カラー映画で東映二作目の忠臣蔵もの。3年前の一作目「赤穂浪士天の巻地の巻」に続き、松田定次監督の作品だが、脚本は「七つの顔の男」の比佐芳武
今回は主演片岡知恵蔵が大石内蔵助を演ずる。共演者は東映俳優は第一作とほぼ同様だが、役柄が変わらなかったのは原健策薄田研二。新登場したのは大石主税を演ずる北大路欣也、矢頭右門七を演ずる沢村精四郎(二代目澤村藤十郎)、徳川綱吉を演ずる里見浩太郎、岡野金右衛門を演ずる大川橋蔵、妻おたかを演ずる美空ひばり、さらに二代目東映三人娘(大川恵子桜町弘子丘さとみ)ら。その代わり初代東映三人娘の内、千原しのぶだけが堀部安兵衛の妻役で出演した。(1958年に高千穂ひずるは松竹に復帰した)

 

あらすじ

 
・桜花の巻
元祿十四年春。赤穂藩主浅野内匠頭は勅使供応役を仰せつかるが、江戸家老が無能だったため、指南役吉良上野介に厳しいパワハラを受けた。そのうち畳の表替えは、堀部安兵衛の友人の畳職人多右衛門のおかげで救われた。また式服を間違えたときも江戸側用人片岡源五右衛門の機転に救われる。しかし三月十四日、罵詈雑言を浴びせる吉良に対してついに浅野の堪忍袋の緒が切れて松の廊下で刃傷に及ぶ。吉良は軽傷で済んだが、内匠頭は切腹し赤穂浅野家は断絶となった。
早駕籠が赤穂に送られ、城代家老大石内蔵助に主君切腹が伝えられる。城内は、城明渡しに応じる大野九郎兵衛派と、籠城する武闘派に意見が別れてしまう。大石が籠城の意志を藩内に示すと、多くの藩士が去って行った。内蔵助の考えは改まり、御舎弟大学様お取立を嘆願し応じられなければ吉良を斬ることで全員の同意を集め、城明渡しを決めた。主君の朋友脇坂淡路守に城を無事明け渡し、大石は号泣して赤穂を去る。(ここまで3時間の内、1時間40分経過)

 

・菊花の巻
伏見の撞木町にある遊郭で大石は放蕩三昧を続ける。吉良家の間者が、剣を突きつけたときも、大石はあわれに土下座して謝るばかりだった。
しかし大石は、故橋本平左衛門の娘たかに間者になって吉良邸に忍び込めと命じる。上杉綱憲は父上野介を米沢へ避難させようとするが、家老千坂兵部は世間を敵に回してはならないと思い止まらせる。安兵衛と片岡は京に上り大石に東下りを迫る。大石はお家再興の嘆願書の返事を待っていたが、広島浅野本家を通して幕府は拒否した。
ついに大石はひそかに江戸へ下った。吉良の寵愛を受けるおたかは吉良屋敷内部の地図を入手した。そして句会の日取りを調べていた岡島から14日と知らされる。
元祿15年12月14日、赤穂浪士は吉良邸へ討ち入り、とうとう炭小屋に隠れていた上野介を討って本懐を遂げる。一行が泉岳寺へ行進する中、大石は江戸城を見上げるのだった。

 

 

雑感

 
前半の刃傷前の段を丁寧に描いている。刃傷後も大石は意見を二転三転してまで藩士を翻弄し自分のイエスマンを絞り込み、真の同志にのみ自らの決意を語って、満場一致で決議してしまう。城明け渡しでの脇坂淡路守とのエピソードは、片岡知恵蔵市川右太衛門との二人芝居だがかなりしんみりする話だった。

一転、菊花の巻に入ると、伏見で遊びながら江戸からの吉報を待つ一方、江戸滞在組を自在に動かして吉良の動向を逐一掴む。この辺りに策士としての大石の姿が見える。
一方、この作品では千坂兵部はあまり動かない。
東下りの段になって、垣見五郎兵衛(立花右近)の段が省略され、その代わりに江戸の間者勢の諜報合戦が激化する。大石が御暇乞いに瑞泉院の元を訪れても、上杉の間者は現れず、瑞泉院は戸田局を宥めて大石の意図を汲む。

総じて、この作品は片岡千恵蔵のやりたい事をやらせるための映画だったのではないか。ただし監督が前作(主演:市川右太衛門)と同じであるため、オリジナリティがだいぶ削がれてしまい、脚本も前作に強い影響を受けてしまった感がある。

浅野=中村錦之助、大石=片岡千恵蔵に、美空ひばりを加えて東映らしい絢爛豪華なラインアップを駆使したオールスター作品だと思う。しかし幼いころから見慣れてしまったせいで、飽きているのも事実だ。

 

 

スタッフ・キャスト

 
監督 松田定次
製作 大川博
脚本 比佐芳武
企画 坪井与 、 辻井公晴 、 玉木潤一郎 、 坂巻辰男
撮影 川崎新太郎
音楽 深井史郎

 
配役
大石内蔵助 片岡千恵蔵
浅野内匠頭 萬屋錦之介
あぐり   大川恵子
吉良上野介 進藤英太郎
千坂兵部 山村聡
上杉綱憲 中村嘉葎雄
柳沢吉保 三島雅夫
綱吉  里見浩太朗
田村右京太夫 石井一雄
荘田下総守 加藤嘉
多門伝八郎 小沢栄太郎
梶川与三兵衛 阿部九洲男
畳屋多右衛門 榎本健一
脇坂淡路守 市川右太衛門

原惣右衛門 宇佐美淳也
片岡源五右衛門 原健策
堀部弥兵衛 薄田研二
堀部安兵衛 大友柳太朗
吉田忠左衛門 大河内傳次郎
小野寺十内 沢村宗之助
岡島八十右衛門 東千代之介
岡野金右衛門 大川橋蔵
赤埴源蔵  徳大寺伸
大石主税  北大路欣也
矢頭右門七 沢村精四郎(二代目澤村藤十郎
三村次郎左衛門 加賀邦男
不破数右衛門 山形勲
橋本平左衛門 月形龍之介
菅野三平  片岡栄二郎
大野九郎兵衛 柳永二郎

大石りく 木暮実千代
橋本たか 美空ひばり
おかる 桜町弘子
初音太夫 花園ひろみ
青柳太夫 雪代敬子
小桜太夫 喜多川千鶴
白菊太夫 花柳小菊
堀部幸 千原しのぶ
糸路   丘さとみ
戸田局 長谷川裕見子
そば屋久兵衛 杉狂児
長吉    堺駿二
鈴木元右衛門 吉田義夫
小林平八郎 岡譲司
清水一学  清川荘司

 

忠臣蔵 櫻花の巻 菊花の巻 1959.1 東映作品 美空ひばりを加えたオールスター映画

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