昭和41年の東映特撮夏休み映画。当時の東映も東宝、大映に負けずと特撮映画に乗り出していた。ただ題材が忍者なのは東映らしい選択だ。
白土三平が1965年から少年ジャンプで連載していた「ワタリ」第1部を東映は映画化した。
Synopsis:
ワタリは爺と流れて来たのを伊賀百地の主領三太夫に拾われて下忍として暮らしている。
最近、下忍たちの抜忍が相次ぐが、悉く主領の放った刺客に殺される。下忍たちは不満を募らせるが、中間管理職である大頭の城戸(じょうご)は彼らの不平を聞いてやる。一方、ワタリは死んだ抜け忍が持っていたこけしを手に入れて爺に見せる。
そのうち城取りの命令が下り、不平を述べていた下忍は出兵するが、途中で伏兵に会い皆殺しになる。敵対する伊賀藤森の手の者にやられたらしい。
ワタリの親友カズラの姉ツユキと恋人小次郎に武田方の五月雨城主の暗殺命令が出る。それを成就させれば結婚を許すと言う。五月雨城に忍び込んで見ると、そこには武田忍者でなく何と伊賀藤森の伊勢崎六人衆がいた。二人は危険分子と見なされ処刑場に送り込まれたのだ。六人衆は二人を襲い行方不明となる。カズラは姉の仇を討つべく戦うが、力の差は大きく結局自爆するしかなかった。
爺とワタリは小次郎を助けて、伊賀百地と伊賀藤森の間に密約があることを聞いた。抜忍などの反逆行為が増えて来たら、両者の主領が話し合い、両方の危険分子を抹殺する約束ができていたのだ。さらに大頭の城戸が伊賀全体の実質的トップであり、伊賀国で恐怖政治を敷いていたのだ。
主領は切られ、大頭をワタリは一人で追い込む。そして最後は自慢の斧で仕留めるのだった。
白土三平とは若い頃、共産党かぶれしていたが入党を許されなかった。だが左翼だったことは違いなく階級闘争を描いたこの作品を、東映特撮が怪獣もののように特撮でカラフルに描くことが気に入らなかったのだろう。しかし高度成長期の子供がターゲットなのだから、描くのも限度がある。
白土三平原作漫画「ワタリ」の実写テレビドラマ版を東映がオファーしたが、白土から断ったそうだ。
そこで仕方なく、忍者漫画の二番手を走っていた横山光輝に白羽の矢を当て、「伊賀の忍者影丸」の連載を辞めさせてテレビドラマ「仮面の忍者赤影」のコミカライズを担当させた。
サーカスに出てくるようなカラフルな敵忍者はすでにこの映画で原型が現れており、ワタリの忍者走りのシーンもそのまま青影の忍者走りシーンに流用している。
ただ、階級闘争要素はなくなり、赤影達飛騨の忍者は羽柴秀吉(大辻司郎)、竹中半兵衛(里見浩太朗)らの天下統一のために働いている設定となった。
金子吉延は「赤影」での青影。爺役を演じた牧冬吉は白影だ。
他にも天津敏だとか汐路章とか「赤影」の常連がすでに出演していた。
大友柳太朗と内田朝雄は「赤影」には出演してくれなかったが。
本間千代子が見たくて観たのだが、ちょっとしか見せ場がなかった。
監督 船床定男
製作 大川博
原作 白土三平
脚色 伊上勝 、 西村俊一
企画 岡田茂 、 秋元隆夫 、 新海竹介
撮影 赤塚滋 、 国定玖仁男
特撮監督 倉田準二
音楽 小川寛興
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出演
金子吉延 ワタリ
牧冬吉 爺
内田朝雄 百地三太夫
大友柳太朗 音羽の城戸
村井国夫 小次郎
本間千代子 ツユキ
伊藤敏孝 カズラ
ルーキー新一 カズラの補佐ドンコ
汐路章 カンパチ
瑳川哲朗 藤林長門(藤森派)
天津敏 楯岡の道順(藤森派)
原健策 トリコ
大忍術映画 ワタリ 1966 東映 「仮面の忍者赤影」の原型

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