日露戦争の好景気に沸く伏見でベンチャービジネスとして遊郭を開いた男のロマン。
伏見は淀川を利用した交通の拠点として栄えたが、その中書島には戦後まで続いた赤線地帯があった。
福井から伏見へ出てきた貫太は妻の銀とともに300円の金で空き家を借り受け、遊郭「貫銀楼」として商売をはじめる。
はじめは三人の娼婦ではじめるが、一人は脚抜けして(逃げ出して)一人は入院する。
結局、若い菊奴一人に負担が押しつけられる。
そんなとき救世軍が娼婦解放を訴え、菊奴の心は揺れる。
ある日、救世軍をリンチしたとして警察が遊郭の席主たちを追求するが、貫太は身代わりになって自首する。
貫太はこれを機会に存在を示して、貫銀楼をより広い場所に移転する。
1958年に売春防止法によって赤線は廃止されたが、その前年の上映だったから、最後のクレジットに遊郭の悲劇はいつまでも続く旨が書かれていた。
たしかにいつの時代も悲劇は終わらないものだが、主人側の立場でしかもベンチャーとして肯定的に描けたのはこの時代が最後なのかも知れない。
珍しい日活の明治ものだ。
三橋達也の日活主演作は「洲崎パラダイス赤信号」以来久しぶりに見た。
実に色気のある演技を見せていた。
「洲崎パラダイス赤信号」同様に、この映画でも新珠三千代が別れそうで別れられない妻を演じていた。
芦川いずみは普段のヒロイン役と全くちがうが、女の弱さをうまく表現した。
八住利雄の脚本も立派な出来で、脇役に回った凄いメンツをうまく御していた。
石原裕次郎以前の日活の面白かった頃の映画だ。
監督 滝沢英輔
脚色 八住利雄
原作 西口克己
製作 高木雅行
撮影 横山実
音楽 佐藤勝
出演
三橋達也 (鰐口貫太)
新珠三千代 (銀)
宇野重吉 (勢五郎)
芦川いづみ (菊奴)
利根はる恵 (竹奴)
清水将夫 (碇川)
宍戸錠
佐野浅夫
澤村國太郎
芦田伸介
浜村純
天草四郎
殿山泰司
永遠のセルマ・リッター
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