1960年(昭和35年)に製作、1963年(昭和38年)に公開された、ジャン=リュック・ゴダール監督によるフランス長編映画第二弾である。
政治的な問題を含み、難解(退屈)な作品ゆえに公開が3年遅れた。

主演は、ミシェル・シュポール
共演のアンナ・カリーナは、この作品がゴダール長編映画への初登場である。

あらすじ

アルジェリア戦争真っ最中でのスイス、ジュネーヴ。フランスとアルジェリアのテロリスト集団がこの地で暗躍していた。
ブリュノの表の職業は報道カメラマンだが、実はフランスからの脱走兵である。主義思想と無縁の男だったが、今はヴィシー政権の流れを汲むOAS(ヴィシー政権の流れを汲む右翼テロ集団)の世話になって、裏でスパイをしている。

彼は、友人の紹介で美しいモデルのヴェロニカに出逢う。アンニュイな魅力を持つヴェロニカに惹かれて、すぐ付き合い始める。

彼は、FLN(アルジェリア民族解放戦線)との二重スパイと認められたパリヴォダの暗殺を組織に命じられる。ブリュノは拒否したが、スイス警察に交通事故で訴えられ(有罪になると亡命者は強制送還になり、脱走兵なのでフランス側で銃殺される)、OASと取引して暗殺の実行を約束する。しかしブリュノは、気乗りせずなかなか撃つことができない。痺れを切らしたOASは、ブリュノを裏切り者と認定する。
パリヴォダを尾け回したブリュノは、FLNにも目を付けられて、拉致監禁される。風呂場で水攻めにより拷問されても、ブリュノは吐こうとしない。彼は、吐こうにも何も考えていなかった・・・。

雑感

「鏡のなかに映る自分の顔が、自分の内面に思い描いている自分の顔と一致しないことに気づく男の物語である」とは、ジャン=リュック・ゴダール自身の言葉である。たしかにそれをイメージさせるカットが劇中にある。

ノンポリが、政治闘争に巻き込まれたら悲劇だ。やはりフランス人は、シロかアカか立場を決めて戦わなければならない人間なのだ。

フランスからアルジェリアが独立を求めたアルジェリア戦争(1954年〜62年)の真っ最中に、実在するOASと革命運動であるFLNに所属する架空の人物を劇中に登場させている。
おそらく1958年秋にシャルル・ド・ゴールが大統領になったので、アルジェリア問題は早く収まると考えたのでないか。(OASは、ド・ゴール大統領に反発して作られた組織で、OASの起こしたド・ゴール暗殺未遂事件は、小説や映画「ジャッカルの日」で有名)
しかし1962年3月のアルジェリア独立による停戦だけでなく、同年6月にOASとFLNが停戦するまで、映画公開することは許されなかった。

この映画は、アンナ・カリーナをヒロインに迎えたゴダール最初の作品である。彼女のフォトジェニックなところを撮りまくっていた。自分専用の、ブリジット・バルドーを見つけた気分だったのだな。

アルジェリア戦争が62年まで続いたため、しばらくお蔵入りになった。
翌61年、長篇第3作「女は女である」でベルリン国際映画祭銀熊賞を2年連続で受賞し、アンナ・カリーナも女優賞を獲得する。ゴダールはカリーナと結婚し、さらに62年は、長篇第4作「女と男のいる舗道」を公開した。1963年1月になってから、本作はようやく公開に至った。

スタッフ

監督・脚本 : ジャン=リュック・ゴダール
音楽 : モーリス・ルルー
撮影監督 : ラウール・クタール
撮影オペレータ : ミシェル・ラトゥーシュ

キャスト

ミシェル・シュボール (ブリュノ・フォルスティエ)
アンナ・カリーナ (ヴェロニカ・ドレエル)
アンリ=ジャック・ユエ (ジャック)
ポール・ボーヴェ (ポール)
ラズロ・サボ (ラズロ)
(以下、ノンクレジット )
ジョルジュ・ド・ボールガール (活動家の指導者)
ジャン=リュック・ゴダール (鉄道の駅にいる男)

ネタばれ

やがて、ブリュノは二階から飛び降りて、ヴェロニカにより救出される。
実はヴェロニカこそFLNのスパイだったのだ。彼女はブリュノを監視し、OASと接触したことを知らせるのが任務だった。
しかし、ブリュノ同様に活動に疑問を持ったヴェロニカは、FLNに反発しブリュノとともにチューリッヒへの逃亡を図る。

二人は、結局OASに捕らわれる。ブリュノは、OASの要求を呑んでパリヴォダを撃った。でも、その時にはすでにヴェロニカは処刑されていた。

 

 

小さな兵隊 Le Petit Soldat 1960 ジョルジュ・ド・ポールガール製作 レ・フィルム・アンペリエ配給 (1963年仏公開) ATG国内配給(1968年日本公開)

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