ロンドンでの舞台劇をもとに、ジュディ・ガーランドが亡くなる前年のロンドンのクラブでの公演を通して最晩年の彼女の愛と哀しみを描く伝記映画
監督はルパート・グールド、主演はレネー・ゼルウィガー(これでアカデミー主演女優賞受賞)、共演はジェシー・バックリーら。

あらすじ

ジュディ・ガーランドは大スターだったが覚醒剤中毒がもとで遅刻と欠勤を繰り返し、映画やテレビ、舞台の声が掛からなくなっていた。1968年やむなく元夫シドニーに娘と幼い息子を預けて、ロンドンに旅立ち、クラブに毎夜出演する。不安が募っても、ステージに上がりさえすれば彼女の歌声は観客を魅了した。若いミッキーと出会いロンドンで挙式をあげたが、親権争いでシドニーに敗れる不安からアルコール中毒を再発して、テレビ番組で司会者に食ってかかり舞台でも大失敗を犯す。その尻拭いをするのは、興行主がジュディに押しつけたマネージャーのロザリンだった。最初、二人は気が合わなかったが、次第に打ち解けていく。

しかし親権争いの最後の望みだったジュディ・ガーランド記念館建設運動にミッキーが失敗して、二人は破局を迎える。子供たちの心も離れて荒んでいくジュディは再び舞台で大失敗してついに降板させられる。お役御免となったロザリンだったが、翌日バンドリーダーと共に昼食会にジュディを招待する。そこで気を良くしたジュディは、最後にクラブで歌いたいと言い出す。そんなことを興行主に知られたら叱られるロザリンは敢えて黙認する。ジュディは出演しているロニー・ドネガンに断って舞台に立ち、観客は突然のことに騒然とする。歌い終え喝采で迎えられたジュディは「オーバー・ザ・レインボー」を歌い出すが、途中で歌えなくなってしまうが、観客が代わりに歌い出す。これが彼女が待ち望んでいた観客との関係だった。
翌年、彼女はロンドンで亡くなった。

雑感

敢えて役に似せず、レネー・ゼルヴィガーの演技力だけで見せた映画である。

アメリカ国内でこの映画の評価は二分されている。彼女の死後発行された伝記では描かれておらずアメリカ人がほとんど知らない空白の時代を描いている。遺族の中でも、前半にチラリと母娘の関係が描かれるライザ・ミネリは映画製作中レネー・ゼルヴィガーとの面会を拒絶していた。
だからどこまでが事実でどこからがフィクションなのか分からないが、アメリカであれだけ冷遇されたジュディが最後を迎えた場所がロンドンだったことは確かである。彼女は自分を布きれのように捨てたアメリカに強い疎外感を感じていた。逆に国宝級の歌手を外国で失った秘密をい抉り出す映画であり、アメリカ人には刺さったのではないか。
ゲイのカップルとの心温まる交流が描かれているが、ジュディが同性愛に寛容だったのは有名な事実だ。
歌はレネー自身が歌っている。彼女の歌はミュージカル映画「シカゴ」以来だ。もちろんジュディに遠く及ばないが、良い具合に枯れてきた。主演女優賞を取ってしまうと次回作が難しそうだが、俳優で喰っていけなかったら歌手に転向しても良いのでないか。外見はジュエルで中身がジュディだったら文句は無いではないか。
彼女を麻薬漬けにした社長ルイス・B・メイヤーのことは悪く描いているが、元凶であるアーサー・フリード(プロデューサー)のことはなぜ描かなかった。
一番美味しい目を見たのは、ジュディを振ったミッキー・ルーニーのような気がする。

スタッフ

監督 ルパート・グールド
脚本 トム・エッジ
原作戯曲 ピーター・キルター 「End of the Rainbow」
撮影監督 オーレ・ブラット・バークランド
音楽 ガブリエル・ヤーレ
音楽監督 マット・ダンクリー
製作総指揮 キャメロン・マクラッケン他
製作 デヴィッド・リヴィングストーン

キャスト

ジュディ・ガーランド レネー・ゼルウィガー
付き人ロザリン・ワイルダー  ジェシー・バックリー
バート・ローズ(バンド・リーダー) ロイス・ピアソン
三番目の夫シドニー・ラフト  ルーファス・シーウェル
五番目の夫ミッキー・ディーンズ  フィン・ウィットロック
支配人バーナード・デルフォント  マイケル・ガンボン
ジュディ(子役時代) ダーシー・ショウ

 

ジュディ 虹の彼方に (Judy) 2019 BBCフィルム他製作 20世紀フォックス配給 GAGA国内配給

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