明治末期を描いたメロドラマ。新派の人気舞台にもなった泉鏡花原作小説の二度目の映画化。
衣笠貞之助と相良準が脚色、衣笠貞之助が監督した。カラー映画で渡辺公夫が撮影している。
主演は山本富士子。
共演は川崎敬三、野添ひとみ、佐野周二。
雑感
最初の映画化は1941年に島津保次郎が監督して化猫女優の入江たか子が主演した。実は、幽霊譚である。
戦後に山本富士子が再演したとあって、高く評価されている。
しかし、周囲の俳優が山本富士子を引き立てるだけの役であり、私はとくに面白くなかった。
彼女の作品の場合、誰かライバルを設定した方が良い。
キャスト
山本富士子 お篠
川崎敬三 稲木順一
入江洋佑 稲木孝
佐野周二 五坂熊次郎
清川玉枝 五坂秀子
信欣三 津川作造
見明凡太朗 巽喜平
小夜福子 巽おさい
上田吉二郎 巽弥平
高松英郎 巽与吉
野添ひとみ 伊達七重
三宅邦子 伊達類子
東野英治郎 沖田
賀原夏子 おとり
細川ちか子 いく
村田知栄子 おえい
白井玲子 おとみ
角梨枝子 和歌吉
スタッフ
製作 永田雅一
企画 中代冨士男
原作 泉鏡花
脚色、監督 衣笠貞之助
脚色 相良準
撮影 渡辺公夫
音楽 斎藤一郎
ストーリー
明治末期。
浜町河岸の料亭辰巳屋は、不況で財産を差し押さえられる。一人娘のお篠は、債権者の目を盗み抜けだして家宝の伊達白鷹画伯の名作一品を待合の砂子に預けた。自分が親に変わって稼がなければならないお篠は砂子で手伝いをしていたが、成長して小篠と言う名で芸者となった。
砂子のお女将おとりは、成金の船舶王五坂熊次郎に小篠を取り持つ。小篠は、五坂のスケベ根性が嫌だったが、辛抱して座敷を務める。
亡くなった伊達白鷹画伯の弟子・稲木順一が文展に入選する。その祝賀会で座敷に呼ばれ、お篠は順一に惹かれる・・・。
順一が、色紙に白鷺を描き「あなたの印象です」と言った。彼も小篠を愛し始めた。二人が結ばれた頃、五坂は二人の様子に気づき、おとりに小篠を囲い者にする話を進める。実は、小篠が芸者になる上で五坂が全費用を払っていたのだ。
仕方なく小篠は、ある覚悟を抱いて五坂の寝室へ入った。一方、小篠を待っている順一の部屋の襖がスーツと開いた。顔青ざめた小篠が音もなく入って来て、隣の部屋へ出ていった。順一が見に行くと誰もいなかった。小篠は五坂の寝室で自分の喉をついていた。死装束となった小篠の長襦袢には、順一が白鷺の柄を描いていた。