子猫が、飼い主と逸れて鳥にいじめられている所を救った猫たちの助けを借りて、再び飼い主の元へ戻るまでを描いた動物映画。原題は子猫の意味。
イワン・ポポフが監督を務め、世界的な犬猫の調教師であるアンドレイ・クズネツォフが猫を可愛がるおじさんの役で出演している。
あらすじ
モスクワに住むフルート奏者の子供たちが、ペット市で一匹の子猫をただで貰ってくる。子猫は「チグラーシャ」と名づけられる。いたずらざかりで、チグラーシャは追い出されそうになるが、子供たちが彼のトイレの躾に成功する。
しかしチグラーシャは、窓からトラックの荷台に落ちてしまい、見知らぬ通りに連れていかれる。そして何日たってもチグラーシャは見つからない。
チグラーシャも我が家を探していて、ワーシャという猫に助けられる。ワーシャは、チグラーシャを雑役夫フェージンのところへ連れて行く。そこは猫のジンジン、ブドーライカ、イザウラらを多頭飼育していた。
フェージンは地上げ屋に屋根裏部屋の明渡しを要求される。さらに勤め先から解雇を申し渡される。それでも部屋を出ていかなかったが、地上げ屋に殴られて、病院送りになってしまう。再び野良となった猫たちは、知恵を働かせて支えあって生きていく。
大晦日、通りに出たチグラーシャは、懐かしい響きを耳にする。それはパパのフルートのメロディーだった。チグラーシャは、ジルベスター・コンサートのステージに駆け登り、エンディングでパパの肩に停まる。子供たちは大喜びでチグラーシャに駆け寄る。
病院から帰ってきたフェージンは、電気を止められ、猫も逃げ出した部屋で新年を迎えようとしていた。帰り道に新入り猫と出会って連れ帰ると、ワーシャや他の猫も帰ってきて賑やかな部屋に戻ってくれたが、将来を考えるとフェージンは途方に暮れる。
雑感
監督イワン・ポポフはデザイナーから監督養成所に移った人で、猫を可愛がる主演の姉弟は監督の子供だ。この映画は、養成所の卒業作品だった。
猫の多頭飼育で追い出されるフェージン役の人物は、世界的な犬猫の調教師だそうだ。
チグラーシャは虎猫の意味。やはりムツゴロウ映画「子猫物語」のチャトラン同様に、チグラーシャ役にも5頭の似たような猫を使って演じさせている。おそらくロシアでは虎猫と総称するため、区別がつかない人が多いのだろうが、日本人はキジトラ、キジシロ、サバトラ、サバシロと分けて認識するため、猫が切り替わるたびに気が付いてしまう。
ソ連が崩壊して5、6年経ってエリツィン大統領の時代を迎えたが、ロシア経済は安定せず、フェージンのような雑役夫はいつ解雇されてもおかしくない。地上げ屋は逮捕されたが、これから寒い冬を迎えて大勢の猫と一緒に、稼ぎもないまま暮らせるのだろうか。
1998年にはロシア通貨危機が発生して、大リストラが発生する。
スタッフ
脚本:イワン・ポポフ、アレクサンドル・マリヤモフ
監督:イワン・ポポフ
撮影:ウラジ-ミル・ファステンコ
美術:イリーナ・マルツ
音楽:マルク・ミンコフ
キャスト
フェージン:アンドレイ・クズネツォフ
姉:マーシャ・ポポフ
弟:サーシャ・ポポフ
祖母:リュドミラ・アリニナ
母:タチアナ・グラウツ
父:アレクセイ・ヴォイチュク