原作は、作家デーモン・ラニョンの短編小説「サラ・ブラウン嬢の挿話」である。ジョー・スワーリングエイブ・バロウズがミュージカル舞台用に脚本化し、1950年ブロードウェイで上演した。さらにサミュエル・ゴールドウィンの製作で、ジョセフ・L・マンキーウィッツが脚色・監督した作品である。

作詩・作曲は舞台と同じフランク・ローサー、音楽はジェイ・ブラックトン、振付けは「略奪された7人の花嫁」のマイケル・キッドが担当した。

主演は、「デジレ」で共演したマーロン・ブランドジーン・シモンズ、及びフランク・シナトラヴィヴィアン・ブレイン(彼女はブロードウェイでも同じ役を演じた)。
共演は、ロバート・キーススタッビー・ケイB・S・プリイ、ジョニー・シルヴァ
スタジオ収録のカラー映画。日本公開は1956年4月。

あらすじ

サラ・ブラウンという救世軍の女軍曹が、魂の救済をタイムズ・スクエアで訴えているが、誰一人として彼女の集会に出る気はない。
ヤクザの「お調子屋ジョンソン」と「南街のベニー」は、博徒の「お馬のハリー」にばったり出会う。ハリーは胴元ネイサン・デトロイドの賽ころ賭博会場を探していた。ネイサンは、場所を転々と変えて警察の目を誤魔化していた。どこで行うかは、直前になるまで誰にも言わない。ジョンスンとベニイは、ネイサンを目の敵にするブラニガン警部補にも出会す。ブラニガンは、今度こそネイサンが賭博をしている現場を押えるつもりだった。

ネイサンは、ジョイに前金として1000ドルを払えば車庫を賭場として貸してやると言われる。しかし、ネイサンはその手付金でさえも持っていない。ネイサンは、博徒スカイ・マスターソンがニューヨークに来ていると知り、彼に1000ドルの賭けを持ちかける。内容は、救世軍の女軍曹サラをハバナへ連れ出して遊べば良いと言うものだった。サラを見て、一目惚れしたスカイは承知してしまう。

布教活動に行き詰まりを感じたサラは、ボストンに帰ろうと考えていた。そこへスカイがやって来て、キューバのハバナに一緒に行ってくれたら罪人を12人連れて来ると申し出る。サラは、信者が集まってくれたら構わないと思い、その申し出を承諾した。
スカイはサラをキューバに連れて行ったが、彼女の純情さを知り、手をつけずに2人で夜明けにニューヨークに帰ってきた。サラが伝道所に戻ると、博徒がその場を賭場として使っており、警察の車が来て博徒を捕えていた・・・。

雑感

ニューヨークの暗黒街を舞台にしたハッピーなミュージカル映画
元は短編小説だったが、ブロードウェイ・ミュージカルとなり、さらにハリウッド映画化された。

当然、マーロン・ブランドフランク・シナトラでは、両雄並び立たず。芸能界の先輩シナトラが、ブランドに主演を譲った形だったが、この二人が全く噛み合わない映画だった。同じフレイムに入っても、二人ともニコリともしない。でも、そういう緊張感がスリルを呼んだのか、映画自体はヒットした。
フランク・シナトラは何曲か歌っているが、あまり目立たない。一方、マーロン・ブランドは相変わらずしわがれ声だったが、特訓したのか音程は合っていた。彼の場合、歌よりもラテンのダンスが印象的だった。あの一曲だけでこの映画を思い出すだろう。日本であんなダンスを見たことが無かったから。

男性陣より、救世軍軍曹役のジーン・シモンズの可愛らしさが際立っていた。特に同じ英国人であるオードリー・ヘップバーンに寄せていて、声がそっくりの上に、髪型も1953年映画「ローマの休日」でパーマをかけたものに少し似せていた。
しかし、この配役はオードリーでなく、マリリン・モンローが強い関心を寄せていたらしい。ジョセフ・マンキーヴィッツ監督は、「イヴの総て」でまだ演技が下手な頃のマリリンを起用したので、彼女に演じさせることに拒絶反応を示したそうだ。
それにしても、当時すでに、ニューヨークからハバナまで日帰りだったと言うことに驚く。

