昭和32年当時の大阪の子供はよく知っていた実話。
中学生の圭一は香里小学校に通う姉弟まち子と文雄とともどもつづり方兄妹として枚方では有名人だった。
三人が書く作文が全て賞を獲るのだ。
台湾からの引き揚げ者である父母は貧乏のどん底生活をしていたが、六人もいる子供たちはのびのびと育っていた。
近所からは子供を賞金稼ぎしていると妬まれることもあったが、父母は賞品には手を付けなかった。
モスクワの作文コンクールに三人は作文を送ったが、二人は入賞したのだが文雄だけ返事がなかった。
文雄は来る日も来る日も返事を待っていたが、大雨に打たれた日、腹痛を訴え床に伏せる。
主治医は儲け主義の内科医で高い薬しか出さず、父母の外出中に容態が急変し死んでしまう。
葬式の後、モスクワから文雄が受賞した知らせが届く。
戦前の高峰秀子主演映画「綴方教室」と違い、この映画の結末はかなり重い。
作文がうまくたって何も良いことはないと結んでいる。
昭和33年という時代にしては、ずいぶんニヒルな映画だ。
それだけ物が市場にあふれ、貧富の差が拡大し始めた証拠だろう。
文章なんか書いているより、革命だったのだろう。
単に名子役が主演しているだけなら、地味な映画だったが、
森繁や乙羽が脇を締めて、引き締まった佳作になった。
監督 久松静児
脚色 八住利雄
原作 野上丹治 野上洋子 野上房雄
撮影 高橋通夫
音楽 斎藤一郎
出演
織田政雄 (野村元治)
望月優子 (みつ)
藤川昭雄 (圭一(長男))
竹野マリ (まち子(長女))
頭師孝雄 (文雄(次男))
香川京子 (杉田(文雄の先生))
津島恵子 (井東(まち子の先生))
森繁久彌 (ブリキ屋の親方)
乙羽信子 (みつの妹)
左卜全
二木てるみ
永遠のセルマ・リッター
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