第一次世界大戦中フランスから二重スパイとして中立国スウェーデンに送り込まれたマドレーヌは祖国から逃亡したドイツ人貴族と禁断の恋をしてしまう。果たして二人の恋の行方は?

主演は英国時代のヴィヴィアン・リーで共演はコンラート・ファイト
監督・製作はヴィクター・サヴィル

あらすじ

第一次世界大戦末期の1918年春、スウェーデンのストックホルムマドレーヌはブティックを開いていた。彼女はパリへ衣裳を仕入に行き、持ち帰ると「伯爵夫人」に持参した。「伯爵夫人」とはドイツ第五諜報部の司令部で、連合軍の秘密が衣裳に刺繍されていた。
休暇旅行にスウェーデンを訪れたドイツ軍人マルイッツ男爵はマドレーヌの明晰さに惚れて晩餐を共にするようになった。マドレーヌを恋しているイギリス諜報部員ボブ・カーターの留守中にマドレーヌも男爵に愛する様になり、プロポーズを受諾した。
ドイツ第五諜報部は、マドレーヌからの情報に誤報が多いとの叱責をベルリンから受けたので、マドレーヌにパリへ行って彼女の協力者を調査せよと命じた。
彼女はフランスに着くと逮捕されてパリへ護送された。実は彼女はフランス諜報部員で二重スパイを勤めていた。彼女は男爵に恋している事を告白して、諜報本部長に辞職を願い出た。部長はもう一度だけストックホルムへ行って、ドイツの第八諜報部長が誰であるかを探ってくるように命じた。
男爵は彼女が帰ってきた記念に晩餐を共にした。席上、彼はドイツ将校に侮辱されたが彼は平然としていた。マドレーヌは席を蹴った。マドレーヌは男爵の泰然自若ぶりに彼こそ第八諜報部長と悟る。男爵も事前にマドレーヌが連合軍側の諜報部員たることを知っていたので、マドレーヌをブティックで逮捕しようとした。
しかしカーターに頼まれたスウェーデン警察は彼女を保護し、スウェーデン客船でフランスへ護送することとなった。男爵は潜水艦に乗り込み、スウェーデン船に停船を命じてマドレーヌを逮捕した。
突然イギリスのQシップ(武装商船Qボート)が現れて、水上に現れていたドイツ潜水艦を撃沈してしまったので、男爵が逆に捕虜となり、イギリス駆逐艦に収容される。マドレーヌは船上からそれを最後まで見送った。
(「私は待っています」と叫ぶエンディングもある)

今日の台詞

マドレーヌがマルヴィッツ男爵に連れられて店に来たリュピタを見て
A girl who goes shopping with a man means to have the whole shop.

雑感

英国王家にドイツの血が流れているし、上映当時チェンバレン首相のもとでドイツに対して「脅威だけど仲良くしたい」という宥和政策を講じてきた英国人のドイツへの煮え切らない感じが見事に表されている作品。

海上シーンの特撮がチャチだ。使い回しが多いし、編集も悪い。戦後「サンダーバード」のジェリー・アンダーソンが活躍した英国にも戦前は、たいした特撮技術がなかったのかな?

無声映画「カリガリ博士」に出演するように年功序列だからコンラート・ファイトが出演序列一位だが、実質的にヴィヴィアン・リーの初主演作。

だからかも知れないが、ヴィヴィアン・リーのベスト映画に推す人が多い。たしかに彼女はフェミニンで非常に魅力的だ。そういう人にとってアメリカに行ってからのヴィヴィアンは男勝りで別人になったように思えるのだ。

原案は1912年ブロードウェイで上演されたオペレッタ「蛍」(作曲:ルドルフ・フリムル、作詞:オットー・A・ハーバック)らしい。「蛍」は1813年反ナポレオンの英国、スペイン、ポルトガル連合軍がフランスに勝利した「ビトリアの戦い」を描いている。

Qシップ(囮の武装商船)は第一次大戦ではUボートに対して有効だったそうだが、第二次大戦では進化したUボートに対して使い物にならなかったそうだ。1941年に第一線から退いた後は、おそらく沿岸警備隊のように民間商船の警護用に使われたのだろう。

 

 

 

スタッフ

監督 ヴィクター・サヴィル
製作 ヴィクター・サヴィル
脚本 ラヨス・ビロ
脚色 アーサー・ウィンペリス
台詞 アーサー・ウィンペリス
撮影 ジョルジュ・ペリナール 、 ハリー・ストラドリング
音楽 リチャード・アディンセル
音楽監督 ミューア・マシーソン

キャスト

独マルヴィッツ男爵 コンラート・ファイト (「カリガリ博士」のチェザーレ、「カサブランカ」のシュトラサー少佐役)
二重間諜マドレーヌ・ゴラール  ヴィヴィアン・リー
セレブの一人リュピタ ジョーン・ガードナー
英国諜報部員ボブ・カーター アンソニー・ブッシェル
店員ガートルード  アースラ・ジーンズ
店員コレット  マージェリー・ピカード
召使アナトール  エリオット・メイクハム
諜報部員ミュラー博士  オースティン・トレヴァー
諜報部員シェーファー  サム・リヴシー
フランス諜報部長  エドモンド・ウィラード
ドイツ第五諜報部長 チャールズ・カーソン
英国諜報部員フェイバー  フィル・レイ
スウェーデン治安判事 ヘンリー・オスカー
仕立屋コタン ローレンス・ハンレイ

間諜 Dark Journey 1937 英ロンドン・フィルム製作 ユナイテッド配給 ヴィヴィアン・リーの実質的初主演作

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