典型的な長谷川一夫映画である。
 

江戸末期。
精神的に少し幼稚なところのあった、ぼんぼん並木礼三郎(長谷川一夫)が貧乏農家の娘お光(山根壽子)と駆け落ちする。
二人は江戸へ出るが、ちょっと目を離した隙に生き別れになる。
やけになった彼は泥棒一味に身を落とすが、数年後お光と偶然再会する。
彼女は夜鷹に身を落としていた。
はじめは夜鷹になったことが許せなかった礼三郎だが、やがて彼女を許す。
しかし優しい言葉をかける前に、役人に捕まり、流刑となる。
時代は明治に変わり、大赦を受けた彼は再びお光と再会する。
 


 

長谷川一夫があの声で、あのふくよかな体でいながら、妙に幼稚だ。
長谷川の映画はいつもそうだが、かなりナルシスである(笑)
しかし映画自体は小道具の使い方がうまくて、アメリカ映画のように感じられた。
 

まず生き別れになった後、夜鷹になったお光が浪人者を礼三郎とは気づかず家に入れ、行燈の灯をつけるシーン。
明るくなって初めて二人は気づき、お互いの変わり様をののしり合う。
 

それから流刑から帰って来たラストシーンで礼三郎がつける高灯篭の明かり。
迎えに来たのに会えないお光だったが、この灯のおかげでとうとう礼三郎に気づき、何も言わず彼の胸に飛び込むのだ。
どちらも灯が、再会を劇的なものにしていた。
 

お光役の山根壽子は美人ではないが、清潔感溢れる女優さん。
戦時中から活躍していて、戦後も新東宝の「細雪」では高峰秀子の上の三女を演じていた。

鬼あざみ(1950)大映

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