暗く重たい映画だ。
ずっしり来る。
1950年から80年にかけて国際映画祭常連だったアンジェイ・ワイダ監督の作品を久しぶりに見た。年齢が80代になり、老いたりと思ってたけれど、全くそんなことはない。
まず、1939年ドイツとソ連のポーランド侵攻でソ連側の強制収容所に連行された将校アンジェイにフォーカスを当てている。
一度は妻のアンナ、娘のニカと面会するが、すぐ別れて収容所に移される。悪い予感がしたのか、彼は抑留中日記をしたためていた。
最後の日は何の前触れもなくやって来た。彼はソ連のカティン近くの森に移されて、そこで他の兵士と一緒に処刑されて土の中に埋められてしまう。
やがてドイツはソ連に宣戦布告してソ連領に攻め込みカティンの森の大虐殺現場を発見し、反ソ宣伝用に大々的に伝える。
ポーランドの人たちもその事実はドイツ軍の報道で知ることになる。
しかしやがてドイツは連合国の構成の前にポーランドから撤退し、ソ連がポーランドを東側として支配下に治める。そしてカティン事件をドイツ側の戦争犯罪行為にしてしまう。
一部の市民はソ連の犯罪行為と信じて地下に潜り抵抗したが、ソ連軍や長いものに巻かれるポーランド人によって抹殺され、容赦なく言論を封鎖した。
アンジェイ・ワイダ監督の父親がカティンの森事件で処刑されたそうだ。そのワイダ監督でさえ2007年まで沈黙していたのだから、当時のソ連やロシアの圧力のほどがよくわかる。
まずポーランドは戦勝国でない。ソ連に負けた国なのだ。他の東欧諸国も同じだ。占領されて傀儡政権を作られた。
そしていまだにロシアなしでは経済的になんともならず、真の独立というものを得ていない。
そういう意味では日本と旧連合国(米中)の関係と似ている。
音楽担当はあの現代音楽家ペンデレツキで、いやになるほど暗い音楽を書いている。
ソ連崩壊後、ソ連機密文書のいくつかが公開され、2万人ものポーランド人が処刑されていたことが明らかになる。しかしロシアは被疑者死亡で事件に蓋をしてしまった。虐殺とはいまだに認めていない。