(☆)泉鏡花の原作小説で新派劇として有名な作品を依田義賢が脚色。三隅研次が監督した復讐映画
カラー映画で、撮影は武田千吉郎
主演は市川雷蔵、共演は万里昌代、三条魔子、千田是也、木暮実千代、船越英二、水戸光子

雑感

泉鏡花原作の五度目の映画化である(ただし、1942年のマキノ正博の東宝映画正続編を一作品とする)。
この映画は、新派の脚本より原作に近付けて脚本が書かれている。
早瀬主税は復讐を成し遂げるが、原作小説と違ってラストで自殺はしないで生き延びる。

別れる切れるは芸者の時にいう言葉、いっそ死ねと言って」のところ、万里昌代の演技はあっさり過ぎて物足りなかった。チャンバラ映画の三隈研次監督だからしょうがない。
山本富士子なら上手くやっただろうが、あまりここで女優を目立たせても主演の市川雷蔵が喰われてしまうので、この配役で良いとしよう。

三条魔子は、まだ三条江梨子に改名する以前の作品である。この後、橋幸夫主演映画「江梨子」のヒロインになって三条江梨子と名乗るようになる。その後、悪女役が増えてきて三条魔子に再改名する。

 

キャスト

市川雷蔵  早瀬主税
万里昌代  お蔦
船越英二  魚屋めの惣
三条魔子  酒井教授の長女妙子
木暮実千代  芸妓小芳
水戸光子  河野夫人
千田是也  東大教授酒井俊蔵
藤原礼子  河野家の長女道子
加茂良子  河野家の次女菅子
片山明彦  河野英吉
友田輝  教頭
南美江  酒井の正妻謹
上田吉二郎  坂田礼之進
石黒達也  英吉の父河野英臣
伊達三郎  スリの万太
藤村志保   女学生

スタッフ

製作   永田雅一
企画   鈴木晰成
原作   泉鏡花
脚色   依田義賢
監督   三隅研次
撮影   武田千吉郎
音楽   伊福部昭

ストーリー

明治時代。
早瀬主税は親が亡く、スリとして育てられた。しかし、帝大教授酒井俊蔵に捕まり、性根をたたき直され内弟子として英才教育を受け東京帝大の独文科を卒業する。しかし、酒井の一人娘妙子(実母は芸妓小芳)が自分を慕っているを知り、酒井家を出て軍参謀本部に入って独語翻訳者として自活する。
主税は、魚屋めの惣の媒酌で柳橋の芸者お蔦と結婚する。ただし、恩師酒井には伏せていた。お蔦の姉貴分である小芳は、主税の結婚は身分違いなので上手く行くわけがないと説く・・・。

静岡の病院の息子で同窓の河野英吉は、妙子に興味を抱く。酒井は、主税が認めるのなら結婚を許すという。主税は英吉の性格を知り抜いていて、妙子には相応しくないと結論する。優等生主悦にメンツを潰された英吉は、主税がスリの一味だったこと、芸妓を妻に持ったことを知り、新聞に暴露して主税を軍参謀本部から追放させる。酒井は河野の息が掛かった文部大臣の使者に主税と妙子を一緒にすると啖呵を切った手前、お蔦とは別れろと主税に命じた。主税も、師匠の命令とあっては聞かざるを得ない。
お蔦を白梅の咲く湯島天神の境内に誘った。お蔦は突然の別れ話に悲しむが、師匠の命とあっては仕方なし、身を引くことを承知した。彼女は、めの惣の家内が髪結いをしているので、手伝いに行くことにした。

河野に復讐せんとする主税は、めの惣から河野の奥様が馬丁と関係し、長女道子を産んだことを聞く。静岡に行った力は、河野一家に接近してドイツ語塾を開く。先ず、政略結婚させられた道子に近付いて信用を勝ち取った。そこで、主税は道子に母の秘密を教える。それを聞いた夫人は、主税を射って重傷を負わせる。
その頃、お蔦は結核で死の床にあった。酒井の命令で、めの惣が静岡に行くが、主税は師の命を受けて別れた妻とは会えぬと言って帰らない。お蔦は「芸者にも真実な女がいます」と酒井に訴えて死んでいった。
傷のいえた主税が帰り支度をしていると、河野家の当主が夫人を射殺したと道子が伝えた。東京に戻ると、主税はお蔦との思い出が残る湯島天神に立った。空には、再び梅の花が舞っていた。

 

 

婦系図 1962 大映京都製作 大映配給 – 泉鏡花原作、五度目の映画化

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