監督 黒澤明
原作 村田喜代子 「鍋の中」 芥川賞受賞
脚本 黒澤明
撮影  斎藤孝雄
上田正治
音楽 池辺晋一郎
出演:
村瀬幸子 (祖母・鉦)
井川比佐志 (忠雄)
根岸季衣 (町子)
大寶智子 (たみ)
伊崎充則 (信次郎)
吉岡秀隆 (縦男)
リチャード・ギア (クラーク)

映画の予告編で、リチャード・ギアが出てくるシーンばかり流れていたことを覚えている。
しかし実は、なかなか面白い反核映画だった。
主演は村瀬幸子、当時86歳の大女優だ。
日露戦争の真っ最中、1905年生まれ。
戦前は築地小劇場、戦中は俳優座設立に参加という生粋の演劇人だ。
戦後は老け役で映画やテレビに活躍の場を広げた。
阪妻主演、木下恵介監督の「破れ太鼓」(1949)では、桂木洋子を娘に持つ母親役で出演している。
同年の原節子主演の「お嬢さん乾杯」でもバーのマダム役で出ていた。

長崎の村に住む鉦の兄というハワイの大富豪・錫二郎が、不治の病にかかり、鉦に会いたいという。
しかし年老いた鉦は、その兄のことが思い出せない。
さらに原爆を落としたアメリカへのこだわりから、ハワイへ行くことに気が進まない。
代わりに鉦の長男の忠雄、長女の良江がハワイを訪れる。
そして、孫の縦男、たみ、みな子、信次郎は夏休みを鉦の家で過ごすことになった。
はじめは何もない田舎で退屈していた四人だったが、
鉦の昔話を聞いているうちに、原爆で夫を亡くした鉦の心情を理解する。
母をハワイに連れて行くため、急遽、忠雄と良江が帰国した。
さらに、甥のクラークがハワイからやって来る。

原爆映画にありがちな、ショッキングな描写は全くない。
孫たちの視点で、じっくりと核について考えさせる。
新劇風であり、まるで文部省推薦映画のようである。
監督は、子供たちにも見て欲しかったのだろう。
それが、ラストの雷雨のシーンでひっくり返る。
見ていた子供たちは戸惑うことだろう。
でもずっと記憶に残るはずだ。

八月の狂詩曲 1991 松竹

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