アガサ・クリスティの映画失敗作の一つ。英国の興行成績が悪かったので、全米公開を断念した作品。原作者アガサ・クリスティーはラストのセックス・シーンに憤慨したそうだ。
監督、脚本はシドニー・ギリアット、音楽はバーナード・ハーマンで期待されていたのだが、予算的に足りなかったか?監督が老けたか?
出演はハイネル・ベネット、ヘイリー・ミルズ、ブリット・エクランド。
あらすじ
若者マイケルは定職に付かず、ぶらぶらしていた。ある骨董商で聞いた「ジプシーが丘」にふらりと遊びに行く。そこで大富豪の娘エリーと出会い、二人は意気投合する。ところが気味の悪いタウンゼントの占い師(老婆)が現れ、二人を呪う。
マイケルとエリーはそれからも出会いを重ね、愛を確かめ合う。そしてついに結婚式を挙げてしまう。欧州で新婚旅行をしていて、英国に戻ると、エリーも親戚たちは冷たい視線で迎えてくれた。弁護士リピンコットはマイケルにエリーのドイツ語家庭教師だったグレタは近付けるなと警告する。
二人は出会った場所である「ジプシーが丘」に知人である建築家サントニクスに依頼して一軒家を建ててもらうことにした。建築中、サントニクスがグレタと揉めているところにマイケルは居合わせる。サントニクスはグレタだけは用心しろと忠告した。
ついに一軒家が完成した。しかし初日から窓を石で割られる事件が発生する。近所の人を読んでお披露目パーティーを開くが、ずいぶん蜂が集まってきて、アレルギーのあるエリーは鼻を真っ赤にする。家に居着いたグレタはいつまでもエリーの支配者のように振る舞うので、親戚だけでなく、マイケルにも煙たがれて、大喧嘩をするが、結局追い出すことはできなかった。
ある日、医師フィルポットとロンドンのオークションに出かけている最中に、エリーが落馬したショックで心臓麻痺で死んでしまう。
警察の検死は脅迫の疑いがかかっているタウンゼントの占い師が現れなかったので延期になった。その間にマイケルはエリーの祖国である米国に渡り、遺産を相続した。何しろ世界6位の大富豪だから、一部でもとんでもない金額だ。サントニクスが死の床についているそうなので見舞うが、彼は突然怒りだす。しかしそれが最後の言葉だった。
彼がジプシーが丘の自宅に戻ると、グレタだけが待ってくれていた。グレタは満面の笑みを浮かべた。二人は以前からの愛人同士で、エリーとマイケルを引き合わせ一緒になるように誘導したのはグレタであった。この殺害計画も時間をかけて実行したのだ。
そこで郵便が届く。リピンコットからのもので、エリーと出会う前から探偵を付けられて、写真を撮られていたのだ。警察にも贈られているだろう。これで全ておしまいになったと分かった瞬間、マイケルはグレタの絞殺していた。
雑感
クソ映画だが、原作の通りに作れば良かったのに。原作は年老いてからの作品だから、過去の小説の焼き直しだが、伏線はあちこちに散りばめていて、二時間ドラマよりは楽しめたはずだ。
いがみ合う男と女が実は愛し合っていて共同で殺人を行うのは、初の推理小説「スタイルズ荘の怪事件」以来のアガサ・クリスティの定番である。だからクリスティを読んだら、真っ先に注意すべきことである。
ギリシャのシーンもスタジオ収録のようで,背景にはめ込んでいた。
企画にシドニー・ギリアット監督の名前があったのでアガサ・クリスティはOKを出したそうだが、「バルカン超特急」の脚本家であり、クリスチアナ・ブランド原作の「青の恐怖」の監督だからって、それは20年以上前のことである。現代の映画作りには付いていけなかったのは、作品を見ても明らかだ。
ヘイリー・ミルズはガリガリだから、体つきの差を見ただけでもブリット・エクランドの勝ちは見えていた。
ジョージ・サンダースもパー・オスカーソンも主人公ハイウェル・ベネットがエクランドに落とされることを見越していたわけだ。
スタッフ
監督・脚本 シドニー・ギリアット
製作 レスリー・ギリアット
原作 アガサ・クリスティー「終わりなき夜に生まれつく」(1967)
音楽 バーナード・ハーマン
撮影 ハリー・ワクスマン
キャスト
ヘイリー・ミルズ… 若き大富豪エリー
ハイウェル・ベネット… 野心家の運転手マイケル・ロジャース
ブリット・エクランド… 家庭教師グレタ
パー・オスカーソン… 建築家サントニクス
ジョージ・サンダース… 弁護士アンドリュー・リッピンコット
オーブリー・リチャーヅ… 隣の医師フィルポット