喜び(ヨロコビ)、悲しみ(カナシミ)、怒り(イカリ)、嫌悪(ムカムカ、嫌なものから遠ざかること)、恐れ(ビビリ、体と心をを守ること)の五つの要素が動く時、人間の感情も動いていく。理屈ではなく、感情が人間を動かすという考え方に基づいて、11歳の少女がミネソタから大都会サンフランシスコへ転居した場合の行動を、感情の揺れを通して描いている。
スティーブ・ジョブスがアップルから追放されたのが1985年、翌年にはルーカス・フィルムからCG部門ピクサー・スタジオを買い取った。そして10年掛けて育て上げて、1995年に「トイ・ストーリー」を世に送り出す。
それから二十余年。会社は株式交換によりディズニーの手に渡り、ジョブズは世を去ったが、ディズニー路線と一線を画したアニメ作りで今も第一線で頑張っている。
あらすじ
アメリカのミネソタでライリーという娘が生まれる。ライリーの頭の中にはヨロコビ、カナシミさらにイカリ、ムカムカ、ビビリという基礎感情が生まれる。ヨロコビをリーダーとして、5つの基礎感情は脳の「司令部」で働いている。ライリーの思い出は、その時の感情により、色分けされて「思い出ボール」となって「長期記憶」に保存される。その中で重要である思い出は、「特別な思い出」となって司令部内に保管された。その「特別な思い出」は、「アイスホッケー」「悪ふざけ」「友情」「正直」「家族」という大切な「島」を作り出している。
父親が事業を興し、一家は三人家族はサンフランシスコへ引っ越す。しかし荷物がなくなるなどのトラブルが続き、ライリーの司令部内の士気は下がり始める。ライリーが学校で自己紹介をするとき、カナシミが「思い出ボール」に手が触れた瞬間、ライリーがミネソタを思い出し、泣きだしてしまう。ネガティブな「特別な思い出」が初めて生まれ、もみ合いになったヨロコビとカナシミは全ての「特別な思い出」と一緒に、「長期記憶」の世界へ落っこちる。
脳には、イカリとムカムカとビビリが残されるが、ライリーはムカついたり怒ったり、臆病になったりする。父親に厳しく叱られ、家族との愛情の「島」が失われ、続けて大切な「島」が全て失われていく。
下界に落ちたヨロコビとカナシミは昔、空想の中でライリーがよく遊んでいたビンボンに手助けしてもらい、脳司令部へ帰ろうとする。
ライリーはミネソタへの家出を計画していた。一日掛けて、準備を済ませ、親の目を盗んでバス乗り場に行く。
ヨロコビ、カナシミは苦難を乗り越え、ようやく司令部の下までやって来るが、いったいどうやって登るのか。ヨロコビが「思い出ボール」をよく見ると、少しだけ青いカナシミが混じっていることに気付く。
ビンボンと別れ、何とか司令部にたどり着いたヨロコビは、初めてカナシミに指令ボタンを任せてみる・・・。
雑感
悲しい時は泣けというストレス対策のお話だ。11歳の少女の感情の起伏を五つの基礎感情だけで見事に描いていた。
多少説明臭いところはあったし、五元論に過ぎないのだけど、大人こそ見るべきアニメだと思った。適応障害とは、いずれかの感情が常に勝ってしまったり、全く無かったりするのだろうか。
珍しく、原題より邦題の方がよく出来た映画だ。原題のInside Out では裏返しになるが、頭の中身の方が相応しい。
ところでムカムカは原語では DISGUST である。ムカムカが正しい訳語だとは思わない。ウンザリの方が良さそうだが、今の子供は使わないのだろう。
吹替声優では、竹内結子、大竹しのぶが非常に上手かった。とくに竹内結子は、男の子の声も女の子の役も出来るから、子供に絵本を読むのが上手そうだ。
スタッフ・キャスト
監督 ピート・ドクター、ロニー・デル・カルメン
原案 ピクサーアニメの原案チーム
脚本 ピート・ドクター、メグ・レフォーブ、ジョシュ・クーリー
製作 ジョネス・リビラー
製作総指揮 ジョン・ラセター、アンドリュー・スタントン
声の出演
ヨロコビ エイミー・ポーラー (竹内結子)
カナシミ フィリス・スミス (大竹しのぶ)
ビンボン リチャード・カインド (佐藤二朗)
ライリー ケイトリン・ディアス
ライリーの父 カイラ・マクラクラン
ライリーの母 ダイアン・レイン