太平洋戦争時にフィリピンで捕虜となり戦後に反逆罪に問われた男の実話に基づく、カール・フォアマンの原案・脚本をリチャード・フライシャーが監督した1時間の中編映画。
主演コンビは、ビル・ウィリアムズとバーバラ・ヘイルで、実生活でも夫婦である。
共演はリチャード・クワイン、リチャード・ルー、マリヤ・マルコ、フランク・フェントン。白黒映画。
あらすじ
ジム・フレッチャーが長い眠りから目覚めると、そこは軍の病院だった。彼は、フィリピンで日本軍の捕虜だったが、記憶喪失でその後に起きたことを覚えていなかった。太平洋戦争はすでに終わっており、ジムは友人マークを日本軍に密告した罪で軍法会議にかけられる運命にあった。果たして彼は、マークを殺したのか?
ジムは、身の潔白を証明するため、病院から脱走した。まず向かったのは、マークの自宅だった。そこには未亡人マーサがいて、暖かく出迎えてくれた。しかし彼女がコーヒーを淹れに奥に入った後、新聞を読むとジムの脱走が大々的に報じられていた。奥の部屋で彼女は警察に電話を掛けようとしていたので、ジムは彼女を人質にして、もう一人の親友テッドを頼りにロサンゼルスに逃げる。
車で逃げる道中、謎の車が追って、ジムとマーサを殺そうとした。マーサは、そこに至ってジム以外に真犯人がいることに気付く。
命からがら、ロスのホテルに到着した二人は、チャイナタウンで日本軍人の徳山が大手を振って料理店「白蓮」に入ってくるのを見る。早速、ジムは追跡するが逃げられる。さらに「白蓮」も翌日には、閉店してもぬけの殻だった。
徳山の足跡は絶たれたかと思われたが、テッドが「白蓮」に仲介した不動産屋を紹介してくれる。早速ジムが、不動産屋を訪ね、料理店のオーナー野口の自宅を教えてもらう・・・。
雑感
日本未公開映画である。
原題は、「クレー射撃」を意味している。このスポーツは昔、放した鴨を実際に撃っていたが、20世紀初頭には土の皿を撃つようになった。
映画は、短くて一時間あればサクっと見られる。やや、カール・フォアマンの脚本に雑なところはあったが、全体にスピーディで、答えは分かっていたけれど、予定調和的な安心感があった。
カール・フォアマンは、ゲイリー・クーパーとグレース・ケリーの主演した「真昼の決闘」の脚本を書いている。さらにユダヤ人でありアメリカ共産党に戦前参加していたため、赤狩りに遭ってハリウッドから離れた。そこでデビッド・リーンと出会い、ノンクレジットながら「戦場にかける橋」の脚本も務めた。
リチャード・フライシャー監督は、もしかして列車のシーンが得意なのだろうか。1952年の映画「その女を殺せ」では、ほとんどが車内シーンだった。
主演の一人、奥さんのバーバラ・ヘイルは、TVドラマで「ペリー・メイスン」の助手デラ・ストリートを長年演じていたから、日本でも有名だ。
スタッフ
監督 リチャード・フライシャー
原案・脚本 カール・フォアマン
製作 ハーマン・シュロム
撮影 ロバート・グラス
音楽 ポール・ソーテル
キャスト
ジム・フレッチャー ビル・ウィリアムズ
マーサ・グレゴリー(友人マークの妻) バーバラ・ヘイル
テッド・ナイルズ(友人) リチャード・クワイン
プレンティス少佐 フランク・フェントン
ヘレン・ミノコ(未亡人) マリヤ・マルコ
徳山(元日本軍) リチャード・ルー
***
野口の自宅に行くと、徳山とマフィアがいて、ジムは窓から逃げ出す。チャイナタウンで、親切なフィリピン人の戦争未亡人ミノコに助けられて追っ手から逃れて、無事ホテルに生還する。
すると、テッドから徳山が列車で逃亡を図っているという知らせが入る。ジムは、駅に急行し、徳山の車室に入る。そこには、徳山と並んで、テッドが銃を構えていた。
そのとき、ジムが失ったフィリピンでの記憶が蘇った。テッドがマークを徳山に密告したので争いとなり、ジムは頭部を強打されて昏睡したのだ。
一方、マーサは安全のため、テッドの自宅に身を寄せた。そこで不動産屋からテッドに宛てた手紙を読んで、全てに気付く。彼女は、跡を尾けていた海軍情報部に事情を説明し、プレンティス少佐は緊急手配を敷く。
ジムは、テッドと徳山に走行中の列車から突き落とされそうになる。危機一髪のところを警察が急行してテッドと徳山は逮捕される。実は、日本軍が刷っていた偽ドル札の一部を徳山とテッドは、横領して米国に持ち込み不動産屋を通してマネーロンダリングして、巨万の富を得ていたのだ。
ジムとマーサは、結婚すると報告してプレンティス少佐に別れを告げた。扉の向こうでは、曇り窓を通して二人の抱擁が見えていた。