ハードボイルドでもミュージカルでも何でもござれの職人井上梅次監督が大映に呼ばれて撮ったミステリー映画
原作はアメリカでシリーズ化されたハロルド・Q・マズア原作の弁護士スコット・ジョーダン第1作(1947)。ペリー・メースンよりレイモンド・チャンドラー風のハードボイルドに感じた。
クレジットは二番目だが、出ずっぱりの田宮二郎がカッコ良い主役(弁護士)を演じる。
ヒロインは人妻役の若尾文子で、脇を川崎敬三、村上不二雄、江波杏子、安部徹が締めている。

あらすじ

弁護士中部京介(田宮二郎)は九州出張の予定をくりあげ、東京のマンションに帰った。自分の部屋に入ると、女の素足が見える。ブランデーに酔った女はミッチイ丘(浜田ゆう子)と名乗った。そこへ探偵とカメラマンが情事の現場を撮影しようとして踏み込んできた。
部屋の鍵を貸していた芥川(川崎敬三)の悪戯だと推理した京介は女をタクシーに乗せて追い出し、ようやく眠りにつく。
その途端に刑事(村上不二男)にたたきおこされた。ミッチイが車中で急死し、しかも青酸カリによる死亡だという。疑いを解いた京介は警察に協力して捜査に参加する。
まず友人の芥川を探し出す。彼は愛のない妻千津(若尾文子)に円満離婚を申し込むが、世間体を重んじる親戚が反対していた。そこで紹介してもらったミッチィと会っているところを探偵に写真を撮らせようとしたのだ。しかし芥川は昼から酔ってしまい、バーで寝込んでミッチイと会うことはなかった。
芥川からの依頼でミッチィを紹介した玉井弁護士(北原義郎)によると、ミッチイが百万長者徳丸氏の死亡事故における証人とわかった。ミッチィは徳丸氏の遺族から狙われていた可能性がある。やがて京介のマンションで芥川が何者かに射殺された。
容疑者としてヤクザのボス郷田(安倍徹)が逮捕された。彼は保釈中にもかかわらず旅行をしたのをミッチイに知られ強請られたため殺し、それから京介を狙ったが偶々部屋にいた芥川を殺したと警察は言っている。ところが、京介の部屋にあったウィスキーを飲んだ玉井が急に苦しんで死んだ。ウィスキーに青酸カリが仕込まれていたのだ。
そこに至って、ついに京介は事件の真相に気付いた。
酒に毒を仕込んだ人物は離婚協議が成立しようとしていた妻千津だった。彼女が芥川を射殺した。千津は離婚の慰謝料としてもらうはずだった株が暴落したので、夫を殺して全財産を相続するつもりだった。そして捜査に加わる京介まで殺そうとしたのだ。千津は毒を煽り「わたしを深くうずめて」と言って、京介の腕に抱かれながら死んだ。

 

雑感

内容は今更の2時間ドラマだが、昭和38年の映画としてはなかなか渋いアメリカ風ミステリー(ハードボイルド)だ。
何より田宮二郎が格好良い。重みのある男性俳優の中で、こう言う日活的な二枚目ができたのは、大映の中では彼だけだった。
一方、ヒロインの若尾文子は見せ場の少ない役柄に不満を募らせてやる気もなかったにちがいない。
監督の井上梅次が日活でアクション映画を撮っていた人だけに、大映の大物女優陣には受けが悪かったかもしれない。
しかし若手の江波杏子にはチャンスと歓迎されただろう。

 

 

スタッフ

 

監督・脚色 井上梅次
原作 ハロルド・Q・マズア
企画 原田光夫
撮影 渡辺徹
音楽 伊部晴美

 

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配役

 

千津夫人 若尾文子
中部京介 田宮二郎 (クレジットは二位だが、ほぼ出ずっぱりの主役)
芥川一郎 川崎敬三
徳丸めぐみ 江波杏子
ミッチイ丘 浜田ゆう子
玉井弁護士 北原義郎
河内謙(こうち けん) 守田学
武田警部 村上不二夫
郷田隆造 安部徹

 

 

 

 

わたしを深く埋めて 1963 大映 – 田宮二郎が格好良いハードボイルド弁護士役 –

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