保安官の妻が殺され容疑者の遺留品に親友のイニシャルが残されていた。そこで親友が支配する町に保安官は向かう。
連続西部劇「ガン・スモーク」のラジオ作家でありテレビドラマ作家であったレス・クラッチフィールドの原作「ショウ・ダウン」を「80日間世界一周」でアカデミー脚本賞を受賞したジェームズ・ポーが脚色し「OK牧場の決斗」「荒野の七人」のジョン・スタージェスが監督した西部劇。撮影は「OK牧場の決斗」のチャールズ・ラング。
ヴィスタヴィジョンでテクニカラー作品。
主演はカーク・ダグラス、アンソニー・クイン。共演はアール・ホリマン、キャロリン・ジョーンズ、ブライアン・ハットンら。ダグラスとホリマンは「OK牧場の決斗」にも出演していた。
製作は名プロデューサーのハル・B・ウォリス。
あらすじ
オクラホマ州ポーニーは平和な町だったが、テキサス州から遊びに来た2人の若者リックとリーは先住民族の女を殺してしまった。女は連邦保安官マットの妻だった。マットは遺留品の鞍に書かれたイニシャルを一目みて恩人でテキサス州ガンヒルの大牧場主クレイグの関係者の物だとわかった。クレイグはガンヒルとその付近一帯の顔役でもあった。
マットは重い心を引きずりガンヒル行の列車に乗る。そこでクレイグの情婦リンダと知り合う。彼女はクレイグが息子リックを甘やかすのを心から嫌がった。
ガンヒルに到着するとマットはクレイグと再会し、鞍を返し事件の概要を伝える。死んだ妻が犯人につけた頬の傷と、クレイグの息子リックの傷が一致した。クレイグは息子の命乞いをするがマットは拒絶した。
町の酒場でマットはリックを逮捕し、手錠をかけてホテルの2階に立て籠る。帰りのポーニー行き列車は最終午後9時発で、まだ午後3時だった。保安官さえもクレイグを恐れ町民が遠巻きで見守る中で、愛人リンダだけはマットの味方になって話を聞いてやった。
クレイグは身内にホテルを包囲し、町を封鎖することを命じた。彼はマットの部屋へ直接行き、再び息子の命乞いをするが拒絶された。
夕闇が迫る中、リンダはショットガンをマットに手渡す。そのときクレイグに破門されたリーがマットを助けようとホテルに火を放った。最終列車の汽笛が遠くから聞こえて来るころ、ホテルは火の海になっていた。
マットは左手でリックのノド元にショットガンを当て右手を自由にしてホテルを出た。そして馬車に立ったまま乗り込み、駅に向かう。リーが拳銃をかまえて二人の前に立ち塞がる。リーとマットの撃ち合いになるが、リーの放った拳銃の弾はリックに当たってしまい、リー自身もマットに射殺された。
これを見たクレイグは、息子の仇を取るためにマックに決闘を挑む。先に抜いたのはクレイグだったが倒れたのもクレイグだった。恩人で共に青春を送った親友を失ったマットは一人寂しく最終列車に乗り込んだ。
雑感
義理と人情では人情が勝つというアメリカらしい籠城型の西部劇だ。映画「真昼の決斗」や「決断の午後三時十分」のように、城壁のない国アメリカでは籠城したらいずれどこかに逃げ出さねばならず、脱出するための列車と結びつきが深い。
カーク・ダグラスは娯楽作品を少し削って真面目な作品を作っていたら、アカデミー賞をもっと早く取れただろう。
この作品もジョン・スタージェス監督の西部劇で文句なしに面白いが、はじめから賞レースを捨てた作品だ。一方のアンソニー・クインが既にアカデミー助演男優賞を二度も取っていたのとは好対照だった。
カーク・ダグラスはバート・ランカスターと共演した「OK牧場の決斗」(1957)に続いての西部劇で、アンソニー・クインとは前年「炎の人ゴッホ」(1956年、この作品でアンソニー・クインは二度目のアカデミー助演男優賞を受賞)に続く共演。
キャロリン・ジョーンズはTVドラマ・シリーズ「アダムズ・ファミリー」の主役モーティシャ(妻)で有名である。
ジョン・スタージェス監督は上映後、しばらくしてから台詞を読み返して素晴らしい出来だと知った。実はその部分は赤狩りのブラックリストに載っていたダルトン・トランボによって書かれていた。
製作者ハル・ウォリスは原作の映画化権を買い取った1954年の段階でチャールトン・ヘストンとバート・ランカスターの主演を計画していた。
スタッフ
監督 ジョン・スタージェス
製作 ハル・B・ウォリス
脚本 ジェームズ・ポー、ダルトン・トランボ(クレジット無し)
撮影 チャールズ・ラング
音楽 ディミトリ・ティオムキン
キャスト
連邦保安官マット カーク・ダグラス
牧場主クレイグ アンソニー・クイン
クレイグの情婦リンダ キャロリン・ジョーンズ
クレイグの息子リック アール・ホリマン
クレイグの腹心べエロ ブラッド・デクスター
リックの共犯リー ブライアン・ハットン
マットの妻キャサリン ジヴァ・ロダン