独身貴族を満喫していた男が、突然別の世界線でマイホーム・パパになり、幸福とは何か考えさせられるハート・ウォーミング・ファンタジー

デイヴィッド・ダイヤモンド、デイヴィッド・ウェイスマンの脚本をブレット・ラトナーが監督する。
撮影はダンテ・スピノッティ
主演はニコラス・ケイジ、共演はティア・レオーニ、ドン・チードル

米国ではユニバーサルの2000年クリスマス映画だったが、日本ではギャガの配給で2001年のGW映画になった。

ストーリー

1987年、ジャックは一年間の海外研修に行くためロンドン行きの飛行機に乗ろうとしていた。直前になって恋人のケイトから「考え直して欲しい」と引き留められるが、「一年で壊れるような仲ではない」と言って、彼女を振り切り旅立つ。

13年後の2000年にジャックはニューヨークの投資銀行社長になっていた。既にケイトとは破局して優雅な独身生活を満喫している。クリスマス・イヴにも幹部を招集し、企業買収について会議をしていると、ケイトから久しぶりに連絡が入っていたようだ。帰り道でジャックは、黒人キャッシュと出会う。ジャックはキャッシュに親切にすると、彼は「何が起きても、あんたの責任だ」という謎の言葉を残して、立ち去る。

翌朝、ジャックが目を覚ましたのは、ニュージャージーにある一軒家のベッドの上だった。隣にはケイトが寝ており、二人の間には子供までいる。何故だ?ジャックの前に高級車に乗ったキャッシュが現れ、「答えは自分で探せ」と一言残して行ってしまう。
長女アニーは、不自然な様子のジャックを見て、てっきりエイリアンだと思い込む。義父の経営するタイヤの小売り店に出勤すると、この世界がジャックが海外研修を中止し、ケイトと結婚した「あったはずの人生」であることを知る・・・。

雑感

邯鄲の夢」とは、うたた寝をする男が50年間別の人生を生きる夢を見るが、目覚めてみると一瞬の出来事だったという中国の古典だ。そんな夢に関わるおとぎ話だ。
ジャックは、夢に落ちた時は現実世界に戻りたいと思うが、次第に夢の人生に納得していく。そして、現実世界より夢の世界の方を選択する。
しかし、ベルの音が鳴り、キャッシュが現れる。そして、ジャックはこの世界が夢にすぎないことを知る。
ここで「ベルの音」が意味するのは、天使の登場である。キャッシュは天使であり、ジャックが見ていた夢から現実に戻る合図だったのだ。これは、1946年のフランク・キャプラ監督作品「素晴らしき哉、人生」(主演ジェームズ・スチュアート、ドナ・リード)ラストでの娘の台詞「天使は翼をもらうと、ベルが鳴る」から来ている。

さてジャックとケイトの二人は再会してどうなるかは、お客様が想像してください、と我々にボールをパスして映画は終わる。ずいぶん、投げやりな終わりかただと思う人は多い。
だって、100億ドルの仕事でジャックは得意先と会うはずだったではないか。それをすっぽかしてケイトと会っていたら、投資銀行員は業績悪化でリストラされて大量解雇の憂き目を見るかもしれない。

だから、この映画はおとぎ話でしかない。お伽噺と割り切れば、いろいろ可能性は膨らんでくる。大体、ケイトは何故、ジャックの私物を会社に直接送ればいいのに、伝言を送ったのか?それは未練が少なからず残っていたからだ。そして、彼が空港で夢の話を騒ぎ出したときに彼女が動かされたのは、彼女も13年前、飛行場に来る前に夢を見たのではないか?
もしそうだとすると、また一緒に暮らせば良い。例えばジャックはパリの弱小投資銀行に移籍して、片田舎に屋敷を買って弁護士ケイトと暮らす。あるいは、互いに夢をあきらめて、ジャックがニュージャージーの暇そうな証券会社に移籍して、ケイトは無料弁護士になるでもいい。個人的には、奥さんには夢を追わせてあげる前者が良い。

ニコラス・ケイジが良い人役を演ずると、どこか胡散臭い。マッッチョ役もアーノルド・シュワルツネッガーやシルベスター・スタローンと比べると、嘘っぽい。ギャンブラー役が似合っているかもしれない。
ティア・レオーニは久々に見た。個人的には「ディープ・インパクト」のレポーター役の印象が強かったが、この作品では庶民的な弁護士役を演じて、ギャップを感じた。もう公開当時34歳だったから、あまり役作りしなくても田舎の奥さん役は演じやすかったろうが、もっと若い頃はブロンドに黒の眉毛で、さらに美人だったと思う。(68)

スタッフ

監督  ブレット・ラトナー
製作  マーク・エイブラハム、トニー・ラドウィグ、アラン・リッチー、ハワード・ローゼンマン
脚本  デイヴィッド・ダイヤモンド、デイヴィッド・ウェイスマン
撮影  ダンテ・スピノッティ
音楽  ダニー・エルフマン

キャスト

ジャック・キャンベル   ニコラス・ケイジ
ケイト・レイノルズ   ティア・レオーニ (サターン賞の女優賞を受賞した)
キャッシュ・マネー (天使)  ドン・チードル
アーニー(友人)  ジェレミー・ピヴェン
アニー・キャンベル (ケイトの後輩)  マッケンジー・ヴェガ
アラン・ミンツ(証券会社役員)   ソウル・ルビネック
ピーター・ラシッター(証券会社会長)  ジョセフ・ソマー

 

***

しかし、ジャックは以前の華やかな世界が忘れられない。
ある日、高級車に乗った投資銀行会長がタイヤをパンクさせて、勤め先に修繕に来た。ジャックは企業買収の見識を披露して会長に売り込み、証券会社に転職するチャンスを得る。しかし、ケイトが今の生活に対して愛着を感じていることを知ったジャックは、この生活を続けることに決める。そして、アニーは「おかえり、パパ」と言って、初めてパパを認める。そのとき、どこからかベルの音がする。
しかしその夜、ジャックの前にキャッシュが再び現れ、「夢は一瞬だよ」と告げる。

ジャックが目覚めたときは、ニューヨークに住む証券マンの世界に戻っていた。役員会に出席し企業買収工作に関する指示を伝えたジャックは、マンションに帰る途中でケイトを訪ねる。彼女は未婚のまま弁護士として活躍しており、パリ事務所に移る直前だった。ジャックは、夢の内容からロマンチックな連想をしていたが、ケイトからは私物を返されただけだった。
しかし、ジャックは彼女を追って空港に行く。13年前とは逆にケイトを引き留めるジャックは、「夢の世界」でのケイトや子供達との暮らしを語り必死に説得する。彼の真剣な表情にケイトは、パリ行きの飛行機をキャンセルした。ジャックとケイトは、夜まで空港の喫茶室で13年の隙間を埋めていた。

天使のくれた時間 The Family Man (2000) ビーコン製作 ユニバーサル配給

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