原作北村寿夫NHK連続放送劇小川正が脚色、萩原遼が監督する五篇に分れた連続映画の第一部。主演は中村錦之助高千穂ひづる、共演は大友柳太朗和田道子、岸井明。白黒映画。

ストーリー

南紀州に住む代官那智嘉門は、ローマの聖者から授けられた紅孔雀の鍵を持っていた。鍵と地図があれば、財宝が手に入る。聖者はそれを貧民対策に使えと言ったが、嘉門は、もし悪者の手に落ちたらと思い、このことを一族郎党にも今まで黙ってきた。
鍵の秘密を知った海賊網の長老は、「されこうべ党」の妖術使い信夫(しのぶ)一角と組んで財宝を狙っていた。一角の真の狙いは、長者の娘久美だった。しかし、娘は嘉門の子小四郎と恋仲になってしまう。
一角は、漁師に化けて風小僧を騙して、鍵を奪い嘉門を捕えた。若い小四郎の腕では、一角の妖術の前に歯が立たない。そんなとき、ぶらりと諸国を放浪していた兄主水が屋敷に立ち寄り、心眼を鍛えよと言い残して、立ち去る。
失策を取り返そうとする風小僧が一角から鍵を擦りとって小四郎に手渡す。しかし一角は追ってきた。小四郎と一角は取っ組み合いの末、断崖絶壁から鍵もろとも落ちていく・・・。

 

雑感

北村寿夫原作の「新諸国物語」シリーズは全七作ある。この紅孔雀は第三弾である。前々作「白鳥の騎士」、前作の「笛吹童子」同様にNHKラジオドラマ(一年間放送)になっている。主演は少年向け東映時代劇映画「笛吹童子」(子供向け映画はジャリ物と言われた)で一躍スターダムを登っていった中村錦之助が務めた。中村錦之助は、当時少年たちのヒーローだったのだ。
映画「紅孔雀」は第五部まで作られたが、いずれも一時間余りの中編映画である。それを年末から毎週順番に封切って、一月中に全部上映して、大ヒットした。これは、前作「笛吹童子」が第三部まで作られ、週替わりで大ヒットを飛ばしたのと同じ手法だ。これで時代劇に力を入れた新興の東映は、老舗の松竹や日活、大映を差し置いて「時代劇の東映」の名を恣にする。
高千穂ひずるは、「笛吹童子」同様にヒロイン役を演じている。プロ野球審判だった二出川延期の娘で、宝塚歌劇団で寿美花代と同期だったが1952年退団し、松竹に入社。しかし一年後に東映に移籍して、中村錦之助や東千代之介と共演した。1957年に松竹に復帰したが、大瀬康一と結婚後、家業を引き継ぐために夫婦揃って芸能界を引退した。
網の長者を演ずる吉田義夫のドアップは、迫力があって印象的だった。

スタッフ

企画  坪井与、宮城文夫、吉野誠一
原作 北村寿夫
脚本  小川正
監督  萩原遼
撮影  吉田貞次
音楽  高橋半

 

キャスト

那智の小四郎  中村錦之介
那智嘉門(父、代官)  有馬宏治
幾重(姉)  西条鮎子
主水(兄)  大友柳太朗
藤内(嘉門の部下)  高松錦之助
稲(妻)  松浦築枝
楓(藤内の娘)  和田道子
風小僧  山手弘
ローマの聖者  水野浩
弘念和尚  岸井明

網の長者(元海賊)  吉田義夫
久美(娘)  高千穂ひづる
信夫一角(妖術使い)  小柴幹治

新諸国物語「紅孔雀」第一部・那智の小天狗 1954.12.27公開 東映京都製作 東映配給 NHKラジオドラマの映画化

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