この映画だけでは、イタリアを舞台に展開する5大スター競演のロマンティック・コメディだ。その中でもコメディ・リリーフに過ぎなかったクルーゾー警部を演ずるピーター・セラーズが一際目立ってしまって、翌年からピンク・パンサー・シリーズとしてシリーズ化され、その第1作にあたる。ピンク・パンサーと言われるのは、本作で怪盗ファントムに狙われるダイヤである。
本作の主演はデヴィッド・ニーヴン(英)とクラウディア・カルディナ-レ(伊)、共演はピーター・セラーズ(英)、キャプシーヌ(仏)、ロバート・ワグナー(米)。ピーター・セラーズはピーター・ユスチノフが直前に出演をキャンセルした代役に過ぎなかった。
監督はブレイク・エドワーズで、有名な「ピンクパンサー」の音楽はヘンリー・マンシーニが作曲した。
 

あらすじ

 
謎の怪盗ファントムが世間を騒がせていた。その正体は英国貴族リットン卿だった。彼の次の獲物は、中東のダラ王女が持つピンク・パンサーだ。ダラ王女が滞在するイタリアの保養地にリットン卿は接近する。
しかしそこにファントム逮捕に燃えるパリ警視庁のクルーゾ警部が妻シモーヌを連れてやって来た。彼はファントムの匂いを感ずるが、シモーヌが実はファントムの一味だとは知らなかった。妻はクルーゾの捜査方針をファントムに伝えにホテルの部屋に行くが、代わりにリットン卿の甥ジョージがいて、二人の関係がバレてしまう。やがてピンクパンサーの行方の知れぬままに、ダラ王女はローマへ帰る。
クルーゾ警部はリットン卿こそファントムと確信した。警官隊を伏せた、ダラ王女の仮装パーティーにファントムが忍び込み、ダイヤを盗もうとするが、ダイヤがない上に、なぜかもう一人ファントムがいる。ジョージだったのだ。かくして、警官隊とのカーチェイスでリットン卿とジョージは逮捕され、裁判に掛けられる。
シモーヌはダラ王女を訪ね、リットン卿と甥の助命を請う。ダラ王女にとっても、リットン卿を失うことは辛い。
裁判は終盤戦、証人としてクルーゾが呼ばれるが、弁護士は彼こそファントムだと主張する。そして何故かクルーゾの胸ポケットにあのピンクパンサーが入っていた。
 

雑感

この映画はピーター・セラーズの当たり役になったが、個人的にはキャプシーヌが嵌まっていたと考えている。
実に美しく、色っぽい。彼女の最初のアメリカでの成功作は、作曲家フランツ・リストを描いた「わが恋は終わりぬ」だが、その後作品に恵まれたとは言いがたい。
その中でも、この作品はコメディエンヌとしての彼女をアピールする作品だったと思う。

 
歌手のフラン・ジェフリーズは山荘でヘンリー・マンシーニの歌「今宵は楽しく」の出演だけだったが、一曲でも見る価値が十分あった。見事なスタイルと力強いボーカルは忘れられないし、ピーター・セラーズを含む面々が輪になって踊るシーンは実に楽しい。昔、見た「噂のチャンネル」の最後の歌のシーンを思い出した。

スタッフ・キャスト

監督 ブレイク・エドワーズ
製作 マーティン・ジュロー
脚本 モーリス・リッチマン 、 ブレイク・エドワーズ
撮影 フィリップ・ラスロップ
音楽 ヘンリー・マンシーニ
衣装デザイン イヴ・サンローラン

配役
チャールズ・リットン卿 デイヴィッド・ニーヴン
ダラ王女  クラウディア・カルディナーレ
クルーゾー警部   ピーター・セラーズ
クルーゾー夫人   キャプシーヌ
ジョージ    ロバート・ワグナー
歌手    フラン・ジェフリーズ

ピンクの豹 The Pink Panther 1963 ユナイテッド配給 ピンク・パンサー・シリーズ第一弾

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