ワイルドな川下りに挑戦した4人組の男たちが、想定外の事態を前にして、人間の弱さを晒してしまう。

製作・監督はジョン・ブアマンジェームズ・ディッキーの原作・脚本をヴィルモス・ジグムントが撮影した。

主演はジョン・ヴォイト、共演はバート・レイノルズネッド・ビーティロニー・コックス。カラー映画。

あらすじ

エド、ルイス、ドリュー、ボビーの4人組は、カヌーで川下りを楽しむために、ジョージア州北部の山奥にジープでやって来た。ダム建設によって、カフラワシー川がダムの下に沈む前に川下りをするためである。
4人組は、川下りの終点エントリーまでジープを現地の人に運んでもらい、カフラワシー川をカヌーで下り始めた。1日目は何も無かった。しかし2日目、エドとボビーが休憩のために岸に上がると、2人の山男が散弾銃を突き付けた。何と山男たちは、脂の乗りが良いボビーを裸にして、犯したのだ。
カヌー上でボビーの悲鳴を聞いたルイスは岸に上がり、山男の背後からアーチェリーを射て、一人を殺した。死体の処分方法でルイスとドリューは揉めた。ドリューは、警察に事情を話そうと言う。しかし背後から射殺してしまったルイスは無罪で済まないので反対した。結局、死体を森の中に四人組の手で埋めた・・・。

 

雑感

すでに1970年カンヌ映画祭で監督賞を受賞している奇才ジョン・ブアマン監督のショッキングなアドヴェンチャー映画だ。

すぐに住んでいる山を追い出される人々の白い視線に見送られ、主人公たちは、テーマパーク気分で川下りを楽しんでいる。
ところが、それを面白くない山男たちが彼らを見守っていた。おそらく、山には若い女はもう里に降りて、いないのだろう。山男は飢えていた。もしかしたら、山男に刑務所収容経験あるいはベトナム経験があったのかもしれない。だから、太ったボビーが最初に掘られちゃう。この辺りは、地獄絵図であるが、ボビーはあまり痛がらなかったw。事態に気づいた後続隊のルイスがエドの落したアーチェリーを拾い上げて復讐を始める。

これが街の中の市民トラブルなら、ある程度冷静に対処できようが、山の中で都会人は周囲が敵ばかりに見える世界だったから、リーダーであるルイスの判断力が鈍ったようだ。そして善悪を超えて、殺し合いの惨劇が始まってしまう。
でも最初は楽しい川下りだったのだ。人間とは怖いものだ。

最終的には、エドやルイスも刑事責任を負わされるだろう。それを考えると、やはり地獄だ。エドなんて刑務所に入れられたら、確実に犯されるぞ。つまらないホラー映画より、リアルに怖い。

舞台をベトナム戦争と見なすと、都会人と山男がそれぞれ平和なベトナム人と麻薬を吸って野蛮な米兵にも思える。

ジョン・ヴォイトは、すでにアメリカン・ニュー・シネマ「真夜中のカーボーイ」で一躍スターになっていたが、この低予算映画脚本に惹かれるところがあったのだろう。
バート・レイノルズも、すでにウェスタンやアクションのB級映画で主役を張っていたが、主演ジョン・ヴォイトとの共演に興味を持つとは思わなかった。やはり、映画俳優としての幅を広げたいという欲求はあったのだろう。それが後の映画「ブギーナイツ」であり、「ラスト・ムービー・スター」だったわけだ。
ネッド・ビーティーは舞台人だったが、この作品で遅いデビューを果たした。でもレイプされる中年男の役は強烈で、それから長い映画俳優人生が始まった(2021年6月死去)。
ロニー・コックスも舞台生活は長かったが、この作品で映画デビューしている。

スタッフ

製作、監督  ジョン・ブアマン
脚本、原作  ジェームズ・ディッキー
撮影  ヴィルモス・ジグモンド
編集  トム・プリーストリー

キャスト

エド・ジェントリー  ジョン・ヴォイト
ルイス・メドロック  バート・レイノルズ
ボビー・トリッピ  ネッド・ビーティ
ドリュー  ロニー・コックス
老人  エド・ラミー
ロニー(バンジョーを弾く少年)  ビリー・リーディン
山男  ビル・マッキニー
歯のない男  ハーバート・カウボーイ・カワード

 

***

彼らは、再びカヌーでエントリーへ向かった。しかし、ドリューが急にバランスを崩して、カヌーから落ちて、流されてしまい、ルイスもカヌーから放り出され、足を大ケガして動けなくなる。ルイスは、ドリューが何者かに射殺されたようだったと言う。山男の残った一人だろうか。
無傷なのは、もはやエドだけであり、彼が残った山男を始末することになった。エドは、崖をよじ登り、頂上で一晩を過ごす。ようやく、視野に入った山男に狙いを付けてアーチェリーを放った。互いに同時に撃ったが、当たったのはエドの矢の方だった。
死体に大きな重石を付けて川底に沈めると、重傷のルイスが揺れないように固定して、エドとボビーは残ったカヌーでエントリーに急いだ。
途中で溺れたドリューが枝に引っかかっているのを発見する。体には打たれた痕は無かった。
エントリーに到着して、警察の取り調べに対して3人は、ドリューが溺れて死んだことだけを話して、山男たちを殺したことは隠した。しかし、保安官のバラードは彼らの話をなかなか信じなかったが、いずれ証拠品が浮かぶだろうと思い、ひとまず3人を釈放した。ルイスは、足を切断することになった。エドはボビーと別れて、ドリュー家に向かった。
ダムの開発が始まり、湖と化した水面に人間の片手が浮き上がった。

脱出 Deliverance 1972 ジョン・ブアマン製作 ワーナー・ブラザーズ配給

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