陽気な男が美しい妻を娶るが、戦友会で声を掛けられたことから人生の階段を転落してしまう。一年後どん底まで落ちていた男は復讐のためだけに、動き始める。

原題の意味は「標的に狙いを定めた、転じて露骨であけすけ」。
ジョン・ブアマンの劇場用映画二作目だがハリウッド監督デビュー作で、男っぽいハードボイルド映画。
主演はリー・マーヴィン。共演はキーナン・ウィン、アンジー・ディキンソン
ワイドカラー作品。

あらすじ

ウォーカーは、組織でしくじって穴を開けてしまった戦友マル・リースに唆されて強盗を手伝わされた。アルカトラズ島で秘密裏に組織に支払われたブツの代金をくすねたときに金の受け取り役二人をリースが射殺したのだ。しかし強奪した現金が20万ドル余りと目標額に達しなかったことから、リースはウォーカーを射って金を独り占めし彼の妻リンとともに逃げた。

一年後、生き残った彼はヨストと名のる謎の男から声をかけられる。ヨストは、リースが組織で幅を利かせていることを教え、組織を掌握するのに邪魔なリースらを始末してほしいと持ちかけた。情報を得たウォーカーは早速元の妻リンを訪ねたが、リースとは既に別れていたリンは自責の念から自殺する。
中古車業者ステグマンは組織の幹部だが、少し脅すとリースはリンの妹クリスにご執心だと言う。
クリスは自分の店「ムービーハウス」を経営していた。名に違いサイケ・ファンクを演奏しているクリスの店を訪ねたウォーカーは待ち伏せしていた組織の連中に襲われるが、逆に叩きのめす。そしてクリスがハニートラップになってリースの自宅に行き、ウォーカーが裸同然のリースを捕まえた。しかしリースの金は全て彼の組織に対する負債の穴埋めに使われていた。リースはその場から逃げようとしてペントハウスから転落死する。

ウォーカーは組織のボス三人から自分の金を取り戻そうと決心した。まず最初のボスであるカーターは、部下ステグマンを使って金を返す振りをしてウォーカー対策に雇った、ライフルを持つ殺し屋に間違ってステグマン共々射殺される。
第二のボスであるブルースターをウォーカーは自宅で待つが一向に現れない。一緒についてきたクリスがムラムラと盛ってしまい一夜を共に過ごす。ブルースターは翌日ようやく現れた。彼を脅すと、以前強盗を行ったアルカトラズ島で金を引き渡す約束をしたが、ウォーカーが金を受け取る寸前にブルースターはヨストによって射殺された。
実は彼が二人のボスに仕えた第三の男(経理担当者)フェアファックスであり、利益を独占したいがためにウォーカーに他のボスを始末させていたのだ。ヨストはこれからも仕事を手伝ってくれと言って誘き出そうとするが、危険を察知したウォーカーは断る。伏せていた殺し屋のライフルマンが現れて金を拾おうとする。ヨストは金は置いていけと言い、ともに立ち去った。

雑感

クールなアクション作品。脇役が多かったリー・マービンが主演していて、そのスタイリッシュな映像に痺れる。ウォーカーのPTSDとなって毎夜思い出している回想シーンを多用して、ずいぶん尺の水増しをしているが、それぞれにも意味があるように思える。これによってハリウッドらしくない、テレビ的低予算で済ませている作品だ。MGMが英国からジョン・ブアマンを招いたのはこの辺りがあったからだろう。またリー・マービンはこの映画の制作前段階で映画「特攻大作戦」を撮影しに英国に渡っていて、そこでジョン・ブアマンと脚本選びをやっていたそうだ。MGMの重役を前にジョン・ブアマンを推したのは、リー・マービンだった。

アンジー・ディキンソンは映画「殺人者たち」でのファム・ファタールを演じた頃と比べて格段にモデル臭さは抜けてきて、存在感があって少しだけ好感が持てた。

キーナン・ウィンは1945年MGMの「二日間の出会い」での酔っぱらい役がMGMでのお目見え作品になったが、それから20年余り経って目を見張るような凄い役者になったと思う。

この作品は各シーンがいまだに映画の教科書的に扱われている。ラストシーンのアルカトラズの底からカメラが上に向きを変えると、海が映るシーンも綺麗だが、背景は絵だろう?最初にBGMなしでリー・マービンが構内通路を外股になって大きな足音を立てて歩くシーンも印象的。逃げている側からすれば、どこまで逃げても最後は逃さないと言うウォーカー(歩く人)の決意が伝わってくる。

彼の持つスミス・アンド・ウェッソンマグナム44は、のちにダーティー・ハリーが持つ銃と同型だ。

ただしジョン・ヴァーノンがペントハウスから下へ落下するシーンは物理的に見てもおかしいし、飛び降りたヴァーノンの映像が、合成した夜道から浮いて見える。もう少し演出方法があったのでないか?

メル・ギブソンが主演した「ペイ・バック」も同じ原作を使っている。ジョン・ブアマンによると「殺しの分け前」撮影時の最初の台本が似ていると言っていた。その台本はリー・マービンが窓から外に捨てたと言っていた。

廃止された監獄島アルカトラズ島に一般映画のカメラが入ったのはこの映画が最初だった。

スタッフ

監督 ジョン・ブアマン(ハリウッド・デビュー作)
製作 ジャド・バーナード 、 ロバート・チャートフ
原作 リチャード・スターク 「悪党/パーカー」
脚色 アレクサンダー・ジェイコブス 、 デイヴィッド・ニューハウス 、 レイフ・ニューハウス
撮影 フィリップ・ラスロップ
音楽 ジョニー・マンデル

キャスト

退役軍人ウォーカー  リー・マービン
妻の妹クリス  アンジー・ディッキンソン
謎の男ヨスト キーナン・ウィン
第二のボス、ブルースター  キャロル・オコナー
第一のボス、カーター ロイド・ボックナー
カーターの手下ステグマン(ビッグ・ジョン)  マイケル・ストロング
戦友マル・リース ジョン・ヴァーノン
妻リン シャロン・エイカー
殺し屋  ジェームズ・シッキング
ウェイトレス サンドラ・ワーナー

殺しの分け前/ポイント・ブランク Point Blank 1967 ウィンカー・フィルム製作 MGM配給

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