横浜のヤクザが、函館へ流れて人間らしい生活を知るが・・・。

「東京流れ者」の作詞家川内康範が、自分の原作を脚本化し、斎藤武市が監督した歌謡映画。

主演は渡哲也
共演は浅丘ルリ子松原智恵子、宍戸錠
城卓矢主題歌の歌手であるが、クラブで歌うシーンがある。

カラー映画。

あらすじ

横浜の青木組幹部、加納誠は、ボスの情婦あや子と香港へ逃避行する手筈になっていた。しかし、その前に香港人との大きな麻薬取引があった。無事取引が終わろうとしたとき、流れ者であるダイスの政が邪魔に入って、大混乱を起こす。誠は、通りがかりの小川の手当てを受ける間に、組長青木はあや子を香港へ連れて逃げた。

一年後、誠は函館にある小川の牧場で働いていた。小川の姪千代は、美しい娘で誠を愛していた。あや子を失った誠も、いつの間にか千代に恋心を抱いていた。
千代の兄浩一は、藤崎組の開くイカサマ博打にのめり込み、一千万円の借金を負った。藤崎組へのりこんだ誠は、そこで政と再会する。こいつさえいなければ、今頃はあや子と・・・政と誠は一回のダイス勝負に浩一の借金全額を賭けた。政は、誠の前に完敗した。

あや子を連れた青木が、外国船との函館沖での麻薬の取り引きを行うために、函館に空路で到着した。青木は藤崎組長と兄弟分だったので、協力してもらうことになっていた。
そこで青木は、誠が函館にいることを知る。誠は、あや子の顔を見て動揺する。青木は、親分子分の義理を通して、誠を青木組にひきずり戻した。もちろん、利用するだけ利用して切り捨てるつもりだ・・・。

雑感

歌謡曲「骨まで愛して」は、ウィリー沖山の弟子でカントリー&ウェスタン歌手菊池正夫が心機一転して「城卓矢」と改名して再デビューした際に、兄北原じゅんが作曲し、叔母の元夫である川内康範が作詞して彼に送った曲である。シングル盤140万枚を売り上げる大ヒットとなった。

川内康範は、2月に起きた全日空羽田沖墜落事故(1966年に航空機事故は日本だけで5件起きているが、そのうち二件が全日空でどちらも乗員乗客全員死亡だった)の現場で経験した出来事に基づいて制作したそうだ。

しかし、シングルはすでに発売された後だから、当時書いていた同名小説のことを差していると思われる。そして、その小説を映画化したのが、この作品である。

1966年には航空機死亡事故が日本だけで5件(そのうち2件は全日空機)も起きた。それぐらい当時は、飛行機事故が頻繁に起きていたのだ。

川内康範は、映画脚本から紙芝居の台本まで書いた。歌謡曲を書いて大ヒットさせて同名小説を書き、それを映画化するのが、ビジネスモデルだった。最初はテレビドラマ台本の「月光仮面」をヒットさせたが、最初の歌謡映画は、レコード大賞を受賞した「誰よりも君を愛す」(大映)だろう。

渡哲也は、こう言うタイプの役ばかりなので、当時は飽きが来ていた。「大都会 闘いの日々」「浮浪雲」を見るまで苦手な役者さんだった。
浅丘ルリ子が死ぬ役は良いけれど、松原智恵子の恋路を邪魔するのは嫌だ。

 

スタッフ

企画  仲川哲朗
原作、脚色  川内康範
監督  斎藤武市
撮影  荻原憲治
音楽  小杉太一郎

キャスト

渡哲也・・・加納誠
浅丘ルリ子・・・神林あや子(幼馴染)
松原智恵子・・・小川千代(牧場の娘)
宍戸錠・・・ダイスの政
金子信雄・・・青木(横浜青木組組長)
深江章喜・・・相川(誠の弟分)
北竜二・・・小川(牧場主)
杉江弘・・・浩一(小川の長男)
近藤宏・・・藤崎組組長
郷英治・・・哲
城卓矢・・・クラブ歌手

***

あや子は、誠の新しい恋人である千代に会いに行く。しかし、藤崎組のチンピラに拉致される。
船で沖に出た誠、相川、そして藤崎組の連中は、目印のついた麻薬の包みを引き上げる。その時、舎弟の相川が藤崎組に付き、誠を撃つ。誠はバランスを崩し、海中に沈んだ。

その頃、麻薬を独占するため藤崎は、青木を射殺していた。相川が包みを持って帰ってくるが、中身は空だった。政が一足早く、荷を差し替えていたのだ。
政と誠は、藤崎と激しい銃撃戦となる。そして、最後は藤崎と誠の対決となる。そして誠をかばったあや子は、流れ弾に当って亡くなった。千代は、銃弾の飛び交うのを見て、一歩も動けなかった。

数日後、横浜警察の警官に伴われ、あや子の遺骨を抱き函館港を離れる誠を千代は見送っていた。

 

 

 

骨まで愛して 1966.7 日活製作・配給 渡哲也主演の歌謡映画

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