ヴィム・ヴェンダース監督のヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作品。映画「ハメット」撮影時に製作総指揮フランシス・フォード・コッポラとのトラブルで時間が空いたので、その鬱憤を晴らすべく撮った作品。有名監督が多く出演している。
主演はフリードリヒ・バウシャウ、共演はアレン・ゴウィッツ、サミュエル・フラー、ロジャー・クラマー、ロジャー・ベーコン。
あらすじ
映画撮影チームがポルトガルの海岸で白黒SF映画のロケを行なっていた。しかし撮影監督のジョーはフィルムの在庫が無くなったという。プロデューサーのゴードンはロスに金策に行ったまま帰ってきていない。脚本家のデニスは全く筆が進まず、自暴自棄になっている。監督のフリードリッヒは嫌な予感がするままゴードンを追ってロスへ旅立つ。
ロスでポルトガルロケの資金はデニスの金だったと聞かされる。さらに弁護士に出会うとゴードンは組織の金を使い込み姿を消したと言う。フリードリヒは町中探し回ってやっとトレーラーに隠れているところを見つける。そこで一晩中二人はそれぞれの映画観をぶつけ合っていた。
ゴードンは「ただカラー映画にして物語を描いてくれれば破滅する事はなかった」と訴える。フリードリッヒは「物語など映画に不要。人間と人間の空間で映画は作られる」と曰う。
お互い平行線を辿ったまま、翌朝を迎え別れの時がやって来た。別れを惜しんでいると、突然ゴードンが射殺される。フリードリヒは銃の代わりにカメラを構えるが、やはり射殺される。
雑感
監督が「映画は物語にあらず」と言う自説を主張するために作った作品。「ハメット」が妙にケバくて、よくわからない作品になったが、その恨み辛みを晴らした。
「ハメット」の撮影がコッポラとのトラブルで中断して、ヴィム・ヴェンダースはポルトガルで当時の恋人イザベル・ヴェルガルタンの映画「領土」撮影現場を訪れる。そこでインスピレーションが湧き、映画終了後にスタッフを引き継いで取り始めたのがこの映画である。
最初から4分の3ぐらいまではポルトガルで突然訪れた休暇をダラダラと過ごす俳優と撮影クルーの様子を描く。そこには全く物語はない。同時並行的にそれぞれの様子を描いているだけ。ませた子役たち、付き合っている男優に飽きて来た女優、妻の重い病状に絶望する撮影監督、全財産をこの映画に注ぎ込み出来の酷さに絶望している脚本家。
ところが残りの部分でハードボイルドらしい追いかけっこが始まり、ついにプロデューサーを見つける。しかし彼は組織から追われる身になっており、もう二度とロスにいられない。しかしロスを離れられない。そして悲劇的結末を迎える。
この映画で撮影監督としてアンリ・アルカンと出会う。アルカンは戦後のフランス映画を代表する映画カメラマン(「美女と野獣」「ローマの休日」「トプカピ」)。ヴィム・ヴェンダース監督と組んで「ベルリン天使の詩」も撮影している。
スタッフ・キャスト
監督 ヴィム・ヴェンダース
製作 クリス・ジーヴァニッヒ
脚本 ヴィム・ヴェンダース 、 ロバート・クレイマー
撮影 アンリ・アルカン 、 マーティン・シェーファー 、 フレッド・マーフィー
音楽 ユルゲン・クニーパー
配役
フリードリヒ フリードリヒ・バウシャウ
ゴードン アレン・ゴアウィッツ
ジョー サミュエル・フラー
弁護士 ロジャー・コーマン