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映画を一年に365本見ることを20年続けるとうそぶく中年映画マニアと、青年の友情を描く青春映画。最後に意外な結末を見せる。

脚本、監督は、映画評論家からこの作品で監督デビューした原田眞人
撮影は「戒厳令」の長谷川元吉が担当している。
主演は川谷拓三重田尚彦
共演は浅野温子、室田日出雄、石橋蓮司

雑感

映画評論家で映画監督の原田眞人のデビュー作で自叙伝的作品。
初監督だけあって肩に力の入った作品でまだ青いけれど、映画愛が伝わってくる。
昭和43年の秋から翌年の正月の沼津を描いている。東京では東大紛争が起きていて、主人公も巻き込まれて受験勉強をやめて映画ばかり観ている。新宿に映画を見に行ったときに、ばったり中年映画ファンのダンさんと出会う。

劇中で「さらば友よ」(1968)の看板を写していたり、川谷拓三が踊る「雨に唄えば」(1952)のパロディシーンや「タクシードライバー」(1976)のような襲撃シーン、映画館で観ていた「新 網走番外地」(1968)、「座頭市果し状」(1968)の1シーンなどが出てくる。

ヒロイン浅野温子の上半身ヌードは拝めます。ただし、背中は怖いけれども。
室田日出男がオカマの父親役を好演。

 

キャスト

川谷拓三  ダンさん(映画好きの板前)
重田尚彦  シューマ(浪人生)
浅野温子  ミナミ(高校の後輩)
鈴木ヒロミツ  ダメハツ
トビー門口  コチ
山口美也子  テンコ
小杉勇二  和田(ミナミの元彼)
石橋蓮司  本間(ヤクザ)
室田日出男  須賀忠太郎(シューマの父)
原田芳雄  鱈坂俊二(映画監督)

 

スタッフ

製作  磯田秀人
脚本、監督  原田眞人
撮影  長谷川元吉
音楽  宇崎竜童
助監督  崔洋一


ストーリー

沼津に住み宅浪しているシューマは、映画好きの青年だ。ある日、新幹線に乗って新宿で映画を見ていると、ぺちゃぺちゃ喋る女子学生がいた。その時ダンさんという男が立ち上がり「人から愛されるように映画見る気ない?」と言い放った。女学生は映画館に通報しその男を痴漢扱いするので、シューマは彼の無罪を証明した。
男は、「あなたはニック・ビアンコ」とシューマに声を掛ける。それはシューマの好きな白黒映画「死の接吻」で主演リチャード・ウィドマークが言ったセリフだった。その男はダンさんと言い、一年365本映画の20年見ていたいというオタクであった・・・。

シューマは父と二人暮らしである。父は沼津で「“ロード・ハウス」という喫茶店をやっている。シューマはガールハントに出かけて、ミナミという高校の後輩と出会う。
その後、シューマはダンさんと草月会館で再会し意気投合し、ダンさんは沼津に移って板前の仕事を見つける。
ダンさんは、ミナミを好きになったシューマを心配して彼をキャバレーに連れていく。ミナミは、そこでホステスをしていた。シューマはダンさんと絶交して、ミナミも姿を消す。

1969年元旦、ミナミからシューマに電話があり、再会することになる。二人は、ついにモーテルに入るが、シューマは彼女の肌に刺青があるのに気付く。ミナミはヤクザ本間の女だった。シューマはすっかり萎えてしまい、ミナミと別れることになる。シューマは、思わず「本間を殺してやりたい」とダンさんに口走る。父は、彼を台湾で童貞を捨ててこいと送り出した。

シューマが日本に帰って世間が東大紛争の実況を見守っている頃、ダンさんが久しぶりに現われる。ダンさんは、本間襲撃のプランを真剣に考えてくれていたのだ。しかし、台湾で童貞を捨てたシューマには、どうでもいいことだった。シューマは、ダンさんを罵って一人で帰る。

インディアンサマーのような冬のあたたかい日、ダンさんは本間が属する暴力団に殴り込んで本間と相打ちになって、最後はミナミに撃たれて死んだ。
シューマは、「新・網走番外地」がかかる映画館に行った。高倉健の姿がダンさんに見えてくる。館内で騒ぐ男たちにシューマは「人から愛されるように映画見る気ないですか?」と言って、彼らを投げ飛ばして去って行く。

 

さらば映画の友よ インディアン・サマー 1979 キティ・フィルム製作 ヘラルド配給 – 川谷拓三主演の青春映画

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