女必殺拳」シリーズ第一弾で、女ドラゴンと呼ばれた志穂美悦子第一回主演作品。
香港と日本のハーフである紅竜が行方不明になった兄を探して日本で麻薬組織相手にひと暴れする。
監督は山口和彦。共演は内田朝雄、天津敏、宮内洋

あらすじ

紅竜の兄で香港麻薬警察捜査官万青が捜査中に横浜で消息を経った。紅竜紅は日本に向かい華僑である叔父の元に泊まって、少林寺拳法の道院に通って、兄を探す手がかりを求める。そこでは響という猛者(元大学空手部主将)が力になろうと約束してくれた。
紅竜は、麻薬中毒にさせられた香港の女麻薬Gメン、ファン・シンから、敵組織の秘密を教えられる。紅竜は組織を統べる角崎宅に乗り込むが、武道家の攻撃にあい、海に飛び込んで逃げる。
角崎は紅竜の伯父玉堂を、娘をレイプして脅迫し紅竜を呼び出した。卑劣な角崎の裏をかいて、紅竜は、地下牢で麻薬漬けになった兄・万青を発見した。その時、敵は攻撃してきて紅竜は立ち向かうが病んでいる万青は殺されてしまう。そこへ響、絵美たちが駆けつける。怒りに燃えた紅竜は角崎を追い詰めて、ついには必殺拳で倒すことができた。

 

雑感

「キカイダー01」の後半に志穂美悦子がビジンダーの人間態であるマリとしてミニスカを履いて出てきた時は、残念な芋姉ちゃんと思っていた。ちょうど一年ほどで、見事に変身した。
演技は硬いが今回が初主演作だから、仕方がない。それより大きな伸び代を感じて、すっかり彼女のファンになってしまった。
のちに角川映画に出る頃は、ちょっと違う方向に進んでいるんじゃないかと思ったが、結局、石野真子と離婚歴のある長渕剛と結婚してしまった。もう少しアクションを極めて欲しかった。残念。
昨年か「徹子の部屋」に出た時はお年を召していたが、スタイルが変わっていなかった。時々、長渕剛を締めているのだろう。

ラスボス役は「仮面の忍者赤影」第一部でラスボス甲賀幻妖斎を演じた天津敏。当時五十三歳だったが水泳と海軍で鍛えた体は衰えておらず、上半身ムキムキの裸になって志穂美悦子と戦った。元は宮城県の教員で戦後三十二歳で東宝ニューフェイスに合格した変わり種。TVドラマ「隠密剣士」のレギュラー風魔小太郎でブレークした。

中ボス石橋雅史は「欽ちゃんのどこまでやるの」のコントで無口で怖いけれど本当は気の優しい人を演じていた。ところがマジで強い人で学生時代から極真会館で師範代を勤め、最終的に極真七段の腕前だ。空手映画の多くにテクニカルアドバイザーとして参加している。

千葉真一は器械体操部でアラン・ラッドのようにオリンピックを目指していたが、極真カラテも趣味で嗜んでいたそうだ。今回の役は「名探偵コナン」に出てくる鈴木園子の彼氏京極真のように大学空手部元主将。主人公が危ないところで、ちょこっと出てきて見せ場を作り、主人公をラスボスの元へ向かわせる。如何にも特別出演のような扱いだ。

さらに宮内洋が志穂美の兄役で登場し、ビジンダーとV3の共演と喜ばれたが、時間がなかったのか麻薬漬けになり殺されるだけの役だった。TVでは「キーハンター」壇刑事、「仮面ライダーV3」主役だったのに、(後に「刑事くん」のレギュラー、「秘密戦隊ゴレンジャー」のアオレンジャー、「快傑ズバット」さらに「Gメン’75」の島谷刑事、「暴れん坊将軍」の初代御庭番など)映画一本で志穂美悦子と大きな差がついてしまった。

この映画と特撮ドラマの縁はさらに深く、「変身忍者嵐」主演の南条達也(林寛子が出ていたから見てた)も紅竜の従兄弟役で出てくる。

したがって彼女の空手映画は東映の主力である実録路線と全く違うタイプの特撮映画と考えられる。大体、最後は主人公紅竜もラスボスも空に飛んでいき、紅竜がラスボスに技を決めて転落死させるパターンだ。こんなの「仮面ライダー」の決め技だろう。
この一連の作品は「キカイダー01」のファン層を呼び込むためにわざとヒーロー(ヒロイン)が怪人を倒す映画として描かれたと思っている。

スタッフ

企画 吉峰甲子夫 、 高村賢治
脚本 鈴木則文 、 掛札昌裕
監督 山口和彦
撮影 中島芳男
音楽 菊池俊輔

キャスト

李紅竜 志穂美悦子
早川絵美 早川絵美
湖城しのぶ 大堀早苗
ファンシン 謝秀容
叔父李玉堂 近藤宏
いとこ治郎 南条達也
いとこ麗子 橘なみ
紅竜の兄・李万青 宮内洋
ラスボス角崎重臣 天津敏
雑魚ボス林亮三 山本昌平
中ボス犬走一直 石橋雅史
藤田徹道道院長 内田朝雄
響征一 千葉真一

女必殺拳 1974 東映配給・製作

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