アガサ・クリスティーの名作ミステリ小説を、第二次世界大戦中アメリカに移っていたルネ・クレールの名演出でお送りする。

私はクラシックな探偵映画なら、ハードボイルドであろうが犯人探しであろうが、何でも好きな人間である。
それにしてもこの映画は楽しかった!
演出が牧歌的なのだ。

 

当時の英米人監督なら、たとえばヒッチコックのようにスリラーやサスペンスになる。
ところがフランス人巨匠ルネ・クレールは妙にロマンチックで暖かな映画にしている。
凄まじい連続殺人事件が起きるというのに(笑)

鍵穴の両方から覗き合うなど隣室同士で互いに疑いあっている様は、大監督が撮っているとは思わせない。実にべたな手法だ(笑)
そういえば、「奥様は魔女」(1942、ルネ・クレール監督、フレデリック・マーチ、ヴェロニカ・レイク主演)もべただった。
最後では、原作と違う大どんでん返しが用意されている。(アガサ・クリスティは舞台用戯曲としてこのエンディングを考案していた)
小説としてこのエンディングはブーイングものだが、映画としてはこっちの方が合っている。
しかし一番犯人ではないと思われる人間こそ真犯人だという探偵映画の鉄則は守っている。

監督 ルネ・クレール(アメリカ時代の最後の作品)
脚本 ダドリー・ニコルズ

 

 

出演
バリー・フィッツジェラルド (前年に「我が道を往く」でアカデミー助演男優賞。他に「裸の町」主演)
ウォルター・ヒューストン (1948年「黄金」でアカデミー助演男優賞。ジョン・ヒューストンの父、アンジェリカ・ヒューストンの祖父)
ルイス・ヘイワード (のちにテレビで活躍。)
ジューン・デュプレ (「バグダッドの盗賊」1940年版のお姫様。白黒映画になるとイメージが変わる)

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