原題は「全部明らかになった」という意味。
アメリカのユダヤ人が祖父母を失い、祖父の故郷ウクライナにルーツ探しの旅に出て、大切な出会いと別れを経験する。

このロードムービーの原作はユダヤ系アメリカ人ジョナサン・サフラン・フォアのベスト・セラーで、作者が大学3年の時のウクライナ旅行を基にしている。
「スクリーム」シリーズの出演で知られる脇役俳優で母がユダヤ系のアメリカ人リーヴ・シュライバーの初監督作品で脚本も書いている。製作はピーター・セラフでユダヤ・コネクションが作った作品。主演はイライジャ・ウッドと歌手のユージン・ハッツ

 
ウクライナというと、映画「ひまわり」を思い出されるが,その裏には哀しいユダヤ人の歴史があった。
 

あらすじ

 
(語り手は若いアレックス)

ユダヤ系アメリカ人ジョナサンは親戚の死後、彼らの身の周りの物を1つずつジップロックに入れピンで壁にとめる収集癖があった。

祖父母がともに亡くなって、祖母から託された写真には祖父サフランと女性が写っていて、裏にアウグスティーネと名前が書かれてあった。その場所トラキムブロドを探しにジョナサンは、ウクライナに一人旅立つ。

ユダヤ人のルーツ探しをする専門家は、アレックス青年とその祖父、そして愛犬「サミー・デイヴィス・ジュニア・ジュニア」だ。田舎道を走って珍道中を起こす。ジョナサンが戦前のウクライナはユダヤ人を排斥していたと言う。知らなかったアレックスは驚くが、祖父は何も答えずジョナサンの写真をじっと見ている。
翌朝、またもや道に迷って車を降りた祖父は今も第二次世界大戦を思い出させる古い武器の残骸が散乱している場所に遭遇する。

翌朝、またもや道に迷って車を降りた祖父は今も第二次世界大戦を思い出させる古い武器が散乱している場所に遭遇する。
その次の日、やっとひまわり畑の中にある一軒家を見つける。アレックスは老婦人に、サフランとアウグスチーネの写真を見せて「この人達を知りませんか」と尋ねると、老婦人はずっと待っていたと答える。
老婦人に家に招かれた3人はラベル分けしたいくつもの箱が山のように置かれているのに気付く。彼女はアウグスチーネの姉リスタで、サフランはアウグスチーネと結婚していた。老婦人は、アレックスの祖父に向かって1枚の写真を取り出して「この人はバルク」と言う。実は彼はユダヤ人だったのだ。その後3人と一匹は、リスタの案内でトラキムブロドへと向かう。そこには墓碑があった。そこは1942年、トラキムブロドの住民の多くがナチスに虐殺された場所だった。

リスタは、妊娠中だったアウグスチーネも殺されたことを語る。アレックスの祖父もそこで銃を突きつけられた1人だった。しかし彼は生き残って、ユダヤ教を捨てた。
一方、サフランはナチスが来る一週間前にアメリカへ亡命の受け入れ先を探しに行ったまま帰って来なかった。
サフランの遺品にあった琥珀のペンダントはアウグスティーネのものだった。ジョナサンがそれをリスタに渡すと、リスタはアウグスチーナが埋めて隠していた結婚指輪をジョナサンに渡す。最後にリスタは「指輪があなたをここへ引き寄せた」とジョナサンに告げる。最後にアレックスの祖父に戦争は終わったかと尋ねる。祖父はそっとリスタの手に口づけする。
帰りのホテルで、アレックスの祖父は自殺する。アレックスはジョナサンを駅まで送り、ジョナサンはアレックスにダビデの星のペンダントを手渡す。
 

 

 

雑感

 
なかなか面白いロードムービーだった。一生に一度取れるかどうかという作品を、初監督の俳優が撮ってしまった。後半のリスタ家の周りは、夏のひまわりで一杯だった。ウクライナを舞台にした映画「ひまわり」を思い出した。「オデッサファイル」はウクライナの大都市オデッサと関わりがない。

 
ルターの宗教改革の時代からポグロムという、暴徒と化したキリスト教徒によるユダヤ人の迫害が行われるようになった。ウクライナ、ベラルーシ人も帝政ロシアに対する反乱を起こした際、ポグロムを起こした。旧ドイツ帝国内でもポグロムが起きるようになる。帝政ロシアも内政不安をユダヤ排斥運動に向けさせた。ナチスの時代になると、ユダヤ人がソ連に通じているとされ、保護していたポーランドまでポグロムをするようになる。

 
ウクライナに行ってからの音楽がエミール・クストリッツァっぽい。ジプシーの音楽だろう。逆に最初のジョナサンのシーンでかかる音楽は、物悲しくテオ・アンゲロプロスっぽかった。
アレックス役のユージン・ヒュッツ(ハッツ)が飄々とした、いい味を出していた。彼はロマ系ウクライナ人でチェルノブイリ原発事故でアメリカに逃げて音楽に目覚め、多国籍ジプシーバンド「ゴーゴル・ボルデロ」を結成した。彼はこれが初演技だが、認められてマドンナの初監督映画に主演した。
 

スタッフ・キャスト

 
監督 リーヴ・シュレイバー (リエヴェ・シュライバー)
製作 マーク・タートルトーブ 、 ピーター・サラフ
製作総指揮 マシュー・スティルマン
原作 ジョナサン・サフラン・フォア
脚本 リーヴ・シュレイバー
撮影 マシュー・リバティック
音楽   ユージーン・ヒュッツ

 
配役

ジョナサン     イライジャ・ウッド
アレックス     ユージーン・ヒュッツ (ハッツ)
祖父         ボリス・レスキン
リスタ         ラリッサ・ローレット
 

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