9.11同時多発テロの悲劇をいまだに忘れられないアメリカ人にとっては、みんなで救われなければいけないのに、自分だけ救われてほっとしている映画に見えるのだろう。
各誌のブック・オブ・ザ・イヤーに輝いた。さらに映画もアカデミー作品賞にノミネートされながら、アメリカ内部での映画の評価は高くない。
そこに今のアメリカが抱えている二極化の苦悩を見る。
監督スティーブン・ダルドリーも英国人であり、9.11に対する見方が一般の米国人と大きく違うと思った。
 
しかし9.11と関係なくアスペルガー症候群に関心のある人には興味ある映画だったし、ラストも泣けるほど満足できた。
米国人はアスペルガーについて興味が無いのかも知れない。知識が欠けている批評もロッテン・トマトで見られた。、

 

原作はジョナサン・サフラン・フォアの同名小説、これをエリック・ロスが脚本化してスティーブン・ダルドリー(「リトル・ダンサー」)が監督を務めた。
主演はトーマス・ホーン、サンドラ・ブロック、共演はマックス・フォン・シドウ、ジェフリー・ライト、トム・ハンクス

あらすじ

 
オスカーはアスペルガー症候群の中学生だ。
宝石店を経営する父・トーマスはオスカーを外に引きずり出して人と話をさせようと「調査探検」を考えつく。それはNYの大洪水で流されたという第6区を探す遊びだった。
しかしあの9.11の日、父を同時多発テロで失ったオスカーは、それ以来調査探検を辞めてしまう。
トーマスの死から1年後、父を忘れたくないオスカーはクローゼットを物色し父に関わる品物を探す。ブラックと書かれた封筒に何かの鍵を見つけたオスカーは、父が残したメッセージを感じ取り、ひとりで調査し始める。

 
オスカーは電話帳に載っている472人のブラック氏に会おうと決意する。彼は地区ごとにリストを作り、アビー・ブラックから一軒ずつ訪ねる。近所に住む祖母の間借り人という老人とオスカーは知り合う。老人は唖で、筆談で会話をしていた。しかし老人は父と似ており、老人は家出した祖父ではないかと考える。

 
実はオスカーには秘密があった。事件当日の父からのメッセージは6件あり、最後の電話に怖くて出られなかったのだ。
オスカーの告白を聞いた老人は調査をやめるよう言うが、オスカーと老人に喧嘩別れする。
手がかりの新聞紙の裏面に印があるのを見つけたオスカーが電話すると、最初に会ったアビーに繋がった。鍵はアビーの夫・ウィリアムの父の遺品の貸金庫の鍵で、それが花瓶に入っていることを知らずにウィリアムは遺品セールで父トーマスに譲ったのだった。
 

ウィリアムの許から帰宅したオスカーは、母リンダがオスカーの冒険の一部始終を知っていたと教えられる。リンダはオスカーの行動を推測し、先回りして段取りを付けていた。オスカーはそれを知って、リンダと固く抱き合います。
オスカーは調査結果を書いた手紙を訪問したブラックさん全てに送った。そして父との思い出を「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」というノートにまとめるが、それは飛び出す絵本になっていた。
オスカーは、トーマスが何度も公園のブランコを漕ぐように勧めたことを思い出し、そのブランコの裏にトーマスからの手紙を見つけた。それには「手がかり発見、おめでとう」とあり、オスカーは恐れていたブランコを生まれて初めて思い切り漕いだ。

 

雑感

トーマス・ホーンはクイズ番組で優勝したときにスカウトされた。演技未経験だったが、映画に出演させるとアスペルガーそのものに見えた。おそらく天才少年であり、アスペの傾向があったのではないだろうか。
 
私も軽いアスペルガーだから、オスカー少年の心理はよく分かる。原作者もまた自分かあるいは身内にアスペルガーがいるのだろう。
映画のオスカー少年は中学生だが、まだ保護者を必要とする。でも将来、飛び出す絵本作家になれば一人立ちできるかも知れない。
そのときに「調査探検」(自分で学ぶ方法)を教えてくれた父親の恩を思い出すだろう。なかなか親子の関係を考えさせられる映画だ。
唯一不思議だったのは、母が隠れて協力していたことを知ってオスカーが怒らなかったことだ。私なら拗ねると思った。しかしアスペルガーも十人十色だ。

 

 

スタッフ・キャスト

 

監督 スティーブン・ダルドリー
脚本 エリック・ロス
原作 ジョナサン・サフラン・フォア
製作 スコット・ルーディン
製作総指揮 セリア・D・コスタス、マーク・ロイバル、ノーラ・スキナー
音楽 アレクサンドル・デスプラ

配役
オスカー・シェル – トーマス・ホーン
母リンダ・シェル – サンドラ・ブロック
父トーマス・シェル – トム・ハンクス
間借り人 – マックス・フォン・シドー
アビー・ブラック – ヴィオラ・デイヴィス
アビーの元夫ウィリアム・ブラック – ジェフリー・ライト
スタン – ジョン・グッドマン
オスカーの祖母 – ゾーイ・コールドウェル

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い Extremely Loud & Incredibly close 2011 スコット・ルーディン・プロ製作 ワーナーブラザーズ配給

投稿ナビゲーション