 

ジーン・シモンズと比べると、アデレイド役のヴィヴィアン・ブレインは、ブロードウェイ帰りとは言え、1945年のミュージカル映画「ステージ・フェア」で主演ジーン・クレインを、歌手エミリー役で食った時の勢いが無かった。この映画がもう二年遅く作られていたら、シャーリー・マクレーンがこの役を演じていただろう。

アメリカのサイコロ賭博(クラップス)は、日本のそれより複雑だ。2個のダイスを壁に当てて,出た目の合計により勝敗が決る。ダイスを投げるシューターは、胴元だけでなく客も投げる。目の合計が7か11ならばシューターが勝ち,2、3、12 (クラップス) ならば負ける。それ以外は、もう1度投げて7になったらシューターの負け,それ以外の場合は最初に出た目 (4,5,6,8,9,10) 以外に賭けた人の勝ちとなる。

スタッフ

製作  サミュエル・ゴールドウィン
監督、脚色  ジョセフ・L・マンキーウィッツ
原作戯曲  ジョー・スワーリング、エイブ・バロウズ
原作  デーモン・ラニョン「サラ・ブラウン嬢の挿話」
舞台版製作  サイ・フュアー、アーネスト・H・マーティン
撮影  ハリー・ストラドリング
作曲、作詞  フランク・ローサー
音楽監修、指揮  ジェイ・ブラックトン
振り付け  マイケル・キッド

キャスト

スカイ・マスターソン(博打打ち)  マーロン・ブランド
サラ・ブラウン(救世軍軍曹)  ジーン・シモンズ
ネイサン・デトロイト(胴元)  フランク・シナトラ
アデレイド(ネイサンの愛人、ショーガール)  ヴィヴィアン・ブレイン
ブラニガン警部補  ロバート・キース
お調子者のジョンソン(ネイサンの手下)  スタッビー・ケイ
ビッグ・ジュール(シカゴの博打打ち)  B・S・プリイ
南街のベニー(シカゴの博打打ち)  ジョニー・シルヴァ
お馬のハリー(博打打ち)   シェルドン・レオナード
ラスティ・チャーリー  ダン・デイトン
ソサイティ・マックス  ジョージ・E・ストーン
アビッド・アバナシー(サラの叔父)  レジス・トゥーミー
カートライト将軍(救世軍幹部)  キャスリン・ギヴニー
ラヴェルネ(ハバナのダンサー)  ヴェダ・アン・ボルグ&ザ・ゴールドウィン・ガールズ

***

サラはスカイに一杯食わされたと考えたが、叔父アヴィドは、一味とスカイは関係ないと断言した。
スカイがネイサンの秘密の賭場に出かけると、シカゴの大博徒ビッグ・ジュールがインチキな賽を振っており、ネイザンは全財産を失っていた。
スカイは、サラのために12人の罪人を集めなければいけないと言って皆を誘うが、誰も応じない。止むなくスカイは、サイコロ勝負で皆を敵に回して勝負することにした。
スカイはこの大勝負に勝ち、サラの前に博徒を連れて行った。博徒が伝導所で懺悔している最中、ブラニガン警部が飛び込んできて、全員を現行犯で逮捕すると叫んだ。しかし、サラの証言で彼らの疑いは晴れた。
そしてサラとスカイ、ネイサンと14年間付き合ってきたアデレイドの結婚式が、ニューヨーク中の博徒の前で挙行された。

 

 

 

 

 

野郎どもと女たち Guys and Dolls (1955) サミュエル・ゴールドウィン製作 MGM配給 フランク・シナトラとマーロン・ブランドの共演ミュージカル

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