使オーゲ C・オーブリー・スミス
従兄弟カール伯 レジナルド・オーウェン