メキシコの高級観光地アカプルコを舞台にアラン・ワイスの脚本をリチャード・ソープが監督した,ラテン中心のミュージカル映画。
主演はエルヴィス・プレスリー。共演はウルスラ・アンドレス、エルザ・カルデナス。カラー映画。
あらすじ
マイクは、高級ヨットで水夫をしていた。アカプルコに上陸し、夜はバーで歌い、女性闘牛士であるドロレスに拍手を受ける。しかし、ヨット・オーナーの娘が彼を尾けて来ていた。怒ったオーナーは、その場で彼を解雇する。
マイクは、異国で放り出され呆然とする。歌を聞いた少年ラウールが歩合制マネージャーになり、マイクにホテルの仕事を斡旋する。
ホテルで働いているとマイクは、そこの営業ウーマンであるマルガリータに出会い、そのプロポーションの良さに胸がときめく。彼女の父親マキシミリアンは元貴族だったが、落魄して同じホテルでシェフとして働いていた。
二人の親しげな様子に、水泳飛び込みのメキシコ・チャンピオンであるモレノはマイクに、ドロレスはマルガリータにそれぞれ嫉妬して邪魔をする。何故かマイクは、一人で恐々と高飛び込みの練習をしていた。
マイクは、昼はホテル・プールの監視員、夜は他のホテルで歌のオーディションを受けていた。そしてラウールの子供離れした交渉力により、大きなホテルで歌手として雇われることになる。これで、給料が手に入ればアメリカにも帰れると喜ぶ。
すると、マルガリータも結婚を仄めかす。果たして、彼女はアメリカに移住したいがために、偽装結婚しようとしているのではないか。そんな疑惑が沸いたマイクは、マルガリータと喧嘩をしてしまう・・・。
雑感
リチャード・ソープ監督のエルヴィス・プレスリー映画演出は、軍隊応召前の「監獄ロック」以来二作目である。
まず、エルヴィス・プレスリーは、このメキシコ・ロケーションに参加していない。現地ロケは代役が演じている。それは、かつてメキシコでエルヴィス・プレスリー映画を見て、若者が暴動を起こしたことがあり、エルヴィス・プレスリーは危険人物としてメキシコに入国できなかったからである。それもメキシコの政治家の陰謀によるものだったのだ。
なお、スタジオ・シーンは、ハリウッドで収録している。ロケ・シーンも顔が見えるのは嵌め込みだ。だから、エルヴィス・プレスリーは、この映画に乗り気でなかった。歌についても、ラテンを主に歌っているが、いつものド迫力がない(力が抜けているため、かえって新鮮に聞こえる)。
そんなわけで、アメリカ国内でもこれは評価が低い方だ。ただし、彼もワンパターンの観光映画ばかり撮っていやになっていたのもわかる。
ボンド・ガールにまでなったウルスラ・アンドレスと共演しているのだから、アカプルコに拘らずに、普通の恋愛映画を作れば良かったのにと思う。
スタッフ
製作 ハル・B・ウォリス
監督 リチャード・ソープ
脚本 アラン・ワイス
撮影 ダニエル・L・ファップ
音楽 ジョセフ・J・リリー
製作総指揮 ジョセフ・H・ヘイゼン
キャスト
マイク・ウィングレン エルヴィス・プレスリー
マルガリーテ・ドーフィーネ(ホテルの営業) ウルスラ・アンドレス
ドロレス・ゴメス(闘牛士) エルザ・カルデナス
マクシミリアン(マルガリータの父) ポール・ルーカス
ラウール・アルメイド(少年マネージャー) ラリー・ドマシン
モレオ(飛び込みチャンピオン) アレジャンドロ・レイ
ホセ ロバート・カリカート
***
マキシミリアンは、マイクにその理由を教えてくれた。マキシミリアンの料理の腕は、アメリカでも大きなホテルの料理長になれるものだった。しかし、彼が出国するためには、娘がアメリカ人と結婚して市民権を得るしかなかった。しかし、父親はそのために偽装結婚するような娘ではないと言う。
マルガリータに会って、愛情を確かめようとしたマイクに対して、モレノが彼の過去を暴く。マイクは、アメリカのサーカスで空中ブランコのスターだったが、事故でコンビの兄を失った。そのトラウマで高所恐怖症になってしまい、傷ついて旅に出たのだ。
かっとしたマイクは、モレノを殴り腕を骨折させる。モレノは、アカプルコの高い断崖から飛び込むことになっていたため、マイクが代役をつとめることになった。高所恐怖症の彼に果たして務まるか?
マイクは、大勢の観客が見守る中で、高所からのダイビングに成功する。その中にはマルガリータ、ドロレス、モレノもいた。すでにドロレスは、モレノに乗り換えていた。海から上って来たマイクをマルガリータは暖かく迎え、彼は観衆に歌を披露した。