渡哲也の「航空検察官」なる空のお巡りさんに扮する珍しい航空アクションもの。
監督は野村孝、航空監督は長谷部安春。空撮や特撮が頻繁に使われている。
渡哲也は青学卒のデビュー三年目。元々JALの整備士に就職を希望していたが不合格。そこで石原裕次郎に会いたいがために日活ニューフェイスを受験して、一発合格して、若き主役級でトントン拍子で出世していた。
共演は高校在学中にニューフェイスに合格したから俳優として3年先輩だが2学年下の高橋英樹、他に二谷英明、十朱幸代

あらすじ

朝日奈は優秀な旅客機のコパイロットだったが、負傷した福田機長を助けようと、管制塔を無視して強行着陸したため、解雇される。新設の航空検察官宗方は、失職した隆を航空検察官に取り立てた。航空検察官とは航空路線を使った犯罪を摘発する役職だ。
香港に行ったダンサーが日本へ帰国する時に殺される。すると香港に働きに行ったダンサーたちが行方不明になっていることが明らかになる。早速、香港に飛んだ検察官貝塚の捜査で、エンゼル・プロがダンサーを本件経由で戦時中の南ベトナムに売りとばしたことが分った。
朝比奈は女検察官の冴子を誘ってナイトクラブ「フェニックス」へ行った。朝日名は踊り子マチ子の姉が、香港に行ったまま行方不明なのを聴き込む。
するとエンゼル・プロの人間が次々と消されていく。エンゼル・プロを切り捨てたい上部組織があるらしい。朝日奈はバー「フェニックス」のママ京子がシャワーを浴びている隙に、バッグから乱数表を発見し写真に収めた。フェニックスの社長林が組織の首領だった。朝日奈は殺し屋張を捕え、組織の全貌を自供させた。
林は操縦士黒田を伴って、小型飛行機で国外逃亡を計ったが、追跡する朝日奈と貝塚の飛行機二機に、逃げきれず、日本に戻ろうとする。林はそれを許さず発砲し、黒田は負傷してしまう。そこで朝日奈と貝塚は一緒に「赤トンボ」を歌いながら、黒田を元気付けて海上から陸地に誘導し最後は無事着陸させて警察に身柄を引き渡す。

 

雑感

特捜最前線の二谷英明、西部警察の渡哲也、二代目尾上松緑に弟子入りして時代劇スターになった高橋英樹の共演だ。
航空検察官という官職は架空のものである。密輸からハイジャックまで扱う「空のGメン」的存在で、運輸省管轄でありながら拳銃携帯を許されていて、パトカーの代わりにセスナ機で巡回しているという子供向け特撮ドラマのノリだった。
航空小説で名を馳せて、根強い人気を持つ「宇宙少年ソラン」の原作者でもある福本和也の原作はシリーズ化された。しかし脚本がダメで陸でも空でもアクションドラマとしての見せ場(悪役が強くない)が少なかったので、渡哲也高橋英樹の二大スターを起用しながら、映画はシリーズ化されなかった。渡哲也も日活の先輩高橋英樹には気を遣いながら失敗した映画だと思う。
当時は一部にしか注目されなかった映画だが、渡哲也デビュー55周年記念DVDとして発売され、カルト映画として再注目を浴びている。
今から見れば、デビューした途端にポスト石原裕次郎として主役に抜擢された渡哲也はその重荷に苦しんでいた。吉永小百合とのロマンス映画、ギャング映画、さらに任侠映画へジャンルを広げるが、石原裕次郎と常に比較されてしまう。その上、演技力がなかなか上達しなかった。1974年NHK大河ドラマ「勝海舟」に抜擢されるが、当時東映との移籍トラブルがあって内臓を悪くして松方弘樹に途中交代し、「くちなしの花」がヒットして年末に紅白歌合戦で熱唱するが、なかなかコンスタントに映画出演することは難しくなった。
ようやく見つけた彼の居場所が石原プロ制作による日本テレビ「大都会」シリーズであり、テレビ朝日の「西部警察」のようなアクション刑事ドラマである。
そして1987年石原裕次郎が亡くなり、第二代石原プロ社長に就任してからは重厚な演技で我々を魅せるようになった。

スタッフ

企画 園田郁毅
原作 福本和也
脚色 長谷部安春 、 蘇武道夫 、 小川英
監督 野村孝
撮影 峰重義
音楽 伊部晴美
航空監督 長谷部安春

協力 日本航空

 

キャスト

朝日奈隆 渡哲也
完方一郎 二谷英明
貝塚文男 高橋英樹
秋山   庄司永建
森山冴子  十朱幸代
林泰三  大滝秀治
黒田健  宍戸錠
江見京子  斎藤チヤ子
張志景  内田良平
福田  池部良
八代マチ子   浜川智子
機長  葉山良二

 
燃える雲 1966 日活製作・配給 渡哲也追悼

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