キェシロフスキ監督の91年カンヌ国際批評家協会賞受賞作品。
欧州独特の、答えの無いミステリーファンタジー。
ポーランドに住むベロニカは音大のピアノ科を出たが、指を故障し、歌手への転向を図っていた。
休暇で友人を訪ね、そこで知り合った音楽家によって、地方楽団のコンサートにソリストとして出演することが決まったり、ボーイフレンドとの関係も進み、何事も順風満帆だったベロニカだが、コンサートの当日、心臓麻痺を起こし突然死してしまう。
一方、ベロニカとうり二つの女性ベロニクはパリの音楽教師。
ベロニカが死んだそのとき、心のないセックスをしていたベロニクは、なぜか涙が止まらなくなる。
そのときから、自分が自分だけでなく、誰かに見守られているような気がしてならない。
やがて彼女は、マリオネットアーティストの男ファブリと運命的な出会いをする。
そのころから彼女の元へ謎の電話が掛かったり、カセットテープが送りつけられるようになる。
そのカセットの音を頼りに彼女は送り主を追いつめていく。
電車の音から駅の喫茶店を探しだしたが、そこにいたのは、ファブリだった。
彼は小説を準備しており、女が如何に簡単に男におびき出されるか、試してみた。と言う。
その言葉に怒り、飛び出したベロニクだったが、やがてファブリの真意を知り、ふたりは心から結ばれる。
彼は彼女がポーランドを旅行したときの写真の中から、ベロニクにそっくりな女性が写っているものを発見する。
ベロニクは服装が違うから自分ではないと言う。
ベロニクは、自分を見守るようなベロニカの写真に自分たちの運命を悟る。
ファブリは、そんなふたりを主人公にした物語を創作する。

イングリッド・バーグマン似で、黒髪のフランス女優イレーヌ・ジャコブ(トリコロール赤の愛)がベロニカとベロニクの二役を演ずる。
必ずしも演じ分けができているとは思えないが、その辺を曖昧に描こうとしている映画だから、まあ良いのだろう。
映画の謎解きについては、当時からああでもない、こうでもないと揉めていたようだが、監督が死んでしまったから、藪の中のようだ。
僕の解答はこうだ。
ベロニカはあくまで想像上の存在に過ぎない。
ベロニクが愛のない生活に空しさを感じたとき、世界と自分を繋ぐ、何かを求めた結果がベロニカだ。
そしてベロニクの精神的な成長を、ポーランドで写した一枚の写真を基にして、物語としてファブリが考え出したストーリーが前半のベロニカの部分だ。
作品としては、ちょっと難解な感じ。
日本人やアメリカ人には合わない人が多いだろう。
イレーヌがタイプならお薦めだ。
ベロニカがコンサートで歌うはずだった、オケ伴奏の歌曲は実に美しい。
劇中では17世紀のオランダの作品と言っていたが、どう考えたって、あんなポエティックな古典派の曲があるわけない。
どうやらオリジナルらしい。

ふたりのベロニカ La Double Vie de Veronique (1991, France and Poland)

投稿ナビゲーション


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です