明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

さて昨年末の満島ひかりによる江戸川乱歩短編集(第3期)から第2幕「そろばんが恋を語る話」。

これは江戸川乱歩が今の早稲田大学政経学部を卒業後、大正期に出身地三重の鈴木商店造船所の事務所で働いた頃の経験をもとに執筆した短編小説。
冴えない男が好きな女性に告白できず、他人に分からず暗号で気持ちを伝えようとするが・・・。

 

あらすじ

 

外見に自信はない青年T(ハライチ岩井)が隣席に座る部下のS子(満島ひかり)に恋をした。しかし告白する勇気はない。そこで算盤を使って暗号で気持ちを伝えようとする。会社では給与計算で数多くいる従業員を分類するため、二桁の数字で50音一文字を表すことにしている。10の位は「あかさたなはまやらわ」の列を表し、1の位は「あいうえお」の行を表す。22は「き」と言う具合である。これを続ければいくつかの桁の数字で単語や短文が表される。

誰よりも出社したTはS子の算盤を取り「愛しの君」に当たる数字を残しておいた。その後、出社したS子は何か気付いたように算盤を眺めている。

そこでTは第2段階に移る。今度は「ヒノヤマ」に当たる数字を算盤に並べて置いた。近所の遊園地であり、逢い引きに使われる場所だ。S子も気付き、「これはあなたでしょう」と言って微笑む。

果たして諾なのか?女心は男には分からない。勇気を出してTは早朝算盤に「けふかえりに」と並べて置いた。それを見たS子はその日の夕方に「ゆきます」に当たる数字を算盤に残して帰った。Tもそれを見て胸が躍り、日の山遊園地に飛んでいった。ところが二時間経ってもS子は現れない。

訝しんだTは会社へ戻り、S子の原価計算簿の最後の数字を見ると、最後に合計として書かれた数字は「八十三万二千二百七十一円三十三銭」であった。文字に直すと確かに「ゆきます」だが、それは単なる偶然に過ぎなかったのだ。

 

 

 

 

雑感

 

 

TだのS子だの、星新一の書くショートショートの原型のような掌編小説。ドラマでは尺調整で、少し長めの話になっていた。

気の弱い男が告白して振られれば良いものを、小細工を弄したために壮大な勘違いをしてしまう。彼女は分かって、この数字を置いた算盤をそのままにしたのだろうか。そうだとすると、Tは馬鹿にされているではないか。どちらにしろ、脈はありません。

それでも救いがあるのは、大正時代はまだ見合い結婚が普通だったから、いずれ結婚できるのである。

ところが現代では、Tみたいな男は結婚できないだろう。非モテ男の悲哀を感じさせる作品だった。

 

スタッフ&キャスト

 

演出 森ガキ侑大

主演 満島ひかりハライチ岩井勇気、嶋田久作、松澤匠(ナレーター)

 

 

そろばんが恋を語る話 NHK BS (2018.12.30) 満島ひかり×江戸川乱歩 (第3期) 第2幕

投稿ナビゲーション