若年性アルツハイマー症と診断された50歳の女性言語学者と家族との絆を描いたベストセラー小説をジュリアン・ムーア主演で映画化したヒューマン・ドラマ
主演ジュリアン・ムーアアガデミー主演女優賞に輝いた。
共演にクリステン・スチュアート(次女)、アレック・ボールドウィン(夫役)。

監督・脚本はALS(筋委縮性側索硬化症)と戦いながら撮影に挑んだリチャード・グラッツァーとそれを引き継いだウォッシュ・ウエストモアランド

あらすじ

コロンビア大学の言語学者アリス・ハウランドは、大学医師である夫ジョンと3人の子どもと充実した人生を送っていた。
ある日アリスは簡単な単語を忘れる、道に迷うなどの症状が出現し始めた。アリスは医師から若年性アルツハイマー病と診断される。この時からアリスと家族の苦悩が始まった。言語学者であったアリスは、身に着けた知識である言語を失ってはいたが、培ってきた家族の絆は失わずにいた。
それは「遺伝性アルツハイマー」という症状だった。アリスのDNAを持つ子供たちも、この症状になるかもしれないという絶望だった。

そうする間に時間は刻々と過ぎていき、アリスの症状もゆっくりと進行していた、授業がわかりにくいと、生徒たちから非難されアリスは、職を辞する。
記憶力を誇りにして生きてきたアリスは「癌ならはずかしくない」とピンクリボンを例えに出して泣いた。
家で過ごすアリスの病状は急速に悪化し、子供達の名前も分からなくなった。
将来を懸念したアリスは「もしも自分のことすら分からなくなってしまったら、フォルダーを開けてビデオレターを見る様に」と自分宛ての手紙を書いた。

アリスとジョンは、夏季休暇を海辺の別荘で過ごす様になっていた。アリス自身も自分自身でいられる最後の夏と悟っていた。トイレの場所も分からなくなり失禁するアリスを介護するのが辛くなっていた。
リディアはニューヨークでの舞台出演のため、実家に滞在していた。アリスは演劇をやりたければ演劇科のある大学へ進むべきだと主張するが、リディアに今演じたいのだ。そのことで相変わらず二人の関係はギクシャクしている。
ジョンの勧めでアリスは演劇関係の本を読もうとするが、もはや脚本とリディアの日記の区別が付かない。日記を読まれたことを知ったリディアは激怒する。
リディアの演劇を見るために長女アナ、長男トムが実変に帰る。検査を受けて陽性がわかったアナは、夫と話し合った上で双子を妊娠していた。アリスはリディアの芝居を手放しでほめた。ただリディアが誰だかわかっていなかった。
アリスとリディアの関係も改善していった。

ある日、アリスは認知症介護の会でスピーチを行うことになった。原稿を聞くと、アリスは論理的で科学的な意見しか語っていない。リディアは今の気持ちを正直に告げた方がいいとアドバイスした。
原稿を書き換えたアリスはスピーチで実情を真摯に告げると彼女の言葉を聞いていた参加者たちや家族は泣いていた。
夫ジョンはミネソタの研究所への引き抜かれることになった、ジョンのことを知ったアリスは寒いミネソタに付いていくことを拒んだ。アナは無事、双子を出産。アリスは赤ん坊を抱くことができて喜ぶ。

しかしアリスの病状は悪化していった。介護士の不在中、アリスはフォルダーを開き、自分へ向けたビデオレターを見てしまう。それは自殺するように勧めるものだった。睡眠薬を口に入れようとしたところに、介護士が帰ってきて事が露見する。
アリスの自殺未遂にリディアは大きな衝撃を受け、母の面倒をみようと決意する。そしてジョンと入れ替わりにロサンゼルスからNYの実家へ戻ってきた。

今リディアはアリスに絵本を読み聞かせてる。そしてこの絵本は何を書いてたのかと尋ねた。するとアリスは「愛のための話」と微笑みながら告げた。アリスは日々、長く自分でいられるように闘いを続けている。

雑感

かつて奔放な演技を見せてくれたジュリアン・ムーアも非常に良い感じで老けていき、この作品では文句の付けようのない演技でアカデミー主演女優賞を受賞した。

アルツハイマー症になったら具体的にどのような症状が出るのか、よくわかった。見ているものの焦点がぼんやりして見えにくくなるのは初めて知った。また遺伝性の場合、半分の確率で子供に遺伝する。

印象に残ったのは、アリスが夫に「がん患者がピンクリボンを付けて更新してもらえるから幸せ。私も癌になれば良かった。こんな病気になって恥ずかしい」と言うシーン。癌になりたくはないが、若年アルツハイマー症が恥ずかしいと思う気持ちはわかる。筆者も物忘れが激しく、人前で物事の名前が出てこない時は慌ててしまい、恥ずかしい思いをする。アルツハイマーの人はそういう状態がずっと続いているのだ。

自殺させてやれば良かったが、介護士が物音を立てて驚いた時に薬を落とす音を立てて、事態が明らかになる。
自殺という選択肢が無くなった以上、1日でも長く自分自身でいられるように努力しなければならない。それでも若年性の方が確実に進行が早い。介護する家族も大変な苦労だ。
今ではDNA検査で若年性アルツハイマー症の可能性を知る事ができる。悲劇を避けるために結婚する前に、一度受けてみては如何か。もちろん今後、病気の進行を遅らせる薬の開発も進むだろう。

 

スタッフ

監督、脚色リチャード・グラッツァー、ウォッシュ・ウェストモアランド
原作リサ・ジェノヴァ
製作レックス・ルッツス、ジェームズ・ブラウン、パメラ・コフラー
製作総指揮クリスティーン・ヴェイコン、マリア・シュライバー
撮影ドニ・ルノワール
音楽アイラン・エシュケリ

キャスト

アリス  ジュリアン・ムーア
次女リディア  クリステン・スチュワート
夫ジョン  アレック・ボールドウィン
長女アナ  ケイト・ボスワース
長男トム  ハンター・パリッシュ
チャーリー  シェーン・マクレー
フレデリック  セス・ギリアム
ベンジャミン博士  スティーヴン・クンケン
ジェニー  エリン・ダーク
エリック  ダニエル・ジェロール

 

 

アリスのままで Still Alice 2014 キラー・フィルムズ製作 ソニー・ピクチャーズ配給 キノ・フィルムズ国内配給(2015) オスカー受賞作

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