失明を知らされた少女とその恋人の純愛が、不倫に悩む女優を目覚めさせ人生の夜明けを切り開く、山田信夫の脚本を蔵原惟繕が監督した歌謡映画
主演は浅丘ルリ子。共演は浜田光夫、松原智恵子、岡田眞澄、岸洋子、小松方正。白黒映画。

あらすじ

ミュージカル公演の千秋楽の夜、打ちあげを終えた主演の緑川典子は、真紅のサンダーバードを駆って、ホテルへ向った。そこには、愛人の作曲家野上が待っていた。しかし野上は典子に触れようとせず、徹夜で仕事を終えて、朝になる前に妻の顔を見るために、飛び出して行った。
典子は、満たされなかった欲求を車にぶつけ、高速で突っ走る。睡魔に襲われた典子は、小田原のドライヴ・インで、東京に行きたがっていた利夫に代行運転を頼む。彼は、サングラスを掛ける千加子を連れていた。千加子は、目を病んでいるという。東京に到着した典子は、千加子を知り合いの医師に紹介する。
典子がアパートへ帰ると、運転手と付き人が現金や宝石を盗んで逃げていた。脚本家真木とプロデューサーが次回ミュージカル「夜明けのうた」の脚本を持って、現れた。この内容が、典子と野上との価値のない情事をなぞったものだった。典子は怒り、出演を断り、自動車で危険運転をして事故を起す・・・。

 

雑感

歌謡映画というと、新しい歌謡曲の宣伝目的のものだ。
ところが、蔵原惟繕監督に掛かると、歌謡映画であっても、イタリア映画のような愛の不毛を描くスタイリッシュなものに仕立ててしまう。
出ずっぱりの主役を演じる浅丘ルリ子も、蔵原監督作品では人が変わったような、素敵な演技を見せる。とくにラストで見せた浅丘の笑顔は、ファンではない私にもまぶしいものだった。
岸洋子は、クラブでのライブシーン(「夜明けのうた」を歌う)と空港でのシーンで登場する。結構、きちんと演技をしていた。東京芸術大学で、彼女はオペラ歌手を目指していたそうだ。

 

スタッフ

企画  園田郁毅
脚本  山田信夫
監督  蔵原惟繕
撮影  間宮義雄
音楽  いずみたく

 

キャスト

女優・緑川典子  浅丘ルリ子
利夫(恋人たち)  浜田光夫
千加子(恋人たち、失明する)  松原智恵子
野上(愛人の音楽家)  岡田眞澄
真木(劇作家)  小松方正
青年医師  小高雄二
藤木  藤木孝
神山  戸浦六宏
ナイトクラブの司会者  藤村有弘
岸洋子   本人

***

典子は、たまらず野上に電話をした。家族とともにいる野上は、全く頼りにならなかった。典子は帰途、利夫と千加子に再会した。千加子の眼は、数ヶ月で失明するそうだ。失望した千加子は、利夫の愛をかたくなに拒んだ。典子は、彼の愛を信じるように千加子を心から励ました。
その夜、典子は野上をいつものホテルに呼び出し、利夫と千加子を証人にして別れを告げる。そして、部屋を二人のために明け渡し、ホテル料金を払って帰る。
典子は、「夜明けのうた」の出演を決意して、真木に電話する。真木は喜んだ。街には、夜明けの太陽が上がってきた。

 

 

 

夜明けのうた 1965 日活製作・配給 歌謡映画の傑作

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