ヴィム・ヴェンダースのロードムービー三部作第二弾で、カラー作品。
ゲーテの名作教養小説「ヴィルヘルム・マイスターの修行時代」を基に、ペーター・ハントケが脚本を書いている。
唐突に旅の道連れが出来るあたりは難解そうだが、終わってみると日本人にも案外分かりやすい作品。やはり日本人とドイツ人は似ている。
あらすじ
・母子の別れ、旅立ち
母親に「作家志望なら人嫌いではいけない」と言われて、主人公ヴィルヘルムは首都ボンに向けて旅立つ。
・旅の仲間たちとの出会い
ヴィルヘルムは、途中で出会った老人と孫娘、女優と仲間になり、旅を共にする。とくに美しい女優に対して特別な感情を抱く。
・実業家の死
ライン川沿いの田舎町で実業家と出会い、部屋を借りる。妻を亡くして自殺を考えていたと言う実業家からヴィルヘルムは「他人から孤独と見られていると感じた時、君は孤独である」と教えられる。翌朝散歩に出かけると、老人がナチスの軍人でユダヤ人を大勢殺したと告白される。それ以来、ヴィルヘルムは老人を敬遠する。部屋に帰ると、実業家が首吊り自殺していた。
・仲間との別れ
主人公は老人、孫娘、女優とフランクフルトに向かうが、もう女優に関心は無かった。老人を追い払い、孫娘を女優に預けて、ヴィルヘルムは一人、国境のツークスビッシェ峠に旅立つ。そこに着いたとき、ひと気がなくて、彼はまた回り道してしまったことに気づく。
雑感
最後はオチである。主人公は結局人嫌いを拗らせて、人を避けてしまい、母親の言ったことを守れなかった。これでは何も書けないはずだ。
13才のナスターシャ・キンスキーは、ディスコでヴェンダース監督が誰か知らずナンパしたそうだ。名前を尋ねたら大俳優クラウス・キンスキーの娘だった。これがデビュー作だが、後半出ずっぱりで聾唖者の孫娘役だから台詞はないがヌードシーンはあった。こっちの方が「テス」から「パリ・テキサス」に至る黄金期よりずっと不思議な存在感を醸し出していた。たとえば、のちのベルリン国際映画祭、カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞するハンナ・シグラ(女優役)を完全に喰っていた。
スタッフ・キャスト
監督 ヴィム・ヴェンダース
脚本 ペーター・ハントケ
製作 ペーター・ゲネー、ベルント・アイヒンガー
音楽 ユルゲン・クニーパー
撮影 ロビー・ミューラー
配役
ヴィルヘルム リュディガー・フォーグラー
テレーゼ ハンナ・シグラ
レルテス ハンス・クリスチャン・ブレッヒ
ランダウ ペーター・カーン
ミニョン ナスターシャ・キンスキー (本名の姓ナクシンスキでクレジットされる)