運命の人と出逢いながら、彼女のドジで連絡先を誤って告げてしまい、そのまま会えなくなってシングルマザーになり、五年後にはセフレ男二人と三角関係になっていた女性が天啓を受けて幸福を掴むまでの物語ウィリアム・シェイクスピア喜劇冬物語」にインスパイヤを受けた作品である。

監督・脚本はエリック・ロメールで、この作品は彼の「四季の物語」シリーズ第二弾である。

主演はシャルロット・ヴェリ
共演はフレデリック・ヴァン・デン・ドリーシュ、ミシェル・ヴォレッティ、エルヴェ・フュリク。カラー映画。

日本公開は1992年、配給はシネセゾン

ストーリー

夏にブルターニュを訪れたフェリシーは、シャルルと恋に落ちる。バカンスが終わって別れ際に駅で彼女は、料理修行でアメリカに行く彼に自分の住所を誤って教えてしまう。結局、彼とは会えずに娘エリーズを産む。

5年後の12月14日、美容師のフェリシーは、図書館員のロイックと彼女が勤める店の社長マクサンスの二人と付き合っていた。お馬鹿なフェリシーにとってロイックは優しい男だが、理屈っぽいので愛せない。一方、マクサンスは妻帯者だったが、妻と別れると約束してくれた。その上、中仏ヌヴェールに新しい店を出すから、来てほしいと頼まれる。マクサンスを愛していないことを自覚しながら彼女は、娘エリーズとヌヴェールにヌヴェールに向け出発した。
フェリシーはマクサンスと同棲しながら彼の店で一緒に働く。しかし、彼が他の従業員にフェリシーを妻でもないのに「マダム」と呼ぶように指示したことに、彼女は大きなショックを受ける。彼女は、エリーズとともに立ち寄った大聖堂で天啓を得て、愛する人以外と一緒にならないことを誓う。

マクサンスと別れ、エリーズとパリに帰ったフェリシーは、12月30日の夜にシェークスピアの舞台「冬物語」を観て、涙が止まらなかった。その夜、彼女は偶然にもパスカルやプラトンの哲学と同じ結論に至る。ヌヴェールの大聖堂以来、彼女は冴え渡っていた・・・。

雑感

「春のソナタ」に次ぐ「四季の物語」シリーズ第二弾。「物語」と銘打っているように、シェイクスピアの「冬物語」同様にどこかリアリティーの欠けた話だが、その内容については含蓄が深い。
夏のバカンスに一人旅に出かける話は、例えば「緑の光線」のように良くあるパターンだ(「緑の光線」主演女優マリー・リヴィエールが最後に彼の友人役で登場する)。
しかし、この作品は後日譚が中心になっている。彼に自分の住所を間違って伝えるという、ありえないミスをしてしまい、彼女はシングルマザーになる。現実にあることかもしれないが、ドラマの設定としてはコメディーでしかない。
コメディーとして始まった話は、彼女が娘を連れて、妻帯者の美容院社長の元で同棲を始める頃から大きく変わる。彼は、彼女を従業員にマダム(奥さん)と呼ばせる。それに嘘を感じた彼女は、ふと立ち寄った大聖堂で神の天啓を受け、それまでのボーッとした彼女から一転して聡明な女性に変身し、即座に彼と別れてしまう。そしてシェイクスピア原作の舞台「冬物語」を観劇した後には、友人のインテリ男性を論破してしまう。
嘘っぽく見える話だが、実際に女性はある瞬間、別人のように、見えなかったものがよく見えることがある。わかりやすい例で言うと、怖がりな女性は出産後に慎重な女性に生まれ変わる。
あるいは経験談だが、男に夢中になっていた女が何の前触れもなく突然冷めることが良くある。男の側に責任があるわけではない。男女の生き方の違いに、女性が気が付いただけだ。
(ロメール映画によく現れる)このタイプの女性は、演繹的理解に弱いが直観に優っている。

ブルターニュの夏の明るさとパリの冬の薄暗さの違いを、撮影で表現していると言う英語の評論があった。映画に登場する場所では中央フランスに位置するヌヴェールが最も寒く、中間が北フランスの中心パリで、最も温かいのが西端の半島であるブルターニュ地方だ。
とはいえ、実際は水戸と青森ぐらいしか(湿度を除けば)差はない。南仏のニース、マルセイユと比べると、パリもブルターニュもどっちもどっちだ。

スタッフ

製作  マルガレット・メネゴス
監督、脚本  エリック・ロメール
撮影  リュック・パジェス
音楽  セバスチャン・エルムス

 

キャスト

フェリシー  シャルロット・ヴェリ
シャルル(シェフ)  フレデリック・ヴァン・デン・ドリーシュ
美容院社長マクサンス  ミシェル・ヴォレッティ
図書館員ロイック  エルヴェ・フュリク
娘エリーズ  アヴァ・ロラスキ
フェリシーの母  クリスチャヌ・デボワ
フェリシーの姉  ロゼット
ドラ(シャルルの友人)  マリー・リヴィエール

***

12月31日に年末の買物を済ませ、母の家に向かうバスに乗ったフェリシーとエリーズは、シャルルと偶然再会する。エリーズが「パパ」と読んで、自分の娘だと知ったシャルルは驚く。
彼は、フェリシーと一緒に彼女の母の家に行き、挨拶をして事情を知る母や姉夫婦からとても喜ばれる。
シャルルは、修行を終えブルターニュで自分のレストランを経営することになったので一緒に来てくれないか、とフェリシーに頼む。彼女は、彼の腕の中でただただ嬉し泣きをする。それを見たエリーズは気を利かせて席を外すが、どこか寂しそうだった。

冬物語 Conte d’Hiver (1991) ロサンジュ製作・配給 E・ロメール監督「四季の物語」第二弾

投稿ナビゲーション