化猫の怨霊による怪現象を描いた、夏休みの怪談映画。江戸時代だけでなく現代の恐怖も描かれて、脚本が重層構造を持っている。

雑誌「少女の友」に掲載された橘外男原作の恐怖小説「山茶花屋敷物語」(単行本になり「怪猫屋敷」と改題)を、石川義寛・藤島二郎が脚色し中川信夫が監督した。

主演は五月藤江、細川俊夫
共演は江島由里子、芝田新、北沢典子
パートカラー映画で色彩はフジカラーが担当。

ストーリー

ある夜、医大の研究室で久住助教授が研究をしているときに停電になり、急に六年前の怪事件を思い出す。

彼の妻頼子に転地療養が必要ということで、久住は彼女の郷里長崎に行って開業した。自宅兼診療所は、かつて幽霊屋敷と呼ばれていた。そこに越して以来、頼子は悪夢ばかり見ていた。
夜になって往診の電話が掛かってきたので、久住は出かけた。しかし、そんな電話をかけていないと言われる。その間、老婆が我が家に侵入し、頼子を襲う。久住が戻ったときは、番犬が殺されていて、頼子はショックで寝込んでしまった。
久住は、頼子の兄に相談する。彼は、久住に了福寺の和尚を紹介した。和尚は、それらの事件は化猫の仕業だとして、以下の昔話をした。
(回想)
あの屋敷には、かつて大村藩の家老・石堂左近将監が住んでいた。彼は短気であり、碁の師匠竜胆寺小金吾が待ったを許さなかったため、斬り殺す。そして用人の佐平治に、壁に穴を開けさせて遺体を隠し、漆喰で塗り固めてしまった。小金吾の母宮路は、猫のタマが咥えた血染めの布を見て、石堂に息子を殺されたことを知る。石堂家に行き、将監に責任の所在を問い質すと、宮地は逆に石堂に犯される。家に戻った彼女は、自害してしまう。その傍でタマが血を啜ると、宮路の恨みが乗り移って化猫になる・・・。

雑感

北沢典子が目当てで見たが、あまり見せ場はなかった。単なる化猫映画として見ると、鍋島騒動の焼き直しにすぎない。
しかし、低予算を利用して少ないカラー予算で、上手く現代劇の暗い雰囲気(青み掛かったモノクロ)と回想シーンの華やかな時代劇(総天然色のフジカラー)を使い分けている。さすが中川信夫監督の演出だ。
脚本も、うまく現代と過去を分けて描けている。単純な化猫映画はもう飽きたと言う方にもお薦め。
新東宝の老婆役の常連である五月藤江(当時65歳、でも20代から老け役)は、二役で熱演である。化け猫の定番であるトンボを切るシーンは、勿論スタントマンがしているのだが、五月が形相を見せて、猫耳をピンと立てるシーンがとても楽しいw。

それにしても昭和三十三年(1958年)の6年前といえば、1952年である。その時点で開業医が、車夫を往診用に雇っていた。さすが九州、「無法松の一生」の土地柄だと思った。

スタッフ

製作  大蔵貢
企画  島村達芳
原作  橘外男
脚色  石川義寛、藤島二郎
監督  中川信夫
撮影  西本正
音楽  渡辺宙明

キャスト

(現代編)
久住哲一郎(医学博士)  細川俊夫
久住頼子(妻)  江島由里子
老婆(怨霊)  五月藤江
平松とよ子(看護婦)  千曲みどり
健一(順子の兄)  倉橋宏明
吉蔵(車夫)  山川朔太郎
慧善和尚  杉寛
(過去編)
石堂左近将監(家老)  芝田新
石堂新之丞(息子)  和田桂之助
将監の老母  五月藤江(二役)
佐平治(用人)  石川冷
お八重(腰元、新之丞の愛人)  北沢典子
お里(腰元)  辻祐子
竜胆寺小金吾(囲碁の師匠)  中村竜三郎
竜胆寺宮路(母)  宮田文子

***

化猫は、将監の老母を殺してしまい、その老母に化ける。将監の跡取り息子新之丞は、身分違いにも関わらず腰元・八重と愛し合っていた。将監に呼ばれて、彼の部屋に行ったお八重は、マッサージを強要され、そのまま体を重ねられ犯されてしまう。
老母は、新之丞にことの次第を暴露する。新之丞は将監に怒りをぶち撒けると、将監の目には息子が小金吾のように見えて斬りつける。そして間に入った八重が宮路に見えて、斬り殺す。
翌日、将監は化け猫が老母に成り済ましていることに気付いた。しかし、将監は又も化け猫に化かされてしまい、息子が小金吾に見え、結局父子は相討ちになり共に死んでしまう。
(現代)
昔話を終えて和尚は、過去帳を紐解き頼子の先祖は佐平治だと語った。その夜、床の間の壁が崩れ小金吾の骸骨が出てきた。例の老婆は、小金吾の塗り込まれていた壁に消えた。恐れを成した頼子は、屋敷を取り壊してしまった。
その六年後、久住がいる停電の研究室に不気味な足音が近付いて来る。戸が開くと同時に電気がついた。すっかり元気になった妻の頼子がそこにいた。

 

亡霊怪猫屋敷 1958.7 新東宝製作・配給 昭和/江戸の二つの時代に跨がる化猫譚

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