日本公開は1960年。
シーラ・グレアムジェロルド・フランクの原作をのサイ・バートレットが脚色、ヘンリー・キングが監督したメロドラマ
主演は「渚にて」のグレゴリー・ペック、「旅路」のデボラ・カー
共演はエディ・アルバート、フィリップ・オーバー、ハーバート・ラッドリー、ジョン・サットンなど。

テクニカラー作品。

 

あらすじ

シーラは、ロンドンの孤児院で育ち、コーラス・ガールから、世間知らずのドネゴール卿と婚約までした。
しかし、姑が怒ってシーラを米国に追放してしまった。
アメリカへ渡った学のないシーラは、才覚を発揮して芸能新聞のコラムニストにまで出世した。

新聞社に顔が利くホイラーの力でディリー・ミラー紙のコラムニストになり、やがてハリウッド映画記者として、俳優の出来不出来やゴシップをハッキリ言う記事を発表して人気を得た。

評論家カーターのパーティで、作家F・スコット・フィッツジェラルドに会って親しくなった。スコットには、精神病の妻をスイスのサナトリウムに送り、一人娘も全寮制の学校で学んでいた。だから、いつも借金に苦しみ、アルコールに溺れていた。
脚本執筆を頼まれ、禁酒をした彼は、シーラを誘ってメキシコに泊まりがけで遊びに行く。海で、彼は愛を告白した。シーラも、自分の生い立ちと本名がリリー・シールであるを告げた。スコットに妻がいる以上、二人は結婚できなかったが、愛情は寄り強いものになった・・・。

雑感

無事に活躍していれば、ノーベル文学賞を受賞していたかも知れない、「失われた世代」作家:F・スコット・フィッツジェラルドが死ぬまでの数年間を一緒に暮らしたシーラ・グレアムの回想記を映画化した作品である。
主演のグレゴリー・ペックは、アーネスト・ヘミングウェイ原作、ヘンリー・キング監督の「キリマンジャロの雪」では好演だったが、同じ世代でも線の細いタイプのF・スコット・フィッツジェラルド役はお世辞にも上手くない。もっと無骨でなければ、生きない俳優だ。グレゴリー・ペックとエディ・アルバートが共演しているが、「ローマの休日」と同じである。

一方、デボラ・カーは、実に美しく「めぐり逢い」に準ずる好演だった。
ヘンリー・キングとしては、1955年に監督した映画「慕情」を超える作品を狙ったのだが、主演二人の微妙なミスマッチがあるので、惜しい作品になってしまった。

 

スタッフ

監督  ヘンリー・キング
製作  ジェリー・ウォルド
脚本  サイ・バートレット
原作  シーラ・グレアム、ジェロルド・フランク
撮影  レオン・シャムロイ
音楽  フランツ・ワックスマン

 

キャスト

F・スコット・ジェラルド(作家)  グレゴリー・ペック
シーラ・グレアム(芸能評論家)  デボラ・カー
評論家カーター  エディ・アルバート
ジョン・ホイーラー(シーラの代理人)  フィリップ・オーバー
ドネガル侯爵  ドン・サットン
ハリス  ハーバート・ラドリー
ジャネット・ピアース(大根女優)  カリン・ブース

***

スコットは、例の脚本が採用されず、職を失う。シカゴでのラジオ放送のため、シーラは彼と共に飛行機に乗り込んだが、その夜に彼は禁酒を断ってしまった。アル中のおかげで、彼女の放送をじゃました上に倒れてしまう。
シーラは小説家として立ち直るように勧めた。彼は再び、禁酒して、海辺のバンガローで長篇小説「ラスト・タイクーン」を書き始めた。しかし、どの雑誌も連載を断ってきた。浮浪者を呼び込んで再び泥酔し、帰宅した彼女に暴力を振るった。たまらず彼女は家を出て行った。

その夜、彼は再び倒れたが、カーターに助けられた。シーラとは、腐れ縁で再び一緒に暮らすようになった。1940年の12月スコットは、翌年の春に出版されることが決まった「ラスト・タイクーン」を第6章まで書いていた。スコットとシーラは、幸せの絶頂にいたかも知れない。シーラが気が付くと、スコットは心臓マヒで亡くなっていた。

悲愁 Beloved Infidel (1959 ) ジェリー・ウォルド製作 20世紀フォックス配給 デボラ・カーとグレゴリー・ペック主演メロドラマ

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