原作は松谷みよ子が1969年に書いた児童文学。これを松山善三が大胆に脚色して1976年に映画化した。
独立プロによる映画だったので、予算は掛けられずCGのような派手な特殊効果も使えなかった。
ただ有名俳優だけは手弁当で駆けつけてくれた。

主演は子役の二人、上屋建一原口祐子
共演は倍賞千恵子、森繁久彌、高峰秀子

 

ストーリー

夏休みに広島へやって来た兄妹が空き家で不思議な体験をする。喋る椅子と出会ったのだ。その古い椅子はイーダという女の子を探していた。そして三才の妹ゆうこ(あだ名はイーダ)をその女の子と錯覚しているようだ。
リツ子という近所の娘が兄妹の世話を見ていた。リツ子は椅子を製造した人間の名前を見つける。また兄直樹は6の日付の日めくりを見つける。リツ子はそれが昭和20年のものだと気づく。そして直樹と8月6日に広島に精霊流しに行く。
椅子は広島の原爆投下で亡くなった女の子が使っていたものだったが、椅子自身は原爆が落ちたことを知らなかった。
翌日直樹は、不思議な椅子と会い原爆で女の子が死んだと主張する。椅子はショックで壊れてしまう。
しかしリツ子から手紙が来て、リツ子がイーダだったことがわかる。実はリツ子は原爆性白血病に長年苦しんでいた。

これが原作あらすじなのだが、映画ではリツ子にあたる人物がいない。
そのかわり兄妹の母親と祖母(ともに存命)が被爆者として描かれている。
椅子は、自ら広島市内へ行って少女イーダの幽霊と対面し実際に原爆が爆発したことを知る。
最後に椅子は、再び兄妹の前に現れ、少女の許へ行くと言ったので、瀬戸内海に流される。

 

雑感

映画は、原作を読むのが難しい子供達に伝わるように作ったものだろう。
ただし、原作の謎解きやファンタジー性、余韻を残すエンディングは真似できなかった。

それに映画制作から40年以上経って、親世代も原爆を知らずに育ったため、原爆に関する子供の疑問を解くことができない。
したがってこの映画は長い間、人目を見なかったのだ。

最近の馬鹿親は子供にトラウマを与えたくない とすぐ言いだす。
私だって初めて住友銀行広島支店の玄関石段にこびり付いた遺体の影(死の人影、人影の石)について聞かされたときは、夢に見るほど怖かった。
でも、どうしても知らなければならないことはある。
だからこの作品は、今こそジブリリメイクして欲しい

2011年の福島原発事故に関しても無関心が広がり、国民はアホな政府の言いなりになった。
原因は、無関心だった国民にもある。
そして電力会社の描く夢の未来を信じた科学者の無責任でもある。

だからこそ、子供にもわかるように映画で描くことが必要ではないか。
しかし、今や大資本マスコミと結びつくジブリにはできなくなった。
1988年の「火垂るの墓」では戦争の悲惨さを描けたのに。

 

スタッフ

監督、脚本 松山善三
脚本協力 山田洋次
原作 松谷みよ子
音楽 木下忠司

 

キャスト

相沢美智  倍賞千恵子
相沢直樹  上屋建一
相沢ゆう子  原口祐子
須川利一郎  森繁久彌
須川菊枝、ナレーター  高峰秀子
広岡研二  山口崇
イスの声  宇野重吉

 

ふたりのイーダ 1976 映画「ふたりのイーダ」プロダクション 製作・配給 – 広島原爆の悲劇を訴えた児童映画

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