2017年に「グレイテスト・ショーマン」というP.T.バーナムの伝記ミュージカル映画が上映されたが、この「地上最大のショウ」とはP.T.バーナムが作ったサーカス団の謳い文句であり、それを引き継いだ屋外テント・サーカス団の愛憎を描いた映画である。
恋の三角関係あり、アクロバット・シーンあり、列車の転覆事故ありで1952年度のアカデミー作品賞、原案賞を獲得して興行的にも成功した。
製作・監督はサイレント以来の巨匠セシル・B・デミル。この映画は彼のキャリアの上では最後の製作作品「大海賊」(1958)、最後の監督(及び製作)作品「十戒」(1956)の前に当たる。
出演者はかなり豪華である。クレジットは三番手なのだが、実質的主役は映画二作目だったチャールトン・ヘストン。空中ブランコ乗りのヒロインはミュージカル映画「アニーよ銃を取れ」のベティ・ハットンで、横恋慕するスターにコーネル・ワイルド、ヒロインより美味しかった象使い役がグロリア・グラハム。決して顔を見せない道化バトンズ役に特別出演扱いのジェームズ・スチュアートだ。
あらすじ
リングリング・ブラザース=バーナム・アンド・ベイリー・サーカス団は出資者が集まり前期の赤字を受け、今年は年間興行をうつかどうか相談している。そこへ怒鳴り込んだのが、団長のブラッド(チャールトン・ヘストン)だ。団員の生活を預かる団長としては、絶対年間興行でなければならない。そこでブラッドは、空中ブランコのスター、グレーテスト・セバスティアン(コーネル・ワイルド)を加えることにした。団長の恋人で空中ブランコのホリー(ベティ・ハットン)は、セバスティアンに中央のリングを譲れと言われて快く思わなかった。
セバスティアンは芸にかけて相当の腕前だった。しかしホリーは追いつこうとして来る日も来る日も新技を披露してセバスチャンに挑む。健気なホリーをセバスチャンは愛するようになり、ホリーの女心もブラッドとセバスチャンの間で揺れ動く。
ある日、セバスティアンは新芸を披露しようとしてブランコから墜落してしまった。一命を取り止めたが、医者には二度とブランコには乗れないと宣告されてしまう。しかし、ホリーはセバスチャンを支える。
この様子を見た象使いの女エンジェル(グロリア・グレアム)はブラッドに近付いたが、嫉妬したクラウス(ライル・ベトガー)はサーカス列車を襲い急停車させたため、後続の列車が追突事故を起こしてしまう。
これは大きな事故となってしまい、ブラッドも瀕死の重傷を負った。その時応急手当を買って出た道化師バトンズ(ジェームズ・スチュアート)は殺人を犯した外科医で、警察に追われていた。ブラッドは一命をとりとめたが、バトンズは警察に逮捕される。
翌日ホリーは先頭に立ち、隣町を回って広告活動を行なった。そのため、サーカス場には大勢の人が集まって、いつもの賑わいを取り戻す。
雑感
リアルタイムで見ていないから、分からないが、何故この映画がアカデミー作品賞や原案賞を取れたのか?たしかに昔なら空中ブランコの華やかでアクロバティックなシーンに興奮しただろうが、老いた今となっては見慣れたものだ。
さらに、今から見ると脚本が穴だらけだ。何故、列車が転覆して死亡者、負傷者が出ているのに翌日何もなかったようにサーカスが開催できるのか?大体、警察が事故の原因を究明するために関係者を足止めするだろう。その日は興奮しているから興行ができても、そのうちに倒れるに決まっている。
ミュージカルでもないのに、この脚本は大人が見る作品としては、あまりに出来過ぎだ。
チャールトン・ヘストンは主演2作目だが、メジャー作品は初めて。顔も若い。しかしこれだけの出演者を実質的に仕切ったのだから、当時から大物だったのだろう。セシル・B・デミル監督は次回作「十戒」でもモーゼ役として起用し、見事期待に応える。
ベティ・ハットンは「アニーよ銃を取れ」以来の大作映画である。しかしエセル・マーマンが舞台で演じたアニーを演じたおかげで、ベティは虐められこの後尻すぼみとなり映画界から引退する。「地上最大のショウ」では数曲歌うシーンがあるが、彼女の魅力を出し切ったとは言い難い。そもそも何故この映画はミュージカルでなかったのか?案外、「グレーテスト・ショーマン」のアイデアはここにありそうだ。
コーネル・ワイルドは2枚目の優男だが、主演ではない。この頃には既にチャールトン・ヘストンとは差が付いていた。グレゴリー・ペックとチャールトン・ヘストンが一晩中殴り合いをした「大いなる西部」とは全然違う。
グロリア・グレアムはアングルによっては、非常に鼻筋の通った美人だ。ベティ・ハットンより好感が持てた。フィルム・ノアールに出て来るファム・ファタール系の顔なのだが、今回は最後に幸せを掴む役だった。
ジェームズ・スチュアートは何を血迷ったか、素顔を一度も見せない役だった。ギャラを相当に積まれたのだろうが、それにしても地味な役だった。
スタッフ
監督・製作 セシル・B・デミル
原作 フレドリック・M・フランク 、 シオドア・セント・ジョン 、 フランク・キャヴェット
脚色 フレドリック・M・フランク 、 バリー・リンドン 、 フランク・キャヴェット
撮影 ジョージ・バーンズ
音楽 ジョン・マーリー・アンダーソン
作曲 ヴィクター・ヤング
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キャスト
ホリー ベティ・ハットン
セバスチャン コーネル・ワイルド
ブラッド チャールトン・ヘストン
エンジェル グロリア・グレアム
バトンズ ジェームズ・スチュアート
刑事 ヘンリー・ウィルコクスン
クラウス ライル・ベトガー
ヘンダーソン ローレンス・ティアニー
フィリス ドロシー・ラムーア
